センタルの街へ
それから数日後、代金を準備できたということで俺たちは王国騎士団団長のヘラルドから魔剣の代金を受け取った。
炎の魔剣については王様や騎士団内でも話し合った結果、剣を見いだしたミラルが所有することで決定したらしい。
丹精込めて作った魔剣を大事にしてくれたらうれしい。
俺たちはセンタルの街に向かう馬車に乗り、華やかな王都を後にした。
魔剣の取引だけのはずだったのにやけにいろんな出来事に遭遇した気がする。
せわしない街とお別れし、俺たちはまたガタゴト揺られて故郷に帰っていく。
「なんだかいろいろありましたね」
「まったくだ」
イルファとラキスも俺とおなじ思いのようだ。
リオだけは、
「もっと美味しいものたくさん食べたかったな~」
と未練がましくつぶやいていたが、馬車に揺られているうちに眠ってしまった。
俺たちに早馬のような速度は似合わない。
この馬車のようにゆったりガタゴト進んでいくくらいがちょうどいい。
センタルの街について、俺たちは忘れないうちに治療院をたずねた。
「ライドくんか。ひさしぶりだな」
「ベクター先生、ご無沙汰してました」
俺は王都でのことをかいつまんで説明し、シェリー姫様からの依頼でパスード病の治療薬を融通していくれるようお願いした。
「なんと、王家の姫君様からの依頼か。ライドくんも大物になったな」
「いや、ぜんぜんそんなんじゃないですよ」
謙遜でもなんでもなく、たまたま話が転がって妙なつながりが増えただけだった。
ベクター先生は治療薬が貧民街の子どもたちに使われる旨を聞いてこころよく承諾してくれた。
「うむ、それなら王都からの使者が来たら治療薬を渡せばいいのだな」
「はい。代金は払ってくれると思うので細かいことは先生にお任せします」
俺たちは治療院から武具工房グローブに移動した。
「おお、お前さんたち! ずいぶんと時間がかかったじゃないか!」
魔剣の取引について、出品してくれていたグローブさんにも事の顛末を話した。
俺たちの魔剣はちゃんと正しい心を持った騎士に、適正な価格でゆずったことを伝えた。
「そうかそうか、それなら商売は無事に成功ということだな!」
「そうだ、グローブ殿。追加の依頼を受けたので今後も工房を使わせてもらいたいのだが……」
そうだった。騎士団から剣の大量生産を依頼されたのだった。
グローブは自分の拒否していた案件をラキスが引き受けたことに微妙な反応をしたが、ラキスはラキスなりの信条で鍛冶師をすればいいと言って工房の使用を許可してくれた。
挨拶まわりが終わって俺たちは自分たちの家に帰宅した。
リビングのイスにぐったりと座る俺とリオにイルファがお茶をいれてくれた。
「やっぱり自分の家が一番落ち着くなぁ」
「だね~」
王都ではあんなにはしゃいでいたリオも長い馬車の旅に疲れたようだ。
俺はお茶を口に含んでごくりと飲み込んだ。
あー、あったまる。
体の芯だけでなく、気持ちまであたたかくなる。
「ライドは明日、何をするか決めているのか?」
ラキスもお茶を飲みながら聞いてきた。
「いんや~、まだぜんぜん決めてないよ。しばらくはゆっくりしたいかな」
「さんせ~」
「リオったら、そんな恰好で飲むのはお行儀が悪いですよ」
テーブルに上半身を寝そべらせてお茶を飲むリオに注意するイルファ。
このだらーんとした空気、ひさしぶりだ。
ラキスに答えたように、数日はだらだらして過ごそう。
朝は遅く起きて、朝ごはんか昼ごはんかもわからないトーストしたパンをくわえながらみんなとだらだらしゃべる。
そんな光景を想像しながら俺はあったかいお茶を飲み干した。




