作者の考えたハッピーエンド
「ねぇ、由希くん」
「何?里奈ちゃん」
「私の事捨てないでね。絶対離れないからね。由希くんと一生一緒に居るからね。由希くん愛してる」
「ふふ、里奈ちゃんがお利口にしてるなら捨てないし、居なくならないよ。僕も愛してる」
由希は里奈の目の前で里奈の両親を殺した。
新しく出来た彼氏がドン底に落ちていく様子を見て里奈は塞ぎ込んでしまった。
由希は更に
『こんな事になったのは全部里奈ちゃんのせいだよ?里奈ちゃんが僕を裏切って捨てるからだ』
そう言って里奈の心を壊し、そこから由希は里奈を洗脳するかの様に毎日愛を囁いた。
息子の空には里奈は交通事故で亡くなったと伝え、別の家で親戚に育ててもらっている。
最近小学生になり、友達もたくさん居ると由希の部下から由希に報告にあった。
由希は心を壊した里奈に空の事は伏せ、徐々に自分へ依存させていった。
「ねぇ、由希くん。私、空がみたい」
「空?」
「そう。時々ね、すっごく懐かしいなって思って見たくなるの。
お外に出てないからかな?」
「そう、かもしれないね」
里奈はカーテンで閉ざされた窓を見ながら由希におねだりするが、
由希は少し苦笑いをしながら里奈の頭を撫でるだけ。
それでも里奈は腹を痛めて産んだ息子を完璧には忘れられず、
自分の息子ではなく青い空の事だと思い由希に伝える。
だが由希はまだ息子の空と会わせようとは思っていない。
(里奈は僕だけを見てればいい。里奈の世界に他人は要らない。空もダメだ。例え息子でも里奈の関心が空に少しでも行くなんて許せない。僕も里奈だけなんだから、里奈も僕だけじゃなきゃダメ。ずっとずっと、死んでも里奈の事離さないから)
「ほら里奈ちゃん、もうすぐ子供が生まれるんだからちゃんと休んで。無理しちゃダメだよ」
「うん、分かった。由希くん、一緒に寝よ?」
「うん、良いよ。おやすみ」
由希は里奈の頭を撫で、ベットで横になる。
由希は里奈に彼氏が出来た途端、直ぐ様拉致し地方の別荘へ軟禁した。
宣言通り第二子が欲しいと三日三晩里奈を離さなかった。
それもきっと里奈の心を壊す原因だったかもしれない。
「外の世界は危ないから・・・。里奈ちゃん髪長いしこれじゃまるでラプンツェルみたいだね。
僕は悪い魔女ってところかな?
童話みたいに里奈ちゃんが男を連れ込んだりなんてしたら、僕はその男を殺しそうだし。
あー、でも本当にそんな事したら里奈ちゃんに首輪でもしなきゃいけないな。
今は外に出さないだけで室内では自由だけど、ね」
そうしてまた由希は里奈の頭を撫で、お腹に害が無いように里奈を抱きしめる。
由希は里奈が寝たのを確認してからスーツに着替え、こっそり家を出る。
由希にはやるべきことがあるから。
※ ※ ※ ※ ※
僕は今、小学一年生。
ママは事故で死んじゃって、パパはお仕事で忙しい。
だから僕はママの妹の理恵さんに預けられてる。
今日はパパが久しぶりに会いに来てくれるから、とっても楽しみ。
ママが居なくて寂しいけど、その分パパは会うといつも優しくしてくれるし理恵さんも優しいから大丈夫。
ママ、心配しなくても僕は頑張ってるよ。
だから安心して眠ってね。
「空~」
「あ、パパ!」
理恵さんのおうちでパパを待ってたら、ドアからパパが入ってきた。
手にはいつものお土産。
ここのケーキがとっても美味しくて、僕大好きなの。
「空、元気にしてた?」
パパは優しく頭を撫でてくれて、抱きかかえてくれる。
僕は元気に返事をしてパパに抱きつく。
「パパも元気?」
「うん!パパも元気にしてたよ」
「あ、由希さん。こんにちは・・・」
僕がパパと話してると理恵さんが来て顔を赤くしながら下を向いちゃう。
最近理恵さんが僕に
『私の事は理恵さんじゃなくてお母さんかママって呼ぶのよ?今度は由希と私が結婚するの。もう姉さんの由希じゃなくて私のになるのよ。
私の方が由希と最初に会ったのに、よくも取ってくれたよ。
ま、あの泥棒猫も死んだから良いけどね。
いい?空。これからは私がお母さんになるの。
空が私をお母さんって呼べるようにって言うのと、今後一緒に暮らすのに馴れさせる為に空を私に預けてるんだから。
はぁ、楽しみだわ。いつプロポーズしてくれるのかしら。
結婚式もやりたいけど由希は再婚だし・・・。
でも年齢的には全然大丈夫よね。
よし、今から式場見に行かなくちゃ!』
こう言ってくるんだけど、僕にはあまり分からない。
けど僕にとってママはママだけだし、理恵さんは理恵さんだからママじゃない。
でも理恵さんって言うとすっごく怒るんだ・・・。
だけどママはママだけだし・・・、うぅ、怖いよ。
「いつも空がお世話になってます、理恵さん」
「そんなこと・・・当然ですから。もう、いつも理恵で良いと言ってますのに」
「いえいえ、空がお世話になってて里奈ちゃんも大事にしていた理恵さんを呼び捨てにするわけには・・・」
まだあまり大人のことは分からない。
でも本当にこの人理恵さんかな?いつもと全然違う。
今日、パパに相談してみよう。
「ねぇ、パパ。ちょっと相談があるの。話聞いて?」
「え?・・・うん、良いよ。公園にでも行こうか」
「うん!」
「あ・・・私も聞くわよ、空くん。それって私にも言えないことなの?」
うーん、理恵さんの事だけど言っていいのかな?
「言っていいの?」
「えぇ、私がなんでも相談に乗るわよ」
じゃぁ理恵さんもそう言ってるし言っちゃおう。
「あのね、理恵さんすっごく怖いの。
ママはママしか居ないのにお母さんとかママって呼ばせようとしたり、理恵さんって言ったら凄く怒るし。
お酒飲むと僕の事叩いたり蹴ったりしてくるの」
「な・・・、そんな事してないわよ!由希さん、嘘ですよ。空くん嘘は言っちゃダメって言ってるでしょう?」
理恵さんは急にニコニコしだして僕に言ってくるけど、
「嘘じゃないもん!いつも怖い顔して僕の事叩くじゃないか!それに今は由希さんとか言ってるけどパパの事いつもは由希って呼んでるし、パパと結婚するとか言ってるし・・・。僕にとってママは一人だけなのに!」
パパの顔を見ると・・・笑ってる?
むぅ、僕こんなに怒ってるのに・・・。
「空、そんな頬を膨らまして怒っても可愛いだけだよ。本当、そういう所はママそっくり」
「本当?僕ママと似てるの?嬉しい!」
よくパパに似てるとは言われるけど、ママに似てるとは言われないから嬉しい。
僕はちょっと機嫌を良くして笑ってしまう。
「じゃぁ空、隣の部屋に居てね。
パパは理恵さんと少しお話があるから」
「はーい」
隣の部屋にはパパがくれたおもちゃがいっぱいある。
電車で遊んでいるとさっきの部屋から理恵さんの泣き声が聞こえてくる。
どうしたんだろう?
「空、パパの家に帰ろう。うちの家政婦さんは優しいし料理も美味しいからきっと好きになるよ」
「本当?やったー!でも理恵さんは?」
「理恵さんにこれ以上迷惑かけられないでしょ?空も大変だったみたいだしね」
「うん、じゃぁパパ帰ろう!」
※ ※ ※ ※ ※
あぁ、ダメだ。里奈ちゃんに会わせられないけどやっぱり空は可愛い。
怒った姿なんて里奈ちゃんそっくり。
空はどうでもいいか、なんて思ったけど前言撤回しなければだね。
カモフラージュ用にもう一件家があるから空をそこに連れて帰ろう。
家政婦の木村さんは今年で50のベテランで、
あの理恵とかいう里奈の妹よりずっといい。
悪かったね、空。放っておいたりして。
理恵さんの事は僕がちゃーんとなんとかしてあげるからさ。
里奈ちゃんの為にあまり会えないけど空も大事にするよ。
あぁ、二人とも大好き!
以上、里奈が由希に依存した場合のハッピーエンド。