第四十七話……天才女棋士は理想の国家像を語る
「子どもの話が挙がったから、この際に聞いておきたいんだけど、第一皇女以外の上の皇子皇女に子どもっているの? 見たことないんだけど、疎開させてるとか?」
私は皇子達に質問した。
「ああ。皇室典範に書いてあった通り、皇帝の孫は皇位継承戦に参加できないから、みんな疎開させている。帝都にもいない。母上の両親、俺の祖父母が帝都にいるのは、俺にまだ子どもがいないからだな。皇女達は基本的に早い内に産んでいる。皇位継承戦が始まる前の方が得策と踏んでのことだろう」
「そういう意味では、皇子の方が有利ですよね。妊娠期間を考慮せずに済みますから」
「そうだな。老いてから皇帝になっても、子孫がいなければ、皇太子を兄弟姉妹から引っ張ってくるしかない。それでは皇帝になった嬉しさも半減するからな」
皇子の答えにリアラ皇女が同意し、続いて皇帝が彼女に同意した。
「でも、第一皇女に子どもはいない。お父様を殺そうとしてはいたものの、そこまで焦っていた様子もない。だとすると、皇帝の先に見ているものは……最悪のケースも考えられるかな。流石に確定ではないけど」
皇子達は不安そうな表情を浮かべた。
「最悪のケースとは……?」
「帝国の解体と民主主義化」
『っ……!』
「で、でも、姉上は一番が好きなんだろ? それじゃあ、一番を維持できないじゃないか!」
「うん。皇帝になったらすぐに皇太子を熱望される。そうなれば自分が一番ではなくなる。一番になってもそれを維持できないのなら、自分が最後の、歴代最高の皇帝として全てを終わらせる……っていう考えかもしれない。でも、普通にこれまで協力してくれた第二皇女やその子どもに継がせるかもしれない。あるいは、私達のように世界一を見ているのかもしれない。まだ分からないよ」
「セン、この際に聞いておきたい。グランセンにも聞いたことがあるのだが、帝国や国家を統治するための最適な形体は何か」
皇帝の質問に、私は迷うことなく口を開いた。
「超優秀な良心的トップ層がいる前提では、帝国であれば現在のような封建制、国の場合は規模にもよるけど中央集権制。その前提がない場合は議会民主制。全ては組織の腐敗で国民が苦しむことを可能な限り避けるため」
「グランセンと同じ意見だな。では、その超優秀な良心的トップ層を維持するためにはどうすればいい?」
「そのトップ層が一度君臨した暁には、少なくとも皇位王位のいずれも継承戦は撤廃するべきで、あとは直系の子孫を増やしつつ、十分な教育を徹底するしかないと思う。帝王学がどんなものかは知らないけど、国民に寄り添う意識は常に持っていないと、反乱や革命が起こってしまう。
つまり、支配層や権力の維持ではなく、もっと俯瞰した物の見方、帝国や国家を持続させるにはどうすればいいかを考え、少なくとも表面上はそのように振る舞わないと、必然的に滅亡の道を歩むことになる。ちょっと漠然とした答えになっちゃったけど」
「いや、十分だ。グランセンも同じ見方だった。あの時、彼女にも当然協力を仰いだのだが、彼女は彼女でやることがあると言って断られたからな。結局、それが何なのかは教えてくれなかった」
「……。みんなには言ってなかったけど、おばあちゃんは行方不明なんだよね。でもきっと、『それ』を解明するため、解決するために動いてるんだと思う。もちろん、私も『それ』が何なのかは知らない。なんとなくは思い付いてるけど、まだ可能性の話だから」
「そうだったのか……。しかし、わしもそう思う。彼女がそう簡単に死ぬわけがない」
「前にセンが言っていた通りですね。智将がそう簡単に殺されたり失踪したりするわけがないと」
「そうだね。おばあちゃんが帰ってきたら必ずここに来るだろうから、しっかり場所を用意しておかないとね」
「頼むぞ。こうなった以上、センに何かあっては、グランセンに合わせる顔もなくなってしまうからな」
「父上の絶対的な協力を得られたのは、非常に大きなことだ。やはり、センは超優秀な人間だな。血統や運命だけではない」
「では、お兄様とお姉様の子孫は絶対に残さなくてはいけませんね! 我が帝国の繁栄と安寧のために!」
「じゃあ、せっかくだからここに名前を付けようよ! その第一歩となるこの場所に。単に『保養施設』じゃ味気ないでしょ」
テンさんの提案にみんなが賛同して頷いていた。
「うーん、じゃあ『拠点』で」
「もっと味気なくなった!」
「呼びやすくなったんだからいいじゃん」
「そうだけどさぁ……。じゃあ、親しみを込めて『拠点ちゃん』にしようよ!」
「誰も呼ばなそう……」
「『拠点くん』とか『拠点様』とか、好きに呼んでいいから!」
「では、僕は『拠点さん』と呼びます!」
メイル皇子が気を遣ったのか、テンさんに拠点の呼び方を謎に宣言した。
「メイルくん、良い子だね。大好きになっちゃった。お風呂でいっぱい『イイコト』してあげるからね。おっぱいもいっぱい触っていいからね」
「『拠点さん』に嬉しくなっちゃって、巨乳のテンさんが『巨テンさん』になっちゃった!」
「いや、上手くない……よな?」
「セン先生なら……分からないな……」
「言いたかっただけじゃない?」
「セン様は言われたいセリフもありますよ。『お嬢様、お帰りなさいませ』とイケ老執事に言われたいとおっしゃっていました」
「お姉様って、どちらかと言うと年上好きですよね」
「頭が良い子はそうなのかな? 難しい会話ができるから」
「僕も師匠のように頭が良くなりたいです!」
「メイルもセンちゃんに子どもを産んでもらえるように頑張ろうね」
「センも大変だのぅ」
他人事のような皇帝の言葉を他所に、私はカオスの波に揉まれて、ふわふわとした気分になっていた。
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