第七話……天才女棋士は調理師を連れて行く
次の村に着くと、宿を三部屋分とり、私、皇子と先生、御者がそれぞれの部屋で一泊した。
皇子と先生はどんな話をしたんだろうと、少しだけ気になったが、明日は忙しくなりそうなので、すぐに考えるのをやめ、眠ることにした。
そして未明、帝都に向けて出発した。
△ ▼ △ ▼
それから約二時間。帝都には午前六時過ぎに着いた。
もちろんメインストリートの人通りは少なく、店も閉まっている。ただし、一軒を除いて。
そしてその店の入口付近に、予想通り見知った人影を見つけた。
「あ、すみません! 止めてください!」
例のごとく、馬車を止めてもらい、私達はその人影に近づいて行った。
「クーさん、おはよう!」
「…………。え……ええええ⁉️ センちゃん⁉️ どうしてここに⁉️ しかも、先生と怪しいヤツまで!」
クーさんは、所謂『陽キャ』なので、私達を二度見したあと、大きいリアクションと豊かな表情で、妙なポーズを取りながら驚いていた。
年齢は二十歳になったぐらい。調理師らしく、ずっと変わらず短髪を維持している。長身で体格も良く、鍋を振るうので、両腕もムキムキで衰えていない。
ちなみに、馬車の中で聞いたところ、皇子は十八歳らしい。
「ちょっと城に用事があってさ。クーさんも来てよ。それと、私達の朝食用にここでテイクアウトもして」
「だったら、オススメのサンドイッチがあるぜ……って、それはそうと、どうして俺が『この時間』に『ここ』にいるって分かったんだ?」
「半分は勘だよ。先生から帝都にいることは聞いてたけど、前にクーさんが『帝都で食べ歩きをする時は、まず裏道の通な店から寄って、そこを制覇したらメインストリートの大衆店に行って、さらにその中でも早朝からやってる店の朝食メニューに手を出して……』って言ってたから、時期的には朝食メニューぐらいかなぁと思いながら、馬車から外を見てた。いなかったら、それらを効率良く回るのに最適な場所にある宿屋を当たるつもりだった」
「……。三日ぐらいはここに通おうと思ってたけど、それでも当ててくるのはすごいなぁ……。流石の俺でも、朝食が半分ぐらい喉を通らなくなりそうだよ」
「城に着いて用事が済んだ頃には忘れてるよ、そんなこと」
「あはははっ! 違いないな! センちゃんなら、もっとすごいものを見せてくれるんだから!」
「何かエピソードがありそうだな」
「クーが好きだった個人飲食店が潰れそうなんだとセン先生に相談したら、事情を詳しく聞かれたあと、『クーさんがその店で鍋を振ったあと、この通りにしたらどう?』って渡された紙を店主に見せて、その通りにしたら、店が大繁盛して復活したらしい」
「よくある話だよ。味は良いのに、店の迷走や雰囲気、接客の仕方が問題だったから、そこを改善した方が良いんじゃないかって書いただけ。ほとんどは、クーさんの『料理コンサル』のおかげだよ」
「でもさぁ、店が大繁盛したら普通は常連や『通』が寄り付かなくなるんだよ。そこもフォローしてる辺り、とんでもない営業戦略だったな。その客の来店回数や味の評価によって、店の仕切りプラス隠しメニューが変わるっていう区別が絶妙だったんだ」
「なるほど。俺はほとんど外食しないからなんだが、そういう店のシステムの噂は他に聞いたことがないな」
「田舎の店だから、競合が調査にも来ないんだろう。一応、セン先生からは、『調子に乗って、繁盛時を目安に投資しないこと』と釘を刺されているらしい。経営のフォローもバッチリだ。店の復活後に俺も行ったけど、文句なしに美味かった。それまで炒飯で感動したことなんてなかったんだから。多少並んだのも良いスパイスになったな。あそこがなくなっていたら、国の……いや、帝国の損失になっていたところだ」
「私も行ったことあるけど、同じ感想だったよ! あ、じゃあテイクアウト買って、そろそろ城に行こう! 時間が迫ってるから!」
「時間? こんな早くに迫る時間と言えば……」
それから私達は、皇子の金貨を店に一枚渡して、朝食のテイクアウト品を多めに注文。先生が持っていたアルコールで消毒した、同じく購入した木箱に、それらを崩れないように詰めて、馬車で城に向かった。
「面白かった!」「つまらん……」
「続きが気になる!」「次回作に期待!」
と思った方は、以下の「☆☆☆☆☆」から、応援をお願いします!
星一つであっても、皆さんの反応が大変励みになります。
星五つであれば、なおのこと!
ブックマークもよろしくお願いします!
最後に、本話をお読みいただき、ありがとうございました!
Xアカウント @tachizawalude




