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天才女棋士は第五皇子を皇帝にのし上げる~帝国宮廷事件真相解明局譜~  作者: 立沢るうど


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第二十四話……天才女棋士は未来の事件を推察する

「俺がまだ小さかった頃、兄上達の中でも『ヴィーク兄』だけが俺を陰でかわいがってくれたんだ。愛称が『ヴィー』で似てるからと。まぁ、それも短期間だったが」

「仲良くしていると、後々面倒ですからね。立場的にも感情的にも」


 私と皇子は、第十側室に戻る途中、少しだけ立ち話をしていた。


「当時の最後に会った時、兄上は俺の頭に手を乗せて、こう言った。『フィー、お前に一つだけ言っておく。俺の背中を見て育つなよ。全てを俯瞰して見るんだ』と。その時は、何を言っているのかよく分からなかったが、今では分かる。その兄上が、なぜこのような状況になっているのか……」

「この場合には当てはまりませんが、対局ではそのようなことがよくあります。悪くなると分かっているのに、次の手がそこしかない時のように」


「センにかかれば、そもそもこのような状況にならないということだな……」

「はい。だからこそ、構想と読みが必要なのです。感情をできるだけ排除して……。しかし、それができないからこそ人間なのです。第一皇子殿下は……紛れもなく人間でした」


「……。よし、戻ろうか。このあとの構想を聞くとしよう」

「はい」


 そして私達は第十側室に戻り、あの事件を通して分かったことと今後のことを、私から説明することにした。


「第二皇子は、この機に第一皇子と第三皇女を暗殺するつもりだよ」

「なっ……! 憎しみ合わないんじゃなかったのか⁉️」


 皇子は、あの時の第二皇子の言葉を思い出して、驚いていた。


「あの時、彼は『しめしめ』と思っていたはず。私がそう仕向けたから」

「ど、どういうことだ⁉️」


「誰かを最も暗殺しやすい状況が戦争。手段の難易度ではなく、誤魔化しの難易度の話で。だから、私はそのような地域がないかをあらかじめアーリオとフィーくんに聞いた上で、あの事件の時にあえて質問し、そこに最低でも皇族一人を向かわせるように促した。

 さらに、私があえて暗殺について触れ、それを第二皇子の取り得る選択肢として浮上させた。

 その上で、『そんなことしてはいけませんよ』と言って、彼に肯定させた。第二皇子としては、今回と側近の件で第一皇子に汚名を着せることに成功しているし、彼自身が、彼は暗殺など仕向ける人ではないと周囲に印象付けたかったんだよ。たとえ暗殺を実行しても自分が疑われないように」

「……。本当にセンには、毎回驚かされる……。今回は、読みと言うよりも、事前の策略に……」


「正直に言うと、この機に第二皇子も暗殺されてほしいんだけどね。第一皇子、第三皇女を殺した恨みーとか、言行不一致ーとか言われて。それを計画するとしたら、第一皇女だね。皇后からお願いされて、仕方なくやる感じ。そしたら、第二皇子の隠密側近はボスを失って、第四皇子か第四皇女以下の下に付く。そうすれば、彼ら彼女らが他の皇族の暗殺をしやすくなるから、さらに動きが出る」

「そして、読みか……」

「第四以下っていうのは、あれか。第三皇子には側近がすでにいるから行かない。そして、さっきフィーリアさんに聞いたが、皇后の娘は第三皇女までだから、その仲間には加わらないってことか」


 先生の確認に、私は頷いた。


「そう。親子関係については、皇后は、第一皇子、第一皇女、第二皇女、第三皇女。

 第一側女は、第二皇子、第四皇女、第五皇女。

 第二側女は、第三皇子、第六皇女。

 第三側女は、第四皇子。

 そして、第四側女のお母様は、第五皇子フィーくん、第七皇女リーちゃん。

 最後に、第五側女は、第六皇子という構図。

 さっき集まった時の様子も加味して考えたけど、これで合ってる? あの場には、少なくとも第一皇女はいなかったと思う」

「ああ。俺からは話していないのに、よく分かったな。本当に……」

「第六皇子は幼い少年で、母親と手を繋いでたから分かりやすかったが……」

「他の内訳は流石に分からないよなぁ」


「ついでに、近い内に起こり得る事件もまとめておこうか。

 第二皇子サイドによる『第一皇子暗殺事件』と『第三皇女暗殺事件』。

 皇后バックの第一皇女サイドによる『第二皇子暗殺事件』。

 私達第五皇子サイドによる『サウエル国第一王女裏切り婚約破棄事件』。

 明日また追加されると思うけど、とりあえずこんなところ」

「明日?」


「うん。さっきの事件をキッカケに、このあと私に戦いを挑んでくる人がいる。それが第一皇女。すでに第二皇女から第一皇女に報告が行ってるはずだから。彼女がどんな人かすぐに分かると言っていたのは、このこと。

 強いて事件名にするなら、『智慧の女神力量測定事件』。今日中に招待状が来るはず」

「……。こんな『事件』がこの世にあるなんてな……。事件予知に、冤罪予防、それを利用して真犯人追及の証拠として突きつけ事件解決、さらに事件そのものを利用して真犯人とその他を陥れ、自分達がのし上がる。そして、その結果から導き出される次の事件の予知、黒幕の正体まで認識……。あり得ないだろ……。一石何鳥なんだ……」


「偶々上手く行ったんだよ。思っていた以上に、ここの人間は『読み通りに』動いてくれただけ」

「それにしてもなぁ……」

「言うほど『だけ』か? 自分かセン先生の認知を疑うぞ?」

「あっははは! センちゃんにしてみれば、単に一局のほんの一面にすぎないからね!」

「私でさえ、そんな推理小説は読んだことありませんよ!」

「リーちゃん、本好きだもんね。あ、もしかしてセンちゃんとお風呂でっていうのもそこから……。じゃあ、今日は大浴場の予約をしておこうか!」


「『じゃあ』って言うのは置いておくとしても、大浴場には入ってみたいね。今日の予定は、私達は朝食のあと、アーリオの所に行って、また午後に話を聞かせてもらう約束をするのと、陛下の健診兼追加報告、あとは招待状の確認と仲間のお出迎えぐらいかな。お風呂は夜遅くなってもいいよ」

「いや、待て……。仲間……? もしかして性欲処理の……」


「いや、その人は三日後以降。まぁ、分からないよ。どっちも本当に来るかどうかは」

「まぁ、来るんだろうな……」


 それから私達は、帝都でクーさんと別れて朝食を食べに行き、城に戻ったあと、予定通りアーリオとの約束を取り付けた。

「面白かった!」「つまらん……」

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最後に、本話をお読みいただき、ありがとうございました!


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