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RUPE ~みらいいまださだまらず~  作者: ネームレス
第01話 ―開戦― ビギニング・ソング
9/29

7 有効活用

「結局、場所の特定は出来なかった……」

「流石に探偵の真似事は難しいね」

 雅人と博は、戒に教わった方法を試行錯誤し、調べ周り疲労困憊になっていた。

「わたくしの予知が正確に皆様に、伝えられれば良いのですが……」

 どうしても場所を特定することが出来ず、原因としてソフィアの予知イメージを共有できれば、特定できるのではと皆の共通認識になっていた。

「あの~。ひょっとして、写真か何かあればいいのですか?」

 ここにいるメンバーで唯一共通認識の例外だったのが、先ほど手伝いを申し出た乙女であった。

「ボクの超能力は念写ですので、もしかしたらお力になれるのではないでしょうか?」

「ですが、私の頭の中にしか予知イメージはありませんが?」

「ソフィアの頭の中を写真にはできねぇーだろ?」

 真理亜の指摘の通り、彼らが使う超能力は一人一つだけの絶対条件があり、例外は確認されていない。

「皆さん、ソフィアさんのイメージを乙女さんに伝えれば解決するのでしたなら……」

 博が、一恵の言葉を落ち着いた口調で引き継ぐ。

「僕はテレパシーが使えます。ただ、使用制限として、他者同士を繋げてテレパシーが使えるようにする超能力ですので、僕は内容を知ることができない欠点があります」

 博はメガネの位置を整え、一呼吸おいてから思いついたことを語る。

「ソフィアさんと乙女さんを、僕の超能力で仲介して繋げることで、予知イメージを送ることができ、念写で写真にすることが出来ます」

「よっしゃ! これならいけるぜ!」

「雅人、うれしいのはわかるけど、成功してから喜んでほしい」

「おぅ、乙女。早速試してくれ」

「わかりました。真理亜先輩。博先輩、ソフィア先輩、よろしくお願いします」

 慌ただしく念写のために準備を始める一同を、少し冷めた目でクロエは見つめていた。

 ――それって、部室でアタシが言ったアイディアじゃない?

 人付き合いの必要上、事実の訂正のための主張であっても黙っていた方が円滑になるため不満を口にすることはなかった。

「ソフィアさん、乙女さん。準備はいいでしょうか? これから行うテレパシーによるイメージ共有は初めての試みです。何か異変があれば、すぐに中止いたします」

 博も自身のテレパシー能力で、思考の中継を何度かしたことはあったが、例えるなら電話での通話に近く映像としてイメージを中継するのは初めてのことだった。

 ――向日葵さんの予知能力の保証があるけど、上手くいくだろうか?

 不安が頭をよぎるが、考えないように意識を超能力発動のために集中する。

「アクセスコードを確認、ようこそ思考の空間へ」

 博の超能力発動条件は、この言葉を宣言することで発動する。

 自身は能力の対象外となるが、おおよそ直径5キロほどの距離での交信可能であり、使用のための条件が少なく、使い勝手が悪くないため希少価値の高いとされている。

「はい。赤松さん、イメージを送ります。」

 ソフィアは、初めての他の超能力を使うため、どのようにすればいいかわからなかったため、うさぎが予知で見た景色を写真として渡すことを想像して、乙女に念をが届くか試してみた。

「すごいです。目の前にビルが見て……これが、ソフィア先輩が予知能力で見たイメージなのですね。驚きを隠せません」

「念写はできそうですか?」

「はい。ソフィア先輩のイメージいただきました……やってみます」

 乙女としても失敗するわけにはいかなかった。

 ここで、成功し福祉教育部の信頼を勝ち取ることは、乙女の今後のため必須条件で、全力を出すことに迷いはなかった。

「ぷよぷよぴーん!」

 乙女が発した謎の掛け声に、全員の張りつめていた意識が弛緩した。

「な、なんだ……」

「その掛け声はー!」

「ごめん……接続を維持できなかった」

「真理亜、吠えないでよ。気持ちはわかるけど!」

「申し訳ありません。ボクの超能力発動条件で、どうしても叫ばない単語なんです」

 掛け声に使ってる言葉は、乙女の周りの大人たちがよく口にしているのだが、意味は知らないが、何となく呟きやすいフレーズで覚えていたものが、超能力に覚醒した際に発動条件になっており、まだ、人前で使うときは若干だが照れくさいと感じていた。

「念写は成功しているでしょうか?」

 結果を確認したいソフィアにとって、この念写の成否は重要なことだった。

「風景が写っています。ソフィア先輩、予知で見たイメージでしょうか?」

 また、乙女もソフィアとは別の意味で、念写の成否が気になっていた。

「これは……間違いありません。予知で見た景色です」

 乙女のスマートフォンに、ソフィアが予知で見た景色が確かに撮られていた。

 ――やはり、超能力を有効に使うには、超能力者の連携が必要ですね。

 超能力に目覚めてから、単体では有効的に使いたくとも限界が見えていた。

 ソフィアは、どうすれば発動条件や使用条件のある限定的な超能力を有効的に使えるか、一つの考えとして組織を編成して連携して運用することを考察していた。

 そんな折に、暴漢達の計画を知り、偶然にも限定的な超能力を組織的に運用している福祉教育部に助けられ、今、自身の考えが正しかったことが証明された。

「乙女さん。ありがとうございます」

 一番の功労者である乙女に心からの感謝を示し、この出会いをもたらした神にソフィアは感謝の祈りをささげた。

「よっしゃ! これで場所が特定できるぜ!」

「あれ? この場所はさっき確認した場所だと思います」

「雅人さんと博さんが、足を棒にして調べてくださったことが無駄にならずにすみますね」

「やったーねー。みんな、すごーい」

「お手柄じゃない。戒、教えよっと。アタシたちでも出来たと♪」

「言ってやれ。アイツがいなくても解決できるってな」

 場所が特定でき、事件の解決への糸口が見えたことに喜ぶ一同を、薄く薄く笑う乙女が見守っていた。

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