第二十五話……天才女棋士は情報を収集する
「あのあとも、センの話題で持ちきりだったぜ!」
私達がアーリオと約束をしに行った時には、すでにあの事件のことが城内に広まっていたらしく、至る所で注目を浴びることになった。
そして、昼食後の今に至る。
「明日は、また別の噂で上書きされるだろうけどね。それはともかく、第三皇子以下と第四皇女以下に関する噂があれば教えて」
「殿下がご存知なさそうなものを上げると、第三皇子の側近が予算を水増し請求して私的流用してるんじゃないかって話があるな」
「もちろん、知らないな」
「ついに開き直った……」
「しょうがないしょうがない」
「用途は?」
「そこまでは分からない。ただ、イケメン補正がかかってて、孤児院に寄付してるんじゃないかみたいな噂まである」
「寄付するとしたら、地元か知り合いの所だろうな。だが、しっかり説明すればそのぐらいの予算は付くはずなんだが」
「うーん……。じゃあ、他には? 関係性メインで。もちろん、殿下に危険が及びそうなのも」
「第四皇子は第三皇子に恨みを抱いているらしい。担当地域同士の協業で裏切られたから。どこかで聞いたような話だけど」
「あー、もしかして、鉱山採掘からの宝石加工と販売の話か。第一皇子の担当地域の鉱山で発掘された鉱石は、これまで外国に売っていたんだ。それを第三皇子の所で加工して、第四皇子の所の販売網を使って全国にも展開する話が持ち上がったものの、第三皇子の所で販売までやるって話になったんだ」
「第四皇子の所の販売網ってそんなにすごいの?」
「なんたって帝国北部一の商会があるからな。カンダール国は帝国南部に属するけど、俺の親父はそことコネがあったから、商会を立ち上げたら連携しようとしてたんだ。そしたら、どんな商品でも帝国中に展開しやすくなるから」
「しかし、結局のところ加工と販売を同時にやるには人手不足で、あまり上手く行ってないらしい」
「なるほど。それも第一皇女の策略の可能性はあるね」
「ああ、今なら分かる。第一皇女から第一皇子に提案し、第一皇子は第三皇子と第四皇子にチャンスを与えた。それがまさに罠だった。二人が仲違いして上手く行かないことを見抜いていたんだ。俺達を潰したのもその一環。そう考えると、智慧の女神の名はダテじゃないな」
「第三皇子の智将側近は、その時には、まだいなかったからな。今回の人事より前にいた」
「でも、智将の頭脳を以てしても、未だ上手く行ってないってことは、それこそどうしようもないのか、わざとなのか……。流石に今の情報だけじゃ分からないや。ちなみに、今回の人事は、放ったスパイを戻す目的と新たなスパイを放つ目的の両方ね」
「あと、それに似た感じで、第四皇女と第五皇女も実の姉妹なのに憎み合っている」
「うーん、少なくとも俺はそう思ったことはないな」
「実の家族といる時には、そうだってことかな? 仮面仲良し姉妹」
「ああ、俺がその噂を聞いて確認した。その時は二人だけだったが、どちらもすごい顔で言い合いしてたな。あの廊下は寂しいけど、結構皇族が通るから、俺はあそこを希望してるんだ」
「流石、アーリオだ。仲が悪くなったキッカケは分からないな。昔からそうだったかもしれないし」
「まだある?」
「第六皇女は皇位継承戦に無関心らしいけど、婚約者の方は色々アドバイスしてるらしい。第六皇子は母親の勧めで参謀を探してるっていう噂だ」
「危なかったな……。センがそっちに行っていたかもしれないのか」
「どうでしょうね。結局は、私も会ってみないと分かりませんから。その場合、母親の方を見ますが」
「殿下が弟として優しく接したから、第六皇子は良い子に育っているとは聞いた。センの想像通りかもしれないけど、母親の方は教育熱心タイプかな」
「それなら、母親と参謀の傀儡になってしまうかもしれないな」
「でしょうね。とりあえず、第六皇子には厳しくしない感じで行きますか。人物像の確認は必要ですが。よし! じゃあ、ありがとう、アーリオ。明日明後日は聞きには来ないから、ゆっくり休んで! 日曜が休みならその次の日かな」
「分かった。じゃあ、月曜日に。でも、俺にはこの時間が何よりの癒やしだよ」
「もし何かあれば、俺の名前を出してかまわないからな。いざとなったら、宮廷に逃げ込んできてもいい。俺が……俺達が付いているからな」
皇子は立ち上がると、アーリオの肩に手を置いて、真剣な表情で心強い言葉を投げかけた。
「ありがとうございます、殿下! う、うぅ……す、すみません……また俺……」
「いいんだ」
「昔は『泣き虫アーリオ』って呼ばれてたらしいけど、全然良いよ、その方が。みんなの心を動かすことができるんだからね」
「推察してる時のギャップも魅力的になったな、アーリオは」
「よっしゃ! 俺の料理を食わせて、また泣かせてやるぞ! 優しい味で!」
改めて、私達は良い仲間だと思う。
階級に囚われない正直な心で繋がっている私達。
皇子の命だけではない。私達の全てを守りたいと、私は強く決意した。
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