あ。夏が終わる。
夏といえば心霊特番、心霊特集。
ということで駆け込みの小ネタコメディーです。
『現代日本からの転生』なんて、よくありすぎるテンプレ設定。
ということで、私が、前世では、何処にでもいるようないち高校生だったこととか、不慮の事故で若くして命を失ったとか、気が付いたらこの『ファンタジー』感溢れる『剣と魔法の異世界』で新たな生を初めていたこととか。なんて、まぁどうでもいい話。
とにかく『私』こと『エミ・ブレーメ』は、人生の一発逆転、一旗あげるために、人よりはちょっと優れていた魔法の才能を活かして、冒険者なるやくざな職業に勤しんでいるのも、まぁお約束でしょう。
まぁ、今はそんなことはどうでもいい。
「見えてない。見えてない。私は何にも見えてない。見えてないったら見えてない」
ぶつぶつ呟く私の姿に、仲間であるヒルデが呆れ顔で、槍を肩に担ぎ直す。
「そんなにたくさん居るの? 」
「何がぁっ? 何もいない、見えてない。私には何も見えてない」
しまった声が裏返った。
そんな私の隣でイレーネが笑顔で指を向ける。
「ええ。ヒルデの後ろにも『おひとり』、隣にも『おひとり』エミの後ろにも……」
「いやぁあああぁあぁっ! 見えてない。見えてないーっ! 」
剣と魔法のファンタジー世界。
ええ。そうですね。
アンデッド的なモンスターも、たくさんいますよね。
『いる』のが、決定事項なのですよっ!
『いる』『いない』論議など、元より無いのですよっ!
気のせいとか、プラズマとか、そんな言い訳、このファンタジー世界には必要ないのですよっ!
しかも、何だか今生の私は『霊感体質』らしく、やたらくっきりはっきり見えちまったりするんですよ!
「『藍の神』の神官である私も、なんとなく気配を感じるだけですのに。エミは才能があるんですわねぇ」
クスクス笑うイレーネ。そんな才能、熨斗付けてくれてやるわ。
必要などない。
何せ私の『魔法属性』は『火と水』
攻守に優れていても、対アンデッド能力は無い。
すなわち『見えるだけ』
祓うことなど出来ぬのだっ。
「何を言っているのだい、お二人さん。私には、何も見えてなどいないのですよ」
「現実逃避しても、どうにもなりませんのに」
「私、元から何も感じないしね」
今もすぐそばに男のひとと、女のひとと、男のひとと、男のひと。
うわあああぁぁあっ。何なのこの『幽霊屋敷』っ! 多すぎるにも程があるぅっ!
「ヒルデは怖くはありませんの? 」
「私、自分が見えないモノは、気にしても仕方ないって思ってる」
私もそう、思いたかったーっ! いやっ、見えてなどいないのだからねっ! そこのあなたっ!私の事ガン見しても、何にも無いからねっ!
「アンデッドでも、ゾンビとか、スケルトンなんかもいるじゃないですか? そういったのは? 」
とりあえずイレーネ。何でこんなところで、雑談始めてるの? そういう場所と違うよね?
そして、答えるな、足を止めるなヒルデ。
そして、取り囲むなお前ら。昔から『そういう話』をすると、寄って来るっていうけど、実践など要らぬのだっ!
「とりあえず臭いと思ってる。それに、殴れるモノは怖くないし」
この脳筋がああぁっ!
その楽観的思考うらやましいっ! 私と代われっ!
「エミは? 」
「お化けなんて、見えない、存在しないっ! 」
「何を仰っているのだか」
「アンデッドも、モンスターも、おんなじ『化け物』じゃない。何でそんな怖がるかね」
日本人的な感性を捨ててくれば良かったと、全力で思う瞬間である。
怖いモノは、怖いんじゃああぁっ!!
「うふふ……とりあえず、この『屋敷』燃やしちゃおうよ。ぜーんぶ焼き尽くして、綺麗にしよーよ……それが一番素敵な解決方法だと思うよ? 」
せっかく首を傾げて可愛く言ってみたのに。
「いや、駄目だろ」
「駄目ですわね」
何でそういう所だけ、常識的なのよ。
くそぅ。
とりあえず、呪われた屋敷関係のホラーは、事件が起こる前に燃やした方が良いと思っています。
気が付いたら、夏らしいことも満足にしないまま、夏終了間近。でありましたので、思いつき小ネタを投下致してみました。
多少なりともにやりとして頂けたら、幸いと存じます。