第十二話……天才女棋士は皇子母妹と邂逅する
「母上! 『リアラ』! ただいま!」
建物が十個並んでいる後宮廷の左端にある建物の前に来た私達。
皇子がドアを開け、帰宅の挨拶をすると、すぐにタッタッタッタと建物の奥から足音が聞こえた。
「お兄様! おかえりなさい!」
「フィーくん、おかえり」
十四歳の妹、『リアラ皇女』とフィーリアさんが皇子を笑顔で出迎えた。
皇子の横からチラリと覗いた彼女達の風貌は、まさに絶世の美少女と美女と言っても過言ではないだろう。
特に、フィーリアさんは三十四歳とは思えない。リアラ皇女の姉と言われても全く不思議ではないように見える。
「二人に紹介しよう。参謀のセンと、その知り合い医師のトール先生、同じく調理師のクーだ。三人共、俺達の安心と安全には欠かせない存在、仲間となってくれた」
「は、初めまして、お兄様の妹の第七皇女、リアラです……」
「母の第四側女フィーリアです。よろしくお願い……しま……す……」
私に目をやりながらの二人の挨拶を聞いて、私は少し気になった。
「……。参謀がこのような女で意外でしたか?」
「っ……!」
「いえ、とんでもありません。息子のことをどうかよろしくお願いします」
リアラ皇女は図星らしいが、フィーリアさんの柔らかな物腰の中に含まれる冷静さも私は気になっているのだ。
「お二人と少しお話しがしたいのですが、よろしいですか?」
「『対局』じゃなくていいのか?」
皇子の質問に、私は彼女達の顔を見ながら口を開いた。
「はい。同じことですから」
「なるほど……」
「そう言い切るのは、セン先生だけだぞ」
「本当にセンちゃんは面白いなぁ」
『……?』
私達の会話に、リアラ皇女とフィーリアさんは疑問符を頭に浮かべていた。
△ ▼ △ ▼
側室の建物に入って、右側の一部屋に案内されるとテーブルと椅子があり、私達はそこに全員座るよう皇子に促された。少し辺りを見回すと、チェス盤も壁際の棚の上に置いてある。
「では、お二人に単刀直入に聞きますが、殿下の婚約者について、どのように思われているかお聞きしてもよろしいですか?」
『っ……!』
私の質問に、二人は目を一瞬大きく開いて、驚きの表情を見せた。
そして、それは二人だけではなかった。皇子も驚いていた。
「セ、セン……!」
「ご安心ください。誰かに告げ口するわけではありませんから。私は、殿下への二人の『愛の形』を知りたいのです。まぁ、普通は答えにくいことでしょうから、お二人がお答えやすいように、耳寄りな情報をお伝えしましょう。陛下は、場合によっては殿下の婚約を破棄してもいいとおっしゃりました」
『なっ……!』
「……。母上、本当です。父上は俺達に対して、完全に心をお許しになりました。そして、正直におっしゃったのです。俺達の未来予想図を描いた時の、『彼女』の違和感に。さらに、やはり信じられるのは母上だけだとも……」
「いかがですか?」
『……』
リアラ皇女とフィーリアさんは、顔を見合わせ、静かに頷いた。
おそらく、テーブルの下ではお互いに手を握り合っていることだろう。
「私が受けた第一印象は、あの方はお兄様に相応しくないと思いました……。お兄様には、絶対にもっと相応しい人がいるのにと……。別に特定の誰かを指しているわけではありませんが……。あの方は……綺麗な方だとは思います。王女らしく高貴さもある。しかし、なぜか『品』が伝わってこないのです。下心が見え見えと言っても良いかもしれません」
「私は、息子が納得していればそれでいいという立場です。私が口出しするようなことではないと。そう考えていました……。ただ、陛下がおっしゃるのであれば……いえ、私には判断できません……。きっと私が気付いていないことを、リーちゃんもフィーくんも陛下も把握しているはずですから」
「では、もう一つ質問です。お二人とも、なぜ殿下に対してこれまでなんの手助けもしてこなかったのですか? 口だけですか? 全て殿下の自己責任ですか? 殿下の周りには、味方が誰一人いなかったのですよ? その婚約者と同じではないですか。だから私を頼ってきた。それとも、殿下を労うだけで助けになると思ったのですか? もしかして、殿下に死んでほしいと思っているのですか?」
『っ……! そんなわけありません!』
二人の怒りの声が合わさった。
「母上が怒ったところを初めて見た……」
「では、お二人には何ができるのですか? 精神的な癒し以外で。今、ここで、言ってみてください。皇女殿下から」
「そ、それは……。わ、私にできること……精神的以外……。じゃ、じゃあ、肉体的に癒やします! お兄様には、私の身体を自由に使ってもらいます! 私に欲望の全てをぶつけてもらいます!」
『ええええ⁉️』
リアラ皇女の突然の告白に、私以外の一同は驚いていた。
「分かりました。では、参謀である私がお願いした時には、殿下のお願いと同義なので、殿下をスッキリさせてあげてください」
「い、いいのですか⁉️」
「はい。どうぞ遠慮なく」
「あ、ありがとうございます!」
「なぜそこで感謝するんだ……」
皇子の疑問は無視して、私はフィーリアさんの方を向いた。
「母君も殿下を肉体的に癒やしたいですか? それならそれで、別に私はかまいませんが」
「えぇ⁉️ い、いえ、流石にそれは……で、でも、フィーくんがどうしてもって言うなら……い、いやいや! ダメダメ! こんなおばさんの身体なんて……」
「母上……?」
もじもじしながら一人でノリツッコミをしつつ、首を横に振る、満更でもないフィーリアさん。
「た、例えば、私から陛下に色々とお願いすることはできるかもしれません……」
「それでは、あなたがやったことになりません。そもそも、私達からお願いできる関係性にもうなっているので、意味がありません」
「あ……あ……え……えっと……。あっ……! この感じ……懐かしい……。やっぱり……そうなんだ……」
「……。どういうことですか?」
そこでフィーリアさんは、私の目をじっと見つめた。
「面白かった!」「つまらん……」
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