ポーションを作ってみよう!
イルファの目のケガが治るまで二週間。
俺とリオはイノシシの他にもウサギやクマを仕留めて肉串にして売っていた。
ハーブを使った肉串は思った以上に好評で毎日しっかり完売、懐をおおいに潤わせてくれた。
「イルファ、目のほうはどう?」
リオが包帯を取ってみると痛々しい傷跡は残っているものの、傷は完全にふさがっていた。
「はい、もうケガは治りました」
やはり失われた視力は元にもどらないようだ。
それでも出会ったころの心細そうなイルファはもういない。
「これでリオとライドさんの仕事のお手伝いができます!」
両手でこぶしを作って満面の笑みを見せてくれた。
ちなみにケガが治るまでのあいだに、リオから呼び捨てでよんでほしいと言われて今の呼び方になっている。
亜人同士、女性同士ということもあって仲良くなってくれたのは嬉しいかぎりだ。
「リオ、あれを渡すんじゃないの?」
「あ、そうだった!」
忘れっぽいリオはポケットから紙の包みを取り出してイルファに渡した。
「はい、これボクとライドからのプレゼント!」
「わたしに、ですか……?」
イルファがおそるおそる包みを開いていくと、リオの髪色に似た鮮やかな青色の眼帯が現れた。
両目用のもので、顔の正面にあたる部分には意匠がこらされていて素人目にもオシャレな感じだ。
「わぁ……!」
「えへへ、仲間になった記念だよ。つけてみて」
言われたとおりに両目の傷を隠すように眼帯をつけていく。
「これで、どうでしょう……?」
「わぁ! すっごい素敵!」
「うん、よく似合ってると思うよ」
白いローブに金髪、そして鮮やかな青の眼帯。
うむ、俺とリオが迷いに迷って選んだだけあってとても似合っている。
「二人とも、ありがとうございます!」
頬を紅潮させて、イルファはうれしそうに笑った。
「それで、今日はどのようなお仕事をするのでしょう?」
イルファにとっては初仕事となる今日の仕事。
前々から作ってみたいと思っていたものがある。
「じつはポーションを作ってみたいと思ってるんだ」
「ふむ、ポーションですか」
冒険者をやっていたイルファなら馴染みのアイテムだろう。
モンスターと戦う冒険者なら誰しも使ったことがあるであろう回復アイテム。
少量を飲むだけでキズが癒える、鉄板のマジックアイテムだ。
これなら冒険者相手に売れること間違いなし!のはずだ。
「薬草採取はしていたから、これをうまく水に溶かせば作れると思うんだけど……」
「ライドさん、ポーションは薬草を水に溶かすだけでは作れませんよ」
「え、そうなの!?」
あぶないところだった。
あやうく素人が手を出して大損するところだった。
「ポーションは専用のビンに水を入れて薬草を溶かす、ここまでは合っています」
「え、それだけじゃダメなの?」とリオ。
「ポーションもマジックアイテムですから、溶かすときに魔力を均等に流してあげる必要があるんです」
「そうなのか……」
まったく知らなかった。
たしかに言われてみればマジックアイテムを作るわけだから魔力が必要になるというのは道理だ。
水に薬草を溶かしただけでは簡単な飲み薬になるだけなのだろう。
「ですから、ポーションを作るならわたしが魔力を流して手伝いますね」
「イルファがいてくれて助かるよ」
仲間になったばかりのエルフは初仕事でいきなり役割ができたことが嬉しいのか、穏やかに微笑んだ。
「あ、それと癒しの葉はご存じです?」
「癒しの葉?」
「ポーションの回復効果をほんのすこし高める薬草です」
そんな薬草の名前ははじめて聞いた。
どうやらイルファはポーションなどの薬についていろいろ知識があるみたいだ。
さすがはエルフ、草や木などについては人間の俺なんかよりよっぽど詳しい。
「ポーションを作るときに癒しの葉を入れることで、わずかに緑がかったポーションになります」
「初級ポーションより少しだけ効果が強いってことか」
ポーションには効能別に三つの色がある。
初級ポーションは青色で回復量はそこそこ。
おもに初心者や中級になったばかりの冒険者が使うことが多い。
ランクで言うとFからDランクなりたてくらいの冒険者が使うイメージがある。
つぎに中級ポーションは緑色で回復量はかなりのものだ。
Dランク以上の冒険者御用達のアイテムで、一本飲めばまず体力を全回復できる。
深手を負っても中級ポーション一本で即座に回復できるのが魅力の中上級者向けの鉄板アイテムだ。
最後に上級ポーションは赤色をしているらしい。
らしい、というのは見た人も使っている人もすくないからだ。
赤い上級ポーションはどんなキズでも完全回復できる、ものすごいものらしい。
なんでも超ベテランAランク冒険者や幻のSランク冒険者が使っているとウワサされているが実際に見たという人はほとんどいない。
すさまじく高価なポーションらしいが、需要もすくないので仮に作れたところで売れるかどうか怪しいのが問題だ。
「よし、それならその癒しの葉を採取してポーションを作ってみよう!」
俺とリオ、そしてイルファは部屋の天井に向かってこぶしをつきあげた。




