ザンガとの交渉
俺たちはザンガファミリーのアジトと思われる建物の前に来ていた。
ミラルは緊張した面持ちだが、この貧民街の治安を見た感じ、それほどあくどい人間のようには思えない。
「いいですかライド殿。今回はあくまで様子見ですから、あまりザンガを怒らせるような発言はナシでお願いしますよ」
うーん、大丈夫だと思うけどなぁ。
教会に来た男たちにしたってガラは悪かったがそこまで暴力的なふうでもなかったし。
「とりあえず入ってみましょう」
俺が先頭を切って歩き出し、あわててミラルもついてきた。
仲間たちはさほど心配してないようで落ち着いていた。
俺たちに気付いた見張りの男がにらみながら近づいてきた。
「おい待ちな。ここがザンガファミリーの縄張りと知ってんのか?」
「もちろん知ってますよ。今日はザンガさんに会いに来たんです」
「ああ? ザンガの姐御はてめえなんかに用はねえよ!」
「教会の件で話がしたい、そう伝えてくれますか?」
教会、という単語に反応し、男はちょっと待ってろと中へ入っていった。
しばらくして帰ってきた男は、
「ついてきな」
とだけ言って中へ案内してくれた。
建物に入るとそこら中に悪人面な男どもがいたが、見張りの男が案内してくれているため、むやみに突っかかってくるものはいなかった。
建物の奥の部屋、男がノックすると中から「入りな」と低い女性の声が聞こえた。
「失礼しやす」と言いながら男が扉を開けると、部屋の奥の豪華なイスに若さに似合わぬ剣呑な雰囲気をまとう女が座っていた。
「あたしに用があるってのはあんたたちかい?」
「ええ、今日はお話がしたくて来ました」
「なんでも教会のことについてだとか。まあいい、座りな」
女がアゴで示したソファに腰を下ろす。
部屋にはガタイのいい男たちが何人もいた。ボディーガードということか。
女もイスから立ち上がり、俺たちの向かいのソファにドサッと座った。
「んで、あたしがザンガだが面白い話が聞けると思っていいんだろうね?」
「きっとザンガさんは気に入ってくれると思いますよ」
「へえ、言うねえ」
俺はあくまで落ち着いた態度を崩さず、ザンガに対等な話し合いができるよう気を付けた。
こういう話し合いにおいて気迫で負けてはおしまいだ。
その点、俺の仲間たちはガタイのいいボディーガードくらいは簡単に倒せる実力があるためか、落ち着き払っていて頼りになる。
あいかわらずミラルは緊張した面持ちだが、まあ今回は俺が話をリードしていこう。
「先ほど、教会のほうにあなたの部下の男たちが来ました」
「あそこのシスターが頑固でねえ。シスターも、ましてやガキどもも追い出したりしねえっつっても首を縦にふらねえ」
「それはあなたたちが勘違いをしているからですよ」
「……ああ?」
ザンガは怒気を隠さず、俺をにらみつけた。




