第三十七話……天才女棋士は皇子の婚約を破棄させる
「ぎゃああああぁぁぁぁ!」
「次に嘘をついたら、全員殺します。誰が報告しますか?」
「わ、私が! 私が報告いたします! 私も宰相も、王族全て、コードネル殿下が介入してきた事実を知っていました!」
宰相が左腕を押さえて転げ回っているのを無視して、私は国王の方を見た。
「それで?」
「は、はい! それを知ったキッカケがございまして、カンダール国で発足する商会を我が国で事前に潰せという命令を、ロザリエが受けておりました。これまで毛色が違った政策の一つだったので、どうもおかしいということで問い質したところ、コードネル殿下のご命令だと白状しました」
「お、お父様! それを言っては……!」
「それで?」
「あ……あ……あの……な、なぜこれまで報告しなかったかと申しますと、フィールズ殿下よりもコードネル殿下におもねる方が国益になると判断したからでございます! 申し訳ありません!」
「それで?」
「……。あ……あ……も、申し訳ありません! 不出来な私共は、他に報告するべき点が思い浮かびません!」
「では聞きますが、謝って済む問題なのですか? あなた方がこの問題の責任をどう取るのか、今後どうしていくのかを含めて、初めて報告になるのです。引き摺り出してこいと殿下はお書きになりましたが、それをどうするのかあなた達から提案してください」
「は、はい! 担当者は処刑! フィールズ殿下とロザリエの婚約は、この場で辞退いたします! また、今後はフィールズ殿下に絶対服従、他の皇族のご命令は一切受けません!」
「お、お父様⁉️」
「何を当たり前のことを言っているのですか。いや、むしろ酷い。婚約をそちらから辞退したら、こちらに非があるみたいではありませんか。こちらから一方的に婚約を破棄するんですよ。それに、こちらになんのメリットもないではありませんか。ごめんごめんと謝りながら、さらに泥を食わせる。それがサウエル国の誠意ということですか?」
「あ……あ……」
「……もう我慢なりません! あなた達全員、これ以上私達に恥をかかせるようなら、コードネル殿下、いえ、アンジェナ殿下から天罰を下していただきます!」
ロザリエは立ち上がって、私達に向かって啖呵を切った。
「やめろロザリエ! 我が国を滅ぼす気か! 全員死ぬんだぞ! なぜ分からん!」
「お父様こそ何を言っているのですか! コードネル殿下に付いた方が得だとご自分でおっしゃったではありませんか! だったら、今すぐ助けを求めればいいだけ。そもそも、私達を傷付ければ、この愚か者共も死ぬのですから! この親書だってどうせでっち上げ! 意味のないものです!」
ロザリエが親書を破り捨て、振り返ろうとしたその時、宰相が上半身を起こした。
「陛下、ロザリエを王族から追放してください! 今すぐ!」
「っ……! ロザリエ! お前は国王権限により、サウエル王族から即時追放だ!」
「何をバカなことを! それでは、失礼しま……」
ロザリエが扉に向かって三歩進んだ瞬間、バルさんが再び床を蹴り、文字通り瞬く間に彼女の四肢を切断した。
「え……?」
ドサッという音ともに、床に転がるロザリエ。
彼女は自身に何が起こったか理解していないようだった。
「あ……あ……きゃああああぁぁぁぁああああぁぁぁぁ!」
ロザリエの絶叫が部屋中に響き渡ると、扉が勢い良く開けられ、二人の兵士が入ってきた。
「何事ですか⁉️ 先程も声が……」
「コ、コードネル殿下を……!」
「なんでもない! 閉めろ! あとでまた呼ぶ!」
「は、はっ!」
ロザリエの必死の声を皇子が遮り、兵士に命令。
無情にも扉は閉められた。
「流石、宰相ですね。自分がなぜ左腕だけで済んだのか理解できたようで。そう、あの親書は王族宛てですからね。王族以外の裏切りであれば、王族が全員公開処刑となることはありません。本当は、親書を破り捨てた時点で即処刑なのですが、前後関係は不問としましょう。
先生、宰相の止血をお願いします。ただし、腕はくっつけないでください。切断した意味がありませんし、これは茶番ではありませんから」
「承知しました。そのまま押さえていろよ」
そして、先生が応急処置に向かうと同時に、私はロザリエの顔の近くに行き、彼女を見下ろした。
「ロザリエさん、何が起こったのか解説しましょうか? 一言で言えば、これがあなたへのプレゼントです。素晴らしいプレゼントだったでしょう? みんな喜んでいますよ」
「あ……あ……」
「もう少し詳しく解説しましょうか。あなたは盤上で石を繋がれて負け、盤外ではあれだけ執着していた地位と身分を剥奪された上、両腕両脚を切られて、最期まで苦しんで死ぬ。人生の終局となりました。どちらが愚かだったのでしょうね」
「はぁ……はぁ……こ……このクソガキィィィィ!」
「本当にあなたは最期まで現実を見ていなかったのですね。人を踏み台にしか思っていない。自身の足は腐っているのに、上だけを見て駆け上がろうとする。能力も内面も品性も伴っていないのに、最高の地位を夢見ている。それは躓いて足が折れて転げ落ちますよ。もうその脚もないですけど。
人を故意に裏切るとはこういうことなのです。相手が純粋であればあるほど、邪悪に染まる。あなたには私の言葉など耳に入らなかったのでしょう。だからこの部屋から出ようとした。
普通の人間なら改心するんですよ。私がバカでしたと。それを『自分のせいではない。お前達がおかしいんだ。私は正しいんだ』と宣い、自分では何もできないから権力にすがる。反省も改心もしない人間は、また同じことを繰り返します。ならば排除するしかありません。
あなたが死ぬ前にハッキリ言っておきましょう。あなたが名誉皇族になどなれるはずがない。なぜなら、人間未満の害虫だからです。害虫を名誉皇族にしたら皇族の名が汚れてしまいます。みんなそう思っているんですよ。愚かなあなたを除いて。
しかし、害虫を解き放てば他人に嫌がらせができる。だから利用されていたのです」
「……こ……の……」
それからロザリエは黙ったままだった。
大量出血により、意識を失ったのだろう。
即ち、絶命だ。
「私の話が長すぎましたか……。『このクソガキ』が最期の言葉とは流石ですね……。すみませんね、サウエル国王。あなたの娘を目の前でこき下ろしてしまって」
「い、いえ! おっしゃる通りですから」
「ただ、あなたにも責任はあるのですよ? 『全部お前のせいだぞ』とおっしゃっていましたが、私から言わせれば、全て国王であるあなたの責任です。ロザリエを切り捨てただけにすぎません。しかも、上に逆らうことができない担当者まで生贄にする始末。
あなたが直接ここに来て頭を下げて謝罪したところで、先程も言った通り、なんの責任も果たしていないのです。裏切り行為と釣り合っていないのです。一体どうするのですか? 三人で改めて話し合ってください。五分以内に」
「しょ、承知しました!」
「……セン先生、クーに鉄分が多い食事を食堂から持ってきてもらってもかまわないか? 宰相が帰りがけに貧血で倒れるかもしれないから」
三人が話し合いを始めると、先生が私に近づいてきて耳打ちした。
「はい。ついでに、外の兵に死体処理と部屋の清掃をしてもらうように伝えてください」
「分かった」
先生がクーさんに手招きして、二人で部屋の外に行き、兵士に指示を伝えると、すぐに先生が中に戻ってきた。
そして、四分後。
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