ゆいこのトライアングルレッスンM〜強敵!?〜
バレンタイン当日
俺はいつもの如くゆいこの家と向かう
玄関の前、たくみと鉢合わせになり、なんとなく気まずい空気の中、俺は無言でたくみがインターフォンのチャイムを押すのを見守った
キンコーンと耳に心地のいい可愛らしい音が鳴ったが、応答はない
もう一度鳴らして、たくみが怪訝そうな顔で俺を振り返った
呼び出しておいて留守はおかしい
たくみもそう思ったのか、ドアノブに手をかけた
ドアはカチャと小さく音を立てて、何の抵抗もなく開いてしまった
ますます怪訝そうな顔をしつつ、おれとたくみは中へと足を踏み入れる
「おーい、ゆい....」
たくみがそう声を上げかけてハッとしたように固まった
下を向いたまま固まるたくみの視線の先には玄関に揃えられた男物っぽいスニーカー.....
たくみが不安そうな泣きそうな顔で俺を振り返った
「ゆいこっ」
俺も思わず声を上げると、靴を蹴り飛ばす勢いで脱ぎ、家の中へと走り込んだ
リビングへと続くドアを勢いよく開いて俺は思わず立ち尽くす
ドアに背を向けた状態で置かれたソファーの上にはくっつくくらい至近距離に座って、楽しそうに談笑するゆいこと男の姿....
「ゆいこっ」
たくみの悲鳴に近いくらいの呼び声に、ゆいこがビックリしたように振り返った
「びっくりした...たくみ、ひろし、いらっしゃい」
ゆいこの隣にいた男がゆっくりと立ち上がり振り向いた
「お、お前っ....!むさし....っ」
たくみが突然脱力したように項垂れた
たくみの言葉に、俺は改めて男の顔に目を向ける
….確かに....ここ何年か会わない間に「子供」から大人になりつつある、むさしだった
「何してんだよ、お前」
たくみが不機嫌度Maxでぶっきらぼうにむさしに問う
「ゆいこに会いに来たんだよ」
「ゆ・い・こぉ?」
「なんだよ」
「生意気だぞ、おまえ...っ」
「ちょっとちょっと、たーくーみ!落ち着いて?むっくん、偶然近くまで来たから、久々に顔見に来てくれたんだって!大きくなったよねぇ!ねぇ、ひろし!むっくん、4月から高校生だって!」
不機嫌そうにむさしを睨みつけるたくみを持て余して、ゆいこが「助けて」とでも言うように俺に話を振る
ゆいこを助けてやりたいのは山々だが、こっちも我が物顔でゆいこにピッタリと寄り添うむさしの姿は気に食わない
「あ、そうだ、バレンタイン!チョコレート用意してあるの!」
男3人、無言で威嚇し合う空気に耐えきれなくなったのか、ゆいこがアタフタと部屋を出て行った
「....たくみも....むさしも...一旦落ち着け。ゆいこが泣くぞ」
俺の言葉に、たくみとむさしが不貞腐れたようにソファーに腰を下ろした
「はい!ひろし...」
走って戻って来たゆいこが不安そうに眉を寄せて俺に手作りチョコっぽい小さな包みを手渡す
「はい、たくみ...」
恐る恐る機嫌の悪そうなたくみにも俺と同じ包みを手渡し、
「はい、これはむっくん。...ごめんね、今日来るって知ってたらむっくんにも作ったんだけど...」
申し訳なさそうに、むさしには市販のチョコレートの包みを差し出した
途端に勝ち誇ったようなドヤ顔をむさしに向けるたくみの変わりように、俺は思わず苦笑した
悔しそうに一瞬唇を噛んで、むさしがゆいこの腕を引っ張ったかと思うと....
「ゆいこ、ありがとう」ちゅっ
ゆいこの頬に小さくキスをした
「お前....っ!!」
「むさし!!」
俺とたくみの声が被る
してやったりとニヤリと憎たらしい微笑みを浮かべて、むさしが帰って行く
慌てふためくゆいこと怒りに身を震わせるたくみを前に、俺はなすすべなく立ち尽くした




