第五話……天才女棋士は医師を連れて行く
それから三十分後、ポーリー村に着くと、メインストリートの傍らで、折りたたみ式の椅子を片付けている人影を馬車の窓から見つけた。
「あ、すみません! 止めてください!」
私の急な声にもかかわらず、御者は冷静に馬車を止めてくれた。
そして、私と皇子が馬車の扉を開けてすぐに降り、彼の方に目をやると、一人の老人が彼に近づいているのを見つけた。
「おい、アンタ! 医者か? だったら、わしを診てくれ!」
「……。なんで俺がアンタを診なきゃいけないんだよ」
「なんだ、その態度は! 貴様、医者だろ! 医者なら人を助けるのが役目だろ!」
「勝手に決めるなよ。俺は俺で自由にやる。少なくとも、初対面でお願いする立場なのに偉そうに文句垂れてる奴を救いたくはないんだよ。勝手に死んでろ、クソジジイ」
「なっ……! わ、わしが死んだら、貴様のせいだからな!」
そう言って、老人はどこかに行った。
「お前の不摂生のせいだよ、バーカ!」
そこに追い打ちを決める先生。
すると間もなく、女の子を抱いた女の人が彼の所にやって来た。
「あ、あの……」
「なんだ?」
「この子を診てもらえませんか! 風邪が長引いていて、辛そうなんです!」
「なんで俺が診なきゃいけないんだよ。もう店じまいにするところなんだが?」
「どうか、お願いします!」
「……。分かりました。そこに立たせて支えてください。それじゃあ、口を開けて……」
それから彼は、女の子を診察し、最後に薬を渡して、親子に手を振って別れた。
そこを見計らって、私達は彼に近づいた。
「流石、『不良医師』を名乗ってるだけあるね。診察風景、初めて見た」
「セン先生⁉️ どうしてこんな所に⁉️ 丁度明日、ボード屋に行こうと思ってたんだよ!」
三年ぶりにあった彼の様子は特に変わらず、二十四歳にしては少年のようにも見えるが、身長も高い方なので、医者としての風格は損なわれていない。
「うん、そうなんじゃないかなぁと思って、帝都に行く途中で会いに来たんだよ」
「いや、待て待て。俺は大体二日毎に移動して各地を回ってるんだぞ? 偶然にも程があるだろ」
「いや、偶然じゃないけど。そもそもこの村、最短の通り道じゃないし。ちょっとは、噂も聞いてたからね」
「……。はぁ……やっぱりすごいな、セン先生は……」
「ねぇ、『トール先生』。私達と一緒に帝都に行ってくれない? あなたを必要としている患者がいるから」
「……。その男は?」
「すまないが、まだ言えない。その患者の親族とだけ言っておこう。だが、直に分かる」
「どう?」
「もう一つ。セン先生は、この男と対局して勝ったってことでいいよな?」
「そうだよ」
「よし。とりあえずは安心だ」
「どういうことだ?」
「馬車で話そうよ。早めに先生を見つけられたとは言え、時間がもったいないから」
『そうだな。ん? おい!』
二人の息がピッタリ合っていて、私は笑いながら馬車に乗り込んだ。
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