第九話……天才女棋士は戦略を披露する
「さて、これから具体的にどうすればいいかですが、陛下には私達が持って来た朝食を召し上がっていただきます。それから私達は一度退出し、いつも通り朝食を運び込ませます。陛下はそのまま口をつけず、それを下げさせないでください。『少し時間を置いてから食べる』とおっしゃれば問題ありません。その後、皇后と侍女が退出した時に、私達が朝食を確認しに来ます。一向に退出しないのであれば、命令して退出させてください」
「分かった」
すでに皇帝は私達に信頼を寄せてくれているので、大抵の頼み事なら問題なく聞き入れてくれるはずだ。
「そして、毒食事を避けるために、まずクーさん、陛下のために栄養バランスを考えた出来合いの食事を、帝都から調達してもらえませんか? 私達は直接帝都に食べに行きましょう。今日の昼食から」
「オーケー!」
「そうか! クーなら帝都内の店を知り尽くしているから一石三鳥だ。まさか、そんなことまで利用するとは……」
「センなら、俺の話を聞いた瞬間に思い付いていそうだな……」
みんな感心しているが、私は話を続けた。
「ただし、それは一時的なものです。 そこで陛下、本宮廷、後宮廷とは別に、『皇帝専用保養施設』という名の私達専用の別邸を大至急建築するようご命令いただくことは可能でしょうか? まずは簡易的なものでかまいません。最低限、専用の調理場と薬の調合スペースを確保したいのです。そして、陛下もそこにご移動いただきたく存じます。そうすれば、ここよりも安全に過ごせます。その上で、拡張可能性も考慮して、最低でも十五人程度が寝泊まりできる広さを確保したいです」
「分かった。そうしよう」
「宮廷から調理師全員を追い出したりはしないということだな?」
皇子の確認に私は頷いた。
「その通りです。あの闇医者と闇調理師も別の担当に回してそのまま泳がせます。さらに陛下は、未だ重病を装い、秘密にします。この場は、『やはり同じ診断結果だった。各国の興味深い話を聞かせてくれるので、彼らに一時的に定期健診をしてもらうことにした』と言えばオーケーです。ですから、本当に信頼できる大切な人だけを私達の別邸に住まわせることになり、できるだけそこで生活を完結させるようにします。
つまり、時に戦場から逃げることも重要だというわけです。必要な時だけ行けばいいのです。『大場より急場』。しかし、急場が済めば、大場に戻らなければいけません。いつの間にか包囲されてしまいますから」
「囲碁の格言ですね」
先生の補足に私は頷いた。
「しかもこれは、一対一の対局ではありません。下手な横槍が入って大怪我をしてしまいます。それを避けるため、利用するためにも、他の殿下方には是非、戦場で潰し合ってもらおうではありませんか。こちらに飛んできた火の粉だけを払い落としましょう。
その余裕の分だけ、政治的、経済的な成果を上げることに専念できます。
そもそも、王を戦場に駆り出してはいけません。君子危うきに近寄らず。当たり前のことです。言い換えれば、殺人犯や殺人予備軍の目の前に、生贄を放り込むようなものです」
「確かにセンの言う通りだ。戦争ならそれがすぐに分かるのに、別の戦のことになるとそれが見えなくなるんだな」
「ふふっ、いつの間にか、わしも駒になっておる。いや、それでわしの希望が全て叶うから問題はないのだが、自然すぎて改めて感心したぞ」
「実は、最初の火の粉はもう決まっています。皇后の命令で、私達が間違いなく事件に巻き込まれるので、その冤罪を晴らします」
「っ……!」
「あやつが……⁉️」
「この毒食事の件も皇后が関係していると見て間違いありません。本当は『第二皇子側近行方不明事件』も解決したいのですが、それでは先程の潰し合いが解消されてしまうので、こちらからは手を出しません。ただ、おそらく早期に、それと絡めて私達をハメるのではないかと考えています。
そこで殿下に改めてお聞きしますが、皇子皇女側近も含めて、最も優れた智将と呼ばれるような人はいますか? その人に警戒する必要があります。皇后の実子か配下に最低一人いると思うのですが」
「ああ。第一皇女『アンジェナ』が智慧の女神と呼ばれている。ちなみに、その行方不明の側近も智将として有名だった」
「皇后実子ではないが、もう一人いなかったか? 『タリウス』の側近に。ああ、タリウスは第三皇子だ」
「分かりました。その三人をマークしておきましょう」
「いや、一人は行方不明だから二人だろ?」
「そうだ」
「いえ、その一人が普通に生きていて、城内か宮廷内で普通に働いている可能性が高いのです」
『な、なんだと⁉️』
親子らしく、皇帝と皇子は同じリアクションをした。
「つまり、第二皇子サイドか、他の皇子のスパイによる自作自演の可能性です。智将と呼ばれる人間が、簡単に殺されたり、失踪したりするわけはありませんからね」
「それはそうだが……」
「にわかには信じられんな……」
「あくまで可能性の話なので、本当かどうかはいずれ分かります。その程度の智将だったのかもしれませんし。とりあえず、今は注意すべき点の話です」
「わ、分かった」
次に、ずっと気になっていたことを先生に聞くため、私は彼の方を向いた。
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