第十七話……天才女棋士は黒幕を推察する
「殿下の責任ではありません。皇族と言えども、流石に幼い少年にそのような責任はありませんから。それよりも、アーリオの話の続きに集中した方が得策です。なにせ、まだ婚約者の話が出てきていないのですから」
「ああ……すまない……。アーリオ、頼む……」
「はい……。情報を探る中で、その婚約者と第二皇女に繋がりがあるんじゃないかと思ったんだ。なぜなら、第二皇女が担当している地域とサウエル国の政策が非常に似ていて、その施行タイミングも大体同じだったから。そして、彼女は第二皇女と並び、『政策通』だと言われていたから」
「……。皇子は、彼女は政治に口出ししないタイプだとおっしゃっていたから、不思議だね。単にわきまえているのか、本当は政治のことなんて分からないのか」
「元々は、その政策で帝国から評価されていたから、俺の婚約者に選ばれたらしいが、いざ会ってみると、『殿下のお好きなように担当地域に申し付けるのが良いと思います』と言ってきたんだ。まぁ、俺は別にどちらでも良かったんだが」
「だとすると、やっぱり第二皇女が彼女に政策という名の恩を売り、傀儡のように操っている可能性が高いな……。じゃあ、なぜ第二皇女が俺達家族を潰そうとしたのかだが、担当地域に余計な風を吹き込ませたくなかったからじゃないかと思う。自分の評価を維持するために」
「……。その可能性はあるけど、もう一つない? さらに俯瞰で考えて……現在、経済政策で最も成功している国って誰が担当してるの? 多分、第一皇女だよね? 智慧の女神」
「……。その通りだ……。そこに行き着くのか……」
「じゃ、じゃあ、第一皇女が第二皇女に入れ知恵、と言うか騙して、カンダール国をトップに『させなかった』ってことか……?」
「そう。それだけアーリオ家族が評判良くて、『アーリオ商会』が脅威だったんだよ。あくまで可能性だけど。でも、私が第一皇女と会えば大体分かると思う。これはみんなにも言ったけど、すぐにその機会は来るよ」
「……。それなら、アーリオがこの城にいたら、姉上達にバレるんじゃないのか? あの商人の息子だって」
「いえ、どうやらその二人は、下級国民の名前を全く覚えないらしいのです。もちろん、会ったこともありません。だから、目の前で誰かに俺の名前を呼ばれても、全く気付いていませんでした。婚約者の方は、俺の名前さえ知らないのではないでしょうか」
「そんなことある? 少なくとも第一皇女は、智慧の女神って呼ばれてるのに。でも、そう思い込めばそうなのかもね」
「思い込みか…。『立場が人を作る』とは言うが、自分と下々の者とは生きている世界が違うと思い込み、実は上には上がいることに目を瞑り、智慧の女神と呼ばれることに慢心していると」
「とすれば、繋がることは繋がるか」
「そうだね。あくまで推察。では、婚約者側のメリットは何か。当然、第一皇女が皇帝になった時の報酬。おそらく、身の安全と国王以上の絶対的な地位。名誉皇族のような地位があるのではないですか?」
「少なくとも俺は知らないな。単に知らないだけだ。皇室典範やそれに準ずる法律をそこまで読み込んだわけではないからな」
「では、このあと一緒に調べましょう。仮にそうだとして、第五皇子の妻というだけでは、自分は蚊帳の外、どころか世界から排除されてしまうと考えたか、第二皇女を通して第一皇女に提案されたか。いずれにせよ、すでに殿下を裏切っています。第二皇女の越権行為を殿下に報告しなかった時点で」
「分かった……」
「僭越ながら殿下にお聞きしますが、今回の婚約者に限らず、裏切り者と分かった人物に対しては、以降どのように接するのですか? 殿下の性格からは、あまり想像ができないもので。単に浮気のようなことを想像していただいてもかまいません」
「……」
「考えたことはなかった……いや、考えたくなかったんだろうな……。そうだな……。責任を取ってもらえればそれでいいと考えるかもしれない。浮気なら、最低三ヶ月は関係解消、その間に俺は自由の身となるし、相手は再浮気か逆ギレか、何をするか分からないから投獄か完全解消。俺が殺してほしくない人を、黙って殺した場合は、その代償を体で受けてもらうとか」
「承知しました。案外、厳しいので安心しました」
「殿下、念のために申しておきますが、私は裏切り者となる可能性がある人材を呼んでいるつもりはありません。ただ、殿下の行動によっては、結果的に裏切る形になり得ることはご承知おきください。その場合、なぜ裏切るかを必ず言い残して、その場かこの世を去るはずです。私が唯一懸念していたのは、そこです。私が先に申した信頼関係の話ですね。
今の『責任』という言葉をお忘れなきようお願い致します。例えば、死ぬべき人間を殿下のご寛大さで何の罰も与えずに、あるいは軽い罰で一方的に許した場合、集めた仲間の多くが殿下の下から去ってしまいます。そういう人達なのです。アーリオの質問の意図がそれです。
また、死ぬべき人間を私が秘密裏に生かす場合もあります。その場合は、私の考えを開陳した上で、殿下のご判断をいただきたく存じします。判断に迷う時は、遠慮なくそうおっしゃってください。いえ、きっと殿下ならそうおっしゃるでしょう。
かと言って、都度全員に聞くのは無駄ですから、ある程度は殿下自身でご判断ください。もちろん、僭越ながら私も言葉を付け加えますので、ご安心を。要は、ご乱心さえしなければ、なんの問題もありません。最初に申した通り、いつも通りの殿下であれば」
「分かった。万が一、その時が来たら頼む!」
「流石、センだ。まさに、殿下との信頼関係を見させてもらったよ」
「ああ、普通そういうことは言わないものだからな。他の皇族や王族なら、僭越すぎて、言ったら殺されるのがオチだ」
「アーリオ、言っとくけど俺達も殿下との信頼関係はあるんだぞ」
「そうだね。アーリオが後宮廷に入れればそれがすぐに分かるんだけど。さっきも言ったけど、もう少し待ってね」
「分かってるって。その言葉だけでも、大体分かったから。じゃあ、俺からは以上だけど、センは何か別件で聞きたいことあるか?」
アーリオが私の期待通りの質問をしてくれた。
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