消えた子どもたち
野菜畑にいる俺の名前を呼んでいるのはリオだった。
駆け足で近寄ってきて急停止。
息を荒げながら俺の手をひっぱった。
「ライド、大変だよ! 子どもたちがいなくなったって!」
「え、子どもが……!?」
「森に行くまえに治療院に寄ったんだけど、そこで先生と大人たちが話してたんだ!」
「わかった! 急いで行ってみよう!」
俺とリオは人にぶつからないよう気を付けながら治療院へ急いだ。
治療院に着くと、そこにはすでに人だかりができていた。
「ベクター先生!」
「む、ライドくんか」
俺は人の山をすり抜けて治療院の中に入った。
先生を中心にして街の大人たちと自警団のコボルトたちが話し合っていた。
先生の横にはイルファとラキス、グローブの姿もあった。
「いったい何があったんですか?」
「子どもたちが三人、昨日の夜から帰っていないそうなんだ」
「帰って、いない……? 子どもたちの親御さんは?」
すぐ近くにいたコボルトが詳しく説明してくれた。
「親たちは冒険者ギルドに捜索の依頼を出しに行ったよ。昨日の夕方までは俺たち自警団の団員が三人で遊ぶ姿を目撃してる。でも、そのあと家に帰っていないみたいなんだ」
「消えた、ってことですか……?」
「わからない。でも三人ともこの街で生まれ育った子たちだ。街の中で迷子になったとは考えにくい」
そうすると街の外へ出てしまったか、あるいは見知らぬ誰かに……。
俺が最悪のケースを考えていると、男の弱々しい声が聞こえた。
「あ、あのさ、たぶん関係ないと思うんだけどさ、俺、昨日の日が沈むころに、迷いの森のほうで、人影を見たんだ……」
声の主はよく見かける顔なじみの痩せた男だった。
たしか大通りでいつも果物を売っていたはずだ。
「迷いの森……? その人影は子どもだったのか?」とベクター先生。
「いや、街から遠すぎて大人か子供かわからなかったよ。それにすぐ消えちゃったし……。ごめん、俺の見間違いだったのかも……忘れてくれ」
自信のなさそうな声は消え入るようだった。
この平和な街で起きた非常事態にみんな動揺している。
だが、俺は男の言葉がウソを言っているようには思えなかった。
「先生、冒険者ギルドに捜索依頼を出したなら街の周辺は冒険者が探してくれるんですよね?」
「そのはずだが……」
俺はリオ、イルファ、ラキスの顔を見回した。
みんな同じ、決意に満ちた表情をしていた。
「それなら俺たちは迷いの森のあたりを調べてみます!」
「ライドくんたちが……? いやしかし、森の中に入ってはいかんぞ!」
「リオの嗅覚ならきっと帰ってこられます! そのために、コボルトの方々も一緒に迷いの森の前までついてきてくれますか?」
いきなり名前を呼ばれたコボルトたちは一瞬、戸惑った表情をしたがすぐにうなずいた。
ベクター先生から注意するよう何度も念を押され、俺たちは迷いの森へ向かうことになった。




