第三十九話……天才女棋士達は天才調理師の料理を食べる
「できればそのまま帰城するか、帝都以外に宿泊してください。第二皇女殿下の差し金で、皆さんが暗殺される可能性があるからです」
「えぇ⁉️ しょ、承知しました……」
執務室の清掃が終わった時間は午後五時十五分頃。
サウエル国王に忠告を残して、私達は別れた。
時間があるので、皇帝への報告は後回しにして、私達は保養施設の強度確認を行うことにした。
たとえ夕食までに全てを終えられなくても、今日使う範囲だけ終えればいい。
と言っても、この時間でもうほとんど終えることができたので、未確認の部屋だけ、ドアノブに立入禁止の札を掲げた。
そして、第十側室を空け、私達は保養施設にお引っ越し。
必要な物は事前に用意されているので、特に何かを持って行くわけでもない。
それから、私、先生、バルさんが分担して、クーさんが作った料理を皇帝に届け、戻ってきたところで、私達はついにクーさんの夕食にありつけることになった。
ちなみに、私達が執務室からここに来るまでの間に、確認済みの所に誰かが細工していないかも目視で確認、クーさんの仕込んだ食材に手を加えられていないことも確認済みだ。
私達は、調理場の隣の食堂で長テーブルを囲んでいた。
「……」
「ああ……こんなオムライスは食べたことがありません……。しかも、全てがふわふわです」
「本当に……。美味しすぎて無言になってしまいますね……。フィーくんみたいに」
「フィーくんは、大好きな物は黙々と食べるタイプなんだね」
「このデミグラスソース、煮込む時間なんてなかっただろ? 戻ってきてから火を入れてたし。それでもこんなにコクが出るのか」
「固形材料と赤ワイン、バター、ベースソース、水のバランスさえしっかりしていれば、時間は短縮できるからね。もちろん、本体と一緒に食べる前提。単独ではそれほどでもないと思う。パンに付けても少し物足りないかも。でも、その辺の店よりは十分良いソースになったんじゃないかな。コストも全然かからないし。
ちなみに、陛下の分は薄味にして、小さく切った牛肉を多めに入れて、ビーフシチューとしても味わえるようにした。
そして、これは卵が新鮮だからできることだな。サルモネラ菌が繁殖する隙を作らないように産卵時から衛生管理を徹底させた結果だ」
「職人技ですね。そして料理に関しては、クー殿の年齢からすれば、天才的な感性によるものですか。まさに、帝国一に相応しい腕前です」
そして、いち早く食べ終わった皇子は、静かにスプーンを器に置いた。
「本当に幸せな気分になれた……。ありがとう、クー。ところで、自分の店を持たない理由を聞いてもいいか? いくつか想像はできるものの、絞り切れなかった」
「一番の理由は、評価されるべき店をみんなに評価してほしいから。もちろん、味と料理人の腕の評価。だから、料理コンサルをやってるんだ。自分の店に籠もって、自分だけ評価されても、俺は別に嬉しくないからね。その過程でいろんな場所に行って、食材や料理の研究をしたりもできるし、そこからまた情報を得たりっていうループになるから、一石三鳥ってわけだ」
「例えば、同じ村に同じように経営に困っている店があって、クーさんがどっちも気に入った場合は、どっちも見てあげるらしいよ。本人達が理想として目指す店は絶対に違うはずだから、そこを被らないように差別化すればいいだけだって」
「そうか。そうすれば、作る人も食べる人も国もみんなが嬉しくなる」
「食は人間の原点だからさ、せっかく食べるなら美味い方が良い。どんな安いものでも美味くなる余地はあるんだ。ただ、ずっと美味いものが食べられるかって言うとそうじゃない。だから、例えば貧困に喘いでいる人に、無闇に美味い食事を食べさせちゃいけない。それこそ、フィーリアさんの話のように、この上ない現実を直視させてしまうから」
「流石、クーさん。食べる人のことを真剣に考えて、先を見据えてるね。そういうのは自己満足になっちゃいけないからね。別に自己満足を否定するつもりはないけど、限度はあるから」
「人間は、一度上がったレベルを簡単には下げられないからな。肥満や糖尿病、アルコール中毒になる根本原因だ」
私達は『うんうん』と頷きながら、スプーンを進めた。まぁ、サラダとスープもあるけどね。『三角食べをすると、さらに美味いよ』とクーさんが言っていた。
さらに、『温くなるまでの味の変化も楽しんでくれ』とも言っていたので、遠慮なくゆっくり食べさせてもらった。
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