サンナイマール再興
イズモール王が、廃墟と化したサンナイマール再興計画を発表してから、はや半年が過ぎようとしていた。
冥王龍と名乗る怪物の首領が突如として出現し、
海をはさんで、城の目と鼻の先に城を築いた時には、誰もが、人類の滅亡を覚悟したものだった。
少なくとも、王宮勤めの戦士たちは、勝ち目のない戦いに駆り出され、命を落とす事になるのだと、
その将来を悲観したものだった。
しかし、イズモール王は、自分の部下、そして国民の被害を最小限に食い止めるべく、驚くべきプランを実行に移す。
命知らずの若者を次々と、言葉たくみにあおり立て、
冥王龍討伐に差し向け続けた。
たった100ゼニーの準備金を与えたのみで、
勇者だとかなんとかおだて上げて、冥王龍に玉砕まがいの戦いをいどむ様にそそのかした。
愚かで可哀想な若者たちが、何人命を落としたのか知れない。
しかし、下手な鉄砲も数撃てば当たるものなのだろうか。
とうとう、本当に冥王龍を倒す若者が現れたのだった。
しかしその代償として、イズモール王がサニー姫を失うこととなったのは、諸兄のご存知の通りである。
狡猾なイズモール王は、密かに大型船の建造に着手しており、
時期を見て大船団を組み、冥王龍に決戦をいどむつもりであった。
その事を冥王龍にさとらせないため、敵の目をそらす為の作戦として、虹の橋方向から、命知らずな若者達を次々にけしかける。
それがイズモール王の本来の作戦であった。
しかし、まさかたった一人の若者が冥王龍軍を殱滅してしまったのは、イズモール王にとっても嬉しい誤算であった。
世界を恐怖におとしいれた冥王龍。
その冥王龍を滅ぼす力を持つ若者。
もし、それほどの力を持つ若者が、他者をいたわる心を持ち合わせ、一生涯を貫けるのなら良いのだが。
万が一、一時でも気の迷いが生じ、悪しき心で他者をさいなむ事があれば、
その時は、一体、誰が世の平和を守る事が出来るだろうか。
強大な力を有するもの。
その気にさえなれば、周囲の人々の命を簡単に奪うことの出来る能力や権限を持つもの。
そうした人間が、周りからどれほど恐怖と不安を覚えられるものかは想像に難くない。
しかし、幸いに、勇者は外界へと旅立つ。
まさかの展開であったが、勇者とサニー姫は、
お互いに惹かれあっていた。
サニー姫を失う事になったとは言え、
それが姫の強い意思でもあるため、
イズモール王も不本意ながら、受け入れざるを得なかった。
姫との別れの後、感傷に浸る間もなく、
イズモール王にはすぐさま取り掛かるべき課題があった。
そう。廃墟と化したサンナイマールの復興である。
復興物資を運搬するのも、冥王龍討伐に用意していた大型船がそのまま利用出来る。
また、思いがけず、1人の勇者が冥王龍を討伐したことにより、
イズモール軍には、損害が最小限にとどまったため、
兵たちの多くが、
サンナイマールの復興要員に従事出来るのである。
また、山野にモンスターの出現しなくなったこと、
毒の沼地が無害化された事も、
復興の追い風となった。
多くの商人は復興物資を手配し、サンナイマールの再建へと、多くの人々が携わっていた。
今回、グレーマンが受注したクエストも、このサンナイマール再建事業に関わるものである。