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雷霆の戦士の異世界譚  作者: 明日乃 諒
第一章 旅立ち
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2話 勇者となるのは……

ライリール王国建設記念日である祝日に行われた

「勇者選定儀式」。

とある街の一角にある広間には、沢山の兵士達が詰め寄せていて、広間の中央にある剣に目を奪われていた。

その中央に立つ二人の兵士ーー


「ミロス・オーレンとキリス・バルジーナ……か」


隣に居た一人の近衛兵が渡した紙を読み上げるワグナー王。

その紙を見て名前を呼んだ事から、あの紙に個人情報が載っているようだ。


「お主らは互いに下位に属する兵士の様だな。」

「はい、まだ新米ですから」

「右に同じです…」


縮こまる体を抑えるミロスとキリス。


「お主らなかなか根性あるじゃないか。それに比べて他の兵士となれば…目も当てられんわ」


ワグナー王の放った一言によって、広間に居た兵士は気まずそうな表情を浮かべた。なんせ自分より下位の者が壇上に上がったのだ。

ミロスとキリスをワグナー王が賞賛してもおかしくはない。

そんな二人が臆することなく、壇上に上がれたのは、勇者になるべき明確な目的があったからだ。


「奴らまだ新米なのにすげぇな……」

「俺は俺自身が憎い…」

「へっ、ただの怖いもの知らずなんだよ」


ミロスとキリスを賞賛する声や、自分の情なさを憎む兵士の声など、様々な声が飛び交う。

が、ワグナー王の「静まれ」の一言で、急速に静寂が辺りを取り込んだ。


「それでは、始めようとするか。どちらか前に出て、この剣を引くに値するものなのか、挑むのだ」


ミロスとキリスは、目の前の台座に刺さる、神々しい剣を見やる。

神話上の武器、「約束の勝利の剣(ティルフィング)

この剣を引くには、根性や力などは必要ない。

約束の勝利の剣(ティルフィング)」が、勇者になる者としての資格があるのか見定めをし、選ばれたら勇者になる、それだけだ。


「キリス……俺から行くぞ」

「頑張ってこい、お前の目的の為にも……」

「ああ」


ミロスは、片足を前に出して、光放つ剣に向かって、歩を進める。

そして剣の柄に、手が届く距離に着く。


(「約束の勝利の剣(ティルフィング)」……お前を俺は引き抜いて勇者になる……!!)


勢いよく、柄の部分に手を掛ける。

もう片方の手も、柄の部分を掴むと、肩を空一杯に振り上げ、引き抜かんとする。

ぐぎぎ…と呻き声を上げるミロスと、微動だにしない「約束の勝利の剣(ティルフィング)」。

ミロスの額には血管が浮かんでいて、顔が真っ赤に染まる。

体全体が、疲労感により震えているのに対し、

どんなに引っ張っても、その剣は抜かれようとはせず、ただただ台座に刺さっているだけだ。


「くそぉぉ!!抜けてくれよぉぉぉ!!」


あまりの疲労感から、本音が漏れるミロス。


「俺は……勇者にならないと……いけないん…だぁぁ」


『お前には……無理だ……』


突然、頭の中から響いてきた謎の声にたじろぎ、剣の柄から手を離してしまうミロス。

一気に力が抜け、後ろに退く。

すると案の定、激しく尻餅をついてしまった。


「いてて……」

「大丈夫か?」


キリスが手を差し伸べ助力する。

手を取り、立ち上がったミロスは、虚無感を痛感していた。


「くっ……俺は……なれなかった」


掛ける言葉が見つからないキリス。


「ミロス・オーレン……この壇上に上がれただけでも良好だ」

「……」


ワグナー王の慰めが今は鬱陶しく思え、唯々絶望感を漂わせた。

そんなミロスを横目に、キリスは頭を欠くと、「約束の勝利の剣(ティルフィング)」に向かって歩を進める。


「しょうがないな……ミロスの目的も俺が果たしてやるよ」


剣の柄に両手を掛け、勢いよく腕を振り上げた。

その時だった。

広間が膨大な光の量に包まれたのは。

目を開けることが出来ない程の光。

思わず、壇上から転げ落ちてしまうミロスとワグナー王、そして側近の近衛兵。


「ぐっ……眩しすぎて目を開けられない……!」


顔を腕で覆いカバーするも体全体に浴びせられる光の量は甚大で、後ろに引きずられるミロス。

そんな強烈な光も、一瞬で収まった。

辺りを見渡すと、倒れ伏せた者や片膝をついた状態の兵士が散乱していた。

ふと壇上を見上げたミロスは驚嘆した。


「ふぅ」


両手に神々しい光を淡く灯す刀身、金髪碧眼の美性の顔立ち。

そこに立っていたのは、「約束の勝利の剣(ティルフィング)」を構えたキリスだった。

それが意味するのは、たった一つ。


「キ、キリス……お前……」

「ミロス……お前の分まで俺は頑張るよ」


人類に新たな希望が誕生した瞬間だった。


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