第四十話……天才女棋士は母の気持ちを推察する
夜になり、皇帝付きの侍女以外に見つからないように、バルさんの気配察知を駆使して、皇帝を本宮廷から保養施設に連れてきてもらった。
皇帝室には、『保養施設でしばらく静養する。許可のない者は立ち寄らぬように』という書き置きも残してもらっている。
そして、皇帝、皇子、リアラ皇女、フィーリアさんの侍女、計八人を全員呼び寄せ、お風呂を準備してもらっている間、私は皇帝に『サウエル国第一王女裏切り婚約破棄事件』改め、『サウエル国未報告事件』についての報告をした。
また、第十側室と同様に、ここでも皇子の意向通りに、お互いに自然に話すことにした。
「分かった。して、この先はどうするつもりなのだ? あ、わしのことは、『お父様』でいいからな」
「……。微妙に押してくるんだよなぁ……。えーと……じゃあお父様には、ここでずっとお母様とイチャイチャしてもらいつつ、侍女には調子が悪いままだと伝えるのは、これまでと変わらずということで。
きっと念願でしょ。第五側女までしかいないのに、お母様は間を空けて一番端の建物にいる。お父様がお母様を最も愛しているからこそ、他の側女からできるだけ遠ざけ、自分も夜に通いやすくしたんだから」
「陛下……! 私も愛しています。これまで何度も申してきた通り!」
フィーリアさんが皇帝に抱き付くと、彼は彼女を抱き締めた。
「これからは、ずっと一緒だ……!」
「はい……!」
そして、二人は早速イチャイチャして寄り添い合いながら、改まって私の方を見た。
「じゃあ、お父様に質問だけど、第五側女はどんな人? とりあえず、教育熱心タイプだってことは分かってる。第六皇子サイドが側近を見つける前に、こっちから接触して仲間にしようと思ってるんだよね。出遅れで野望がそれほど強くない人間を敵として排除したり殺したりするよりは、その方が早いから」
「俺もその案には大賛成だ」
「なるほど。では参考までに、なぜわしと彼女、『シエル』との間に一人しか子どもがいないのか話そうか。彼女は、ある貴族の召使いだったのだが、わしがパーティーでその邸宅を訪れ、用を足しに行った時、彼女から側室にしてほしいと突然土下座をしてきたのだ。わしはもう側室を取る気はなかったのだが、彼女は元奴隷で当時は召使いだから、『一生命令され続ける日常は心が耐えられません。幸い、身体は清らかですから、どうかお願いします』と訴えてきた。
わしとしては、彼女の成り上がりの手段にされるのは癪だったが、フィーリアのことも思い出しつつ、むしろその方が同情せずに後腐れないかとも考え、そのまま連れてきた」
「その考えは正しいね」
「皇位継承戦の厳しさがあるからな」
「ただ、向こうは最初、子作りに積極的ではなかった。しかし、相当年月が経ったある日、彼女の方から願い出てきた。わしが中年のオヤジだから嫌だったのかと率直に聞いたら、『皇位継承戦のことを考えたらどうすればいいのか分からなかったのです。恩人である陛下と私の大切な大切な子どもです。遅れを取らないように、すぐに子作りすれば良いのか、それともあえて遅らせて、完全にレースから除外された方が良いのか。ずっと迷っていました。私は学がなく、愚かですから。しかし最後は、歳の離れた子どもを手にかけないだろうという人の良心に賭けました。それで裏切られるのであれば私も世の中に絶望して死にます』と答えた」
「なるほど。最初に皇子を無事に産めてそこで止めたのは、少なくとも男系を維持できることで安心し、それ以上産むと皇位継承戦で自分の子どもを余計な悲劇に巻き込んでしまうからですか」
「……。れっきとした理由ではあるな」
「その通り。そう言っていた」
「第三側女も第四皇子一人ですよね? 同じ理由ですか? それとも前に話していた通り、自分の健康優先ですか?」
先生が少しだけ砕けた話し方で皇帝に質問した。
「少なくともわしは後者だと感じた。センが会えばそうではないと感じるかもしれないが……」
「俺も今思えば、父上と同じ意見かな。なんとなくだが」
「この場合、第四皇子が積極的に皇位継承戦に絡んでいる以上、側女の存在はほとんど無視していいんだよね。他の皇子もそう。ただし、第六皇子だけは最初に話した通り、別ってことね」
「なるほど、よく分かった」
「シエルさんの気持ち、私にはよく分かる。無我の境地にならない限り、一度手に入れた幸せは、絶対に失いたくないんだよ。私の場合は、子どもが多ければ多いほど、皇位継承戦で協力しやすくて、心の支えにもなるんじゃないか、ひいては帝国のためになるんじゃないかって考えてたけど、陛下に出産リスクを理由に止められた」
「うん。その話はお父様に聞いたよ。そして、自分が大切だと思うことを子どもに教える。もちろん、親としては当然のこと。お母様は素敵な人や仲間との出会いのために純粋さや素直さを、シエルさんはどんな状況でも適切な判断ができるように勉学の大切さを教えた。それでは足りないかもしれないと不安に思ったから、自分では判断できないから、念のために参謀を探している」
「繋がったか……。セン、だとすれば……」
「うん、良い人かもね。子どもを産みたかったけど、召使いのままだと子どもを産めないかもしれないし、産めたとしても生活に苦労して不幸にさせてしまう。だから、側室を願い出た、という思考の流れ。子どもがいない時から子ども第一主義。それらの不安を取り除いてあげる必要はあるけど、敵に回したくないっていうのは、みんなの総意だと思う」
「ふぅ……安心した……」
皇子も含めて、みんな安堵していた。
そこで先生が手を挙げて、再び質問を示唆した。
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