第十八話……天才女棋士は詳細を把握する
「うん。まず、一つ目。これは殿下もご存知かもしれないけど、ミズエール国の内乱は完全に収まったっていうことでいいよね? 他に紛争地域や内乱地域があれば教えてほしい。あるかないかだけでいいから」
「ああ、収まった。内乱地域は他にもあったし、今も続いていると城内で聞いたことがある」
皇子は頷き、アーリオの言葉を肯定した。
「ありがとう。じゃあ、二つ目。第二皇子の側近の行方について、アーリオの推察を聞かせて」
「なるほど……。アーリオなら、その情報網から確度の高い推察ができるというわけか」
「聞かれると思ったよ。その前に殿下、『特別作戦部隊』については周知の事実ということで間違いありませんか?」
アーリオの質問から、私も大体を察した。
「ああ。特に秘密にしていることではない。所属隊員についても同様だ」
「では、その中に『特殊隠密小隊』が存在することについては、いかがですか?」
「いや……知らない……。まさか……」
「はい。第二皇子が側近の失踪前に極秘に創設した小隊です。どこまで承認を得ているのかは分かりません。当然、隊員も人数さえも最高機密情報です。いるとしたら、そこです。加えて、実際は分隊以下の数のはずです」
「最初に私がアーリオに言った『危険な行動』とは、このことです。明らかに修羅場を潜った顔付きと成長でしたから」
「俺は知らないことが多すぎるな……」
「秘密にしている人が多すぎるんだと思います」
「その通り。でも、ありがとう、アーリオ。あとは、こっちでなんとかするからね。
じゃあ、そろそろ時間ということで……殿下、皇室典範の場所に行きましょうか」
それから、私達はアーリオと別れて、城内の『法律書庫』に向かった。
「セン、一つ聞いていいか? 俺がアーリオよりも棋士として上だと言っていたが、俺にはそう思えない。どういう根拠があったんだ?」
「もちろん、彼の成長は凄まじいものがありました。ただ、私があの時に言った言葉は今も変わりません。棋士として大事なのは、バランス感覚です。勝負する所で勝負し、そうでない所は手を抜いたり逃げたりする必要があります。その判断をするために、読み、知識、経験、勘を使うわけですが、殿下にはそれが備わっているのです。これまで関わってきた人達のおかげもあって。責任の話もそうです」
「だから、俺もここにいるんですよ。セン先生がいるだけじゃない。なんとも言えない心地良さがあるから」
「なんとなくでもそれが伝わってくるんだよな」
「そうなのか……。ありがとう、みんなのおかげで、俺もまだまだ成長できそうだ」
「それが仲間というものです。まだ増えますからね」
「そう言えば、俺達は聞いてなかったな。どのぐらい増えるんだ? いや、聞かない方が良いか。色々な意味で」
「楽しみだな! 料理の腕が鳴るぜ!」
「そう言えばそうだった……。皆、優秀すぎて涙が出てくるよ」
「勉強になりますよ。色々な意味で」
「いつも通りでいいと言っても、勉強は必要ですからね」
「医学も料理も日々勉強だからなぁ」
私達は『うんうん』と頷きながら、いつの間にか着いていた法律書庫に入った。
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