第十六話……天才女棋士は状況を把握する
「じゃあ、説明をお願い。私に向けて説明するような口調でいいから」
昼食を終え、少しゆっくりした時間を空けたあと、私はアーリオに説明を促した。
「分かった。あくまで推察だが、結論から言うと、第二皇女にハメられて商人を辞めることになった。そこに、殿下の婚約者であるサウエル国第一王女が関わっていた。だから、殿下に味方はいないと判断して、センを紹介した」
「っ……!」
「なるほどね。皇族関係者と婚約者については予想通りだ。先生から聞いたんだけど、ご両親は事前に逃したってことでいい?」
「ああ。のんびりとまでは行かないが、普通に暮らしてる。移動商人は辞めて、小売をやってるよ」
「では、詳しく頼む」
「俺達一家は、帝国中を定期的に巡ってたけど、商会を持つことが夢でさ。ある時、『カンダール国』の王族から、『新たに商会を作るからそこでやってみないか』って声をかけてもらったんだよ。親父もすげぇ喜んでてさ。
ただ、最初は国が全面支援してくれるっていう話が、次第にトーンダウンしてきて、こちらも相応の負担をすることで決着した。声をかけてくれた王族も担当者も謝ってくれたんだけど、王族が謝るって中々ないよなと思いつつも、どうやってリスクを最小限に抑えるか考えた。
そこでとりあえず、両親が暮らしていけるだけの金を残して、俺がその商会業務だけを引き継げば、何かあっても俺の方を潰すだけでいい。俺が別の仕事を探すか、両親の所にひっそり帰ればいいだけだから。俺が未成年なのは目を瞑ってもらうということで、先方も両親も納得した。特に、先方には本当にありがたいと思った。お互い誠実に話した結果だったから。
そんな時、サウエル国からカンダール国に対して、『その商会をこっちの全面支援で実現させよう。そうすれば、両国間やその間の国にも恩恵があり、経済も活発化するのではないか』と提案があった」
「……」
「俺達としては、一度契約したことだから、そのままカンダール国で立ち上げたかったが、両国で話はついているとのことで、サウエル国に任せた。
だが、一向に話が進まず、どうなっているのかとサウエル国に問い合わせたら、『やっぱりやめた』と言われた。当然、責任など取ってくれないから、カンダール国にそれを報告したら、『こちらはすでに別の商人にやってもらうことになったから、どうしようもできない』と別の担当者に言われた。『じゃあ、俺達の投資金だけは返してくれ』と言ったら、『じゃあ、裁判しよう』と言われたが、それも一向に始まらない。明らかに時間稼ぎだった。
『最初の、誠意を見せてくれたあの王族と担当者と話がしたい』と言ったら、すでに二人とも処刑されていた。『一体なんなんだこれは』と思った。どす黒い闇を見た気がした。そして、俺達家族は身の危険を感じつつ、嫌気も差して、そこから逃げ出した。
驚くべきことに、今まで話してきた内容は全て事実だ。王族や両国の担当者が詐欺師にすり替わっていたということもない」
「っ……!」
「……。酷すぎるね……」
「王族に関われるのは、同じ王族かその上の帝国しかない。だが、カンダール国での王族同士の争いはこれまで聞いたことがなかった。また、サウエル国がカンダール国の顔に泥を塗った形になるが、サウエル国側で何らかの処分があったとも聞いていない。したがって、この件は帝国主導で行われたことになる。
では、それぞれの国の担当皇族は誰かと言うと、カンダール国は第二皇女、サウエル国は第五皇子、つまり殿下です」
「その通りだ。四年前から担当している」
「……」
「でも、俺は殿下を疑わなかった。なぜなら、俺達が逃げ出す時に、街の噂で聞いたんだ。あの誠意ある王族と担当者は、とある皇族の振る舞いを見習っていたと。どんなに偉くても、お願いする時は頭を下げなければならない。悪いことをしたら謝らなければならない。何事も素直に話さなければならない。相手が良いことをしたら感謝して褒めなければならない。嬉しい時はみんなで笑い合おうと」
「……」
「……」
「でもそれが誰だったのかは、俺があの事件の真相を少しでも知りたいと思い、情報を探るべく、帝国城に雇ってもらってから知ったことだ。実際に殿下をこの目で見たり、立ち話を盗み聞きしたりしていると、まさにそのようなお方だと感じた」
「だが俺は、そのカンダール国の王族に身に覚えがない。ただ、その言葉は子どもの頃に言った覚えがある。カンダールとサウエルの間の『ミズエール国』のパーティーで、ある貴族の子どもが一つ上の階級の貴族の子ども達に嫌味を言われていたのを止めに入った時に口にした言葉だ」
「その子どもが親に言って、親かそれを聞いた親族がカンダールに亡命した。それが担当者で、そのことを信頼できる王族に言ったら、それに倣った、のかな? 処刑されたのは、第二皇女に対して怯まず、正当な反論をしたから」
「そうだったのか……。『私は別の国の出身なんです。どことは言いませんけど』とだけその担当者は言っていたんだ……。ところで、ミズエール国はかつて殿下の担当だったと聞きましたが、内乱発生と当時の年齢を理由に、第二皇女に取り上げられたというのは本当なのですか?」
「ん? それは正確ではないな。俺がミズエール国の担当だったことはない。パーティーに行った時にその話が出たものの、冗談で終わった話だ。もちろん、子どもすぎたから。ずっと姉上、第二皇女『コードネル・ケイサール』の担当だ」
「……。アーリオの話が本当だとすると、それ、殿下もハメられてますね……」
『っ……!』
私の言葉に、皇子とアーリオは絶句し、さらにアーリオは、その推察力で導き出した状況を想像して、怒りで拳を握っていた。
「くっ……! 確かじゃない……確かじゃないものの……あの方なら、いや、アイツならあり得る……! 俺達をハメた時のように……! 内乱を予期し、殿下に国を一時的に預けることで、自分の評価を下げないようにして、殿下をスケープゴートにした! そのことを一切、殿下に知らせずに! 『私が弟に全部言っておくから』とでも言って!」
「っ……!」
「担当地域の現状報告会でも誤魔化せるのは、すごいことだけど……。殿下は参加させてもらえなかったのでしょうね。『それよりも座学を優先させた方が良い』とでも言って」
皇子は俯いて、震えていた。
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