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王女様と作戦会議

 しっかり休んで翌日。

 俺たちはミラルとともにシェリー姫のもとをたずねていた。

 貧民区域で起きたこと、教会のおかれている立場、二つの勢力について説明した。


「なるほど、そんなことが起きていたのですね」

「私がもっと注視しておくべきでした」

「ミラルのせいではないわ。むしろ取り返しのつかない事態になるまえに気付けてよかったわ」


 あいかわらずお姫様は優雅に紅茶のカップを口にはこぶ。

 この落ち着き具合は天性のものなのか、王家の教育で備わるものなのか。


「こういう状況を一触即発、というのかしら」

「おっしゃるとおりかと」

「それで、なにかミラルのほうで考えはあるの?」

「それは……」


 ミラルは苦しそうに表情を歪めた。

 いくら王国騎士団副団長といえど、いきなり貧民区域のもめごとに首をつっこむわけにはいかない。

 ヘタをすれば王侯貴族が介入する事態になり、ザンガたちが保っている貧民街なりの平穏が奪われてしまうかもしれないからだ。

 俺は仲間たちと話し合って考えた案をのべた。


「一応、やり方はあると思います」

「ライド様、それはどのようなものかしら?」

「シェリー姫やミラルさんは立場上、手を出すわけにはいきません。それなら庶民のもめごとは庶民同士で解決すればいいのです」


 相手はミンドス商会、お金はあるのだろうが地位や権力があるわけではない。

 それならば同じ立場の者たちで対抗するのが適切だ。


「ミンドス商会が裏で動いているのであれば必ず証拠があるはずです。まずはそれを押さえます。確たる証拠さえ手に入れてしまえば後は簡単です。ミンドス商会の商売敵にその情報を売ってしまえばいいのです」


 お姫様は口を押さえて「まあ!」と驚き、ミラルは驚きつつもアゴに手を当て「なるほど……」とつぶやいた。


「王都にはミンドス商会以外にも商会はありますよね?」

「ええ、もちろんありますわ。ミンドス商会とならんで野心家なガラド商会、保守的なヘンダー商会、アントス商会」

「それなら保守的な二つの商会に情報を流しましょう。野心家な商会は商売敵が自滅するのをわざわざ助けようとはしないでしょうから」

「だけど、その確たる証拠というのはどうやって手に入れるんですか?」


 ミラルの疑問も想定の範囲内だ。

 この世には別名なんでも屋とよばれる者たちがいる。


「それはもちろん、盗賊クラスの冒険者に依頼するのです」

「ぼ、冒険者に!?」

「Bランク以上の信頼と実績のある冒険者を紹介してもらえば間違いないでしょう。腕利きの盗賊が数人そろえば潜入も証拠の確保も可能だと思います」

「だがそれではザンガファミリーの仕業と誤解されるのでは……?」

「暗殺さえしなければ大丈夫でしょう。万が一、見張りに見つかっても気絶させるだけのスマートな潜入ができれば、誰もザンガファミリーがやったとは思いません」

「ふむ……」


 考え込むミラルに反してシェリー姫は乗り気で「名案ですわね!」と声をあげた。


「ミラル、ライド様の計画どおり、ことを進めていただけますか?」

「しかし姫様! いささか性急すぎはしませんか?」

「ミラル、あなたも現場にいたのなら事態が切迫しているのは承知しているはずですわよね?」


 姫様の言葉にミラルは反論できなかった。

 教会に押し入ってきたミンドスファミリーを考えるとあれこれ代案を出している時間すら惜しい。

 すぐに動かなければそれこそ取り返しがつかなくなる。


「……承知しました」

「俺たちが手を貸せるのはここまでです。健闘を祈っています」

「ライド様、そしてみなさま、お知恵まで拝借し、感謝いたしますわ」


 席を立ったシェリー姫ははじめて会ったときと同じく、丁寧にお辞儀をした。

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