教会の立場 3
「さっきのはザンガファミリーの者たちですね?」
ミラルの言葉にシスターは答えなかった。
その沈黙はミラルの考えを肯定していた。
「何やらトラブルに巻き込まれているみたいですね。詳しい話を聞かせてもらいましょう」
「……わかりました」
中年のシスターはあきらめたように話し始めた。
「すこし前からザンガファミリーの者がこの教会と土地の所有権をわたせと言ってきました。理由はさっきの男が言っていたとおりです。ミンドスファミリーがこの貧民街で勢力を伸ばしてきています。そのうちこの教会も強引に奪われるでしょう。ザンガファミリーは私たちを守るためと言ってますが、奪われることに変わりはありません。彼らの言うことも信じられたものではありません。権利を奪われたら何をされても文句を言えないのですから。私たち大人はともかく、行き場のない子どもたちは……」
「ミンドスファミリーがこの教会をねらう理由はなんです? 奴らはこの街で商売ができれば教会をねらう必要なんてないはずです」
「おそらく、ザンガファミリーに守られているからでしょうね。理由なんて何でもいいんです。ザンガファミリーはあのような連中ばかりですが、ボスのザンガさんはすこし違います。炊き出しのときなど何かするときはファミリーの人員を手伝いに来させてくれるのです」
要するにザンガファミリーに守られている教会は気に食わないから奪ってやるぜ、ということか。
なんて勝手な理由だ。
でも、貧民街のファミリーの争いなんてそんなレベルで起こるものなのかもしれない。
人死にが出るような争いでないだけ、まだ平和なほうだろう。
「これは、どうしたものか……」
「あのー、ちょっといいですか?」
話の区切りがついたみたいなので口を出してみる。
「なんだ、ライド殿?」
「要するにザンガファミリーに所有権をゆずっても今までどおりの生活が送れる保証があればいいんですよね?」
シスターたちは困惑ぎみに首を縦にふった。
「それならそのザンガというボスに直接、交渉に行ってみてはどうです?」
「ザンガに直接……!?」
「話を聞いたかぎりだと、それ以外で話は進まないみたいですし、万が一ミンドスファミリーに強引に所有権を奪われたらファミリー同士の争いが激しくなるかもしれませんよね?」
「うむ……」
「それなら俺たちで直接、ザンガという人物がどういう人か、見極めてみたほうがいいんじゃないでしょうか」
俺の提案した正攻法にうなりつつ、ミラルは他に手はないと見て賛成した。
「わかりました。そうしましょう。このまま何もしないのは悪手でしかありませんからね」
シスターたちは不安そうにしているが、俺の仲間たちはこの一件を解決に向かわせる提案に乗り気なようだった。




