第三十四話……天才女棋士は皇子の婚約者と邂逅する
早朝、私達は使者に親書を渡してから朝食に向かった。
使者は二人ペアで行ってもらうことにして、片方が直接親書を渡す役、もう一人は城の前で待機し、何かあった場合や一定の時間を越えた場合に、戻って私達に伝えに来る役とした。
いずれの使者にも、制限時間は言わないように釘を差しておいた。
そして午前十時。第十側室の前に宮廷移動用の馬車が止まった。
「フィールズ殿下! あなたの婚約者、『ロザリエ・サウエル』が参りました!」
「よく来たな、ロザリエ」
建物の外で声を上げる婚約者に、皇子は自らドアを開けて出迎えた。
「どうしたのですか、殿下。こんな所にいらっしゃるなど。本宮廷の方がゆっくりお話できるのに」
「……。ああ、紹介したい者達がここに集まっているからな」
「そうでしたか。初めまして、皆さん。さぁ、殿下! お部屋へ参りましょう!」
「……」
「まぁまぁ、ロザリエさん。焦らずとも大丈夫ですよ。ねぇ、殿下」
私は皇子にアイコンタクトをした。
「誰ですか、あなたは。殿下に馴れ馴れしい。それに私にも。私がサウエル国の第一王女だと知らないのですか?」
「紹介はもうお済みですよね?」
私の嫌味に対して、婚約者の眉がピクッと動いた。
「……。センから提案があったんだ。父上も了解してくれた。夕方ぐらいには良いプレゼントを渡せそうだよ。きっと、サウエル国のみんなも喜んでくれる」
「ほ、本当ですか、殿下! 私、嬉しいです! お察しの通り、今日こそはと焦っていたもので……。ごめんなさい、センさん」
「いえ、そのお気持ちは分かりますから」
婚約者の眉がまたピクッと動いた。
「よろしければ、先に他の殿下方にご挨拶に参られてはいかがですか? ただし、浮かれてその『プレゼント』のことをおっしゃってはいけません。サプライズにした方が良いですからね」
「……。そうですね……。それでは、先にご挨拶を済ませて参ります。失礼!」
そうして、婚約者は出て行った。
「挨拶って普通一人で行くものなのか?」
「いや……。ただ、彼女は一人で行きたがる。『殿下はお忙しいでしょうから』『城内の執務室にご挨拶に行くからと』と。この隙に色々と報告に行って、アドバイスを受けていたというわけだな」
先生の質問に、皇子は冷静に答えた。
「それにしても、リアラ殿の言う通り、とても王族とは思えませんね。ノウワール王族の方が余程礼儀正しい」
「甘やかされたのかな? まぁ、王族なら当然そうだろうけど、違いは出るもんなんだなぁ」
「お姉様がおっしゃったことが、改めて腑に落ちました。明らかに地位に固執していますね。差別意識と言いましょうか」
「でも、まさかあんな雑な紹介をするなんて……。私達の時はそこまでではなかったんだけど……。皇族とフィーくん以外は気にも留めていないんだね」
「みんなの言う通り、そのためのちょっとした会話をしてみた。でも、私達も気にすることはないよ。それじゃあ、今の内に保養施設の強度を確認しに行こうか。もうほとんど完成状態だけど」
そして、いつものメンバーで保養施設に向かった。
「お疲れ様でーす! どんな感じですか?」
「おお、あとは最終チェックだけだ。崩れて陛下が生き埋めにでもなったら、全員処刑だからな」
私が現場責任者に声をかけると、向こうも気軽に返してくれた。
「いやぁ、すごく早かったですねー。私の父も大工なんですけど、その内ここに来ますので、その時はよろしくお願いします。それはそうと、私達もチェックしたいんですけど、いいですか? 殿下はここの責任者になるので、自分でも確認したいということです。ただ、今の時間は少しだけで、あとは夕方以降になります」
「おお、そうなのか。よし、分かった! 俺達が確認した所から、ハンマーで外側から軽く何度か叩いて行ってくれ。レンガが少しでもズレたら、接着が甘いか乾いてないから、その場ですぐに俺に報告してくれ! 天井付近は専用の道具を使う必要があって、数もそんなにないから最後だな」
「感謝する。皆を信用していないわけではないことは伝えておこう」
実際、この人達なら大丈夫そうだが、念のためだ。一人でも手を抜いていたら、そこが起点となって崩れる場合もある。
私達は現場責任者に手本を見せてもらってから、ハンマーを複数借りて最終チェックをしていき、調理場付近とその周辺は問題がないことを確認した。
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