目測はすれ違う
私のカップアイスがさくさく減っていく。きみは驚くほど素早くアメリカンドッグを食べ終わって、横目で私のカップアイスの残りを勤勉な火山学者みたいに目測している。
火山学者が私の家に持ち込んだ「アイスが早く溶けるスプーン」は実際名前負けせずアイスが早く溶けるので、私は小気味良くアイスの山を崩す。氷の城はあえなく領地を失っていく。
スプーンがカップの一番底を打つ。きみが「あっ!」と声を上げる。
「どうしたの」
「何が? 何も言ってない」
「あんなに派手に『あっ!』と言っておいて『何も言ってない』はないでしょう」
「食べなよ。早く溶けるんだから」
不機嫌に唇を突き出したきみの口にスプーンを差し出して、ひらいた唇にアイスの最後のひと口を押し込む。
「これが欲しかったんでしょう」
「別に」
「待っていたんでしょう」
「待ってない」
「私が最後のひと口をきみにあげるって確証を持っているんでしょう?」
「……そうだよ。きみはいつも最後のひと口をくれる」
「誇らしいな。いつでも私の最後のひと口はきみに予約しておきたい」
私の今までの誠意がこのひとの最後のひと口への信頼を築いたのである。私はかなり自慢に思った。食い意地の張った犬みたいに私のそばに張り付いてアイスを目測しているきみはなかなかにかわいらしいし。
「いつもありがとう。とっといたよ。アメリカンドッグのいちばんおいしいとこ」
きみがそう言って差し出したのは、アメリカンドッグの終盤も終盤、ソーセージがなくなって生地がカリカリになって棒にへばりついているあそこだった。
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