クニヒコのリクルート活動
アラサーの草食系男子が、
冒険者パーティーに参加して
様々なクエストを経験するストーリーです。
もうじき28才の誕生日を迎えるこの男は、
現在、無職。名前をクニヒコ=レインホープと言う。
整った目鼻立ちに、やや背の高いがっしりした体格だが、自信無さげな挙動の為に、年令よりも3、4才は幼く見える。
最低ランクの魔法大学を卒業するのに、
ストレートで4年かかるところを、8年費やした。
魔法大学卒業後は、魔導器具の製造販売の中小企業に就職し、クレーム対応課に配属されたものの、
「自分のやりたい仕事はこんなもんじゃ無い」
と、1年半で退職した。
大学以来の友人が、魔力猫のブリーダーとして起業する事になり、
その友人から、共同経営者に誘われたのだ。
元来、性根のおだやかで優しいクニヒコは、
なんとか友人の夢を応援したいと思うと同時に
退屈な日常から脱出するチャンスと考えた。
決して、起業を成功させて億万長者になろうと思ってはいなかった。
魔力猫のブリーダーとして、
クニヒコは朝から夜まで休み無く働いたが、
仕事の報酬をもらう約束の日に、友人はあれこれと理由をつけては支払いを引き延ばした。
結局、3ヶ月無給で働いた時点で、一度も報酬が支払われることは無かった。
友人とは話し合いの上、自分から去る事にした。
その際に、未払いの報酬を放棄したのが、これがまた彼らしい。
欲が無いのか、それとも面倒な事からは逃避してしまうのか。
今も、2人は以前と同じように付き合いが続いているし、
少なくとも、クニヒコの方では全くわだかまりもない。
大学の学費を他人の倍払ってくれる保護者がいる訳だから、金銭にそれ程に執着する必要が無いのかも知れない。
しかし、20代も残り少なくなるにつれて、クニヒコは定職にもつかず、親と同居している自分に、徐々にあせりを感じる様になっていた。
その日、クニヒコは求人サイトをチェックしていた。
この世界で職に就く方法は、企業に就職してお給料をもらうスタイルが、ごく一般的だが、
特殊な能力を身につけた一部の人々は、冒険者となる。
そして冒険者同士でパーティーを組み、依頼者からのクエストを請け負って報酬を得ることをなりわいにしているのだ。
もちろん、レベルや能力はピンキリで、
この世界を破滅から救うクエストを次々クリアしていくスーパーパーティーも有れば、
迷子のペットスライムを探す専門の弱小パーティーも存在する。
クニヒコのチェックしている求人情報をのぞいて見よう。
【応募条件】
年令 30才まで
学歴 魔法大学卒以上
未経験歓迎 1から丁寧に指導します
仕事内容 中級パーティーの簡単な冒険補佐と
役所への諸手続きなど
報酬 月21万ゼニー 週休3日
女性の多い職場です
明るくやる気のある方、笑顔で冒険できる方、歓迎です!……………………………………
冒険者パーティーでの応募条件は、
戦士や魔法使いなどの職業の経験値やレベルを重視するのが普通で、学歴を求めているのもかなり珍しい。
報酬も多目な上に休みも多いし、初級パーティーだと10代の冒険者が多くてやりづらそうだし。
会社で働くのも一度経験したから、次は冒険者パーティーに参加してみるのも面白いかも知れない。
クニヒコは、この求人に応募する事に決めた。
面接日時が決まり、当日を迎えた。
面接会場は、その冒険者パーティーが構えている事務所で、
面接官は、パーティーのリーダーを務める人らしい。
クニヒコは、いざとなると極度に緊張してしまう性質だが、この日も例にもれず、ガチガチになりながら、
事務所のドアを叩いた。
「どうぞ。」
《続く》
ご拝読ありがとうございます。
(≧∇≦)