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教会の立場

 孤児院にもなっている教会に着いた。

 建物は古いがしっかりした造りをしている。

 敷地内で遊んでいた子どもたちがミラルに気付いて近づいてきた。


「ミラねーちゃん!」

「遊びに来たの? いまね、鬼ごっこやってたんだよ!」

「ごめんね、今日は仕事で来たんだ。シスターはいる?」

「中にいるよ!」

「ありがとう」


 遊びに来たのではないとわかると子どもたちはわーと散っていった。

 思ったより元気そうだし、何より明るい表情をしている。

 貧民街の孤児院というと経営が苦しいことが多いだろうし、治安の悪さもあいまって子どもたちの表情が暗いことが多い。

 俺自身の孤児時代を思い出して比べると、ここの運営をしている大人たちがしっかり愛情を注いで育てているのがうかがえる。

 ミラルの後に続いて建物内に入った。


「すみません、シスターはいらっしゃいますか?」


 やや大きな声で問いかけると奥から中年のシスターと若いシスターが現れた。


「ミラルさん、いらっしゃい。いつもありがとうございます。そちらの方々は?」

「ちょっとお話がしたくて。そのときにご紹介しますね」


 シスターはうなずいて若いシスターにお茶の用意をたのんだ。

 応接室に通されると中年のシスターは俺たちにもどうぞ、と落ち着いた物腰でソファをすすめてくれた。

 若いシスターがポッドとカップを持ってきて、人数分の紅茶を入れるとミラルが俺たちの紹介を始めた。


「この方々はパスード病の治療薬をつくった方々なんです」

「まあ、あの流行り病の?」

「でもあれの治療薬は手に入りにくいと……」


 若いシスターが不安げに言うとミラルは俺たちに目線を向けてきた。


「じつは治療薬に必要な薬草の栽培をしてまして、こちらにも治療薬をお譲りできると思います」

「まあ!」


 驚く二人のシスターに俺たちは自己紹介し、センタルの街で流行ったパスード病を治療薬で治した経緯を話した。


「このことは殿下の承諾を得ています。子どもたちの健康状態を考えると治療薬は用意しておいたほうが良いでしょう」


 シスターたちは喜びつつも複雑な表情で顔を見合わせた。

 どういうことだ、うれしくないのか?


「お話はとてもありがたいのですが……」

「何か問題があるのですか?」

「じつは……」


 説明しようとした中年シスターの言葉をさえぎるように、建物の玄関口から子どもの声が聞こえた。


「シスター! おじちゃんたちが来たよー!」


 その言葉に中年シスターは気まずそうな顔をした。

 これは何やらきな臭い香りがする。

 治療薬を素直によろこべない事情があるようだ。

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