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慈悲深きお姫様 3

 優雅に紅茶を口にしてから薄桃色のくちびるが開いた。


「みなさまにお聞きしたいことがありました。ミラルから聞いたのですが、みなさまはパスード病の治療薬をつくられたのだとか」

「はい、たしかに作りましたけど……」


 そういえば王都にくる馬車の中でミラルに話したっけ。


「あの流行り病の薬はつくるのが困難だと聞いております。もし余りがあればわたくしに売っていただきたいのです」

「余り、というか、薬の材料となる薬草を栽培しているので、もしご希望なら定期的に提供できますよ?」

「まあ! それは本当なのですか?」


 お姫様は素直に驚いてみせ、ミラルの顔と俺たちの顔を見比べた。

 これにはミラルも驚いた顔を見せた。

 継続して薬をつくれるとは言ってなかったか。

 治療院のベクター先生に話を通せば王都に流通させることも難しくはないはずだ。


「王都の民は、わたくしがこんなことを言うのもなんですが、栄養のある食事をとることはできるくらい豊かです。ただ、この王都には貧しい方々がすむ区画もあり、そちらではパスード病は危険な病になってしまうのです」

「姫様は以前から貧民街の、特に親のいない子どもたちのことを気にかけておいででした。そこへ私がパスード病の治療薬の話をしたため、みなさんに話をうかがいたかったのです」


 シェリー姫の言葉をミラルが補足した。

 貧しい人たちにとってパスード病が命にかかわる病気になるのはやむを得ない話だ。

 十分な睡眠と食事さえ取って休養していれば治るものだが、十分な食事が取れない貧民街の子どもたちにとって、パスード病はたしかに命を奪いかねない病気になる。


「わたくしは王位継承権の順位も低く、政治にかかわらないところで人々の役に立てることをしたいと思っています。仮にも王家に連なるものとして、ささいなことでも人の役に立ちたいのです」


 お姫様の言葉にウソはなさそうだった。

 王位継承権の争いに参加し、将来、この国をひっぱっていくならもっと大きな形で人々に善政を敷くことも考えたのだろう。

 だがシェリー姫はそうした争いに加わるつもりもなく、自分の小さな手ですくえるところだけでも役に立ちたいと考えている、いいお姫様じゃないか。


 俺はリオやイルファ、ラキスと簡単に相談し、パスード病の治療薬の流通について治療院のベクター先生に掛け合ってみることを約束した。


「ありがとうございます。わたくしは一人では何もできません。みなさんのような方に手伝っていただけるのであれば、この身でできることはなんでもいたしますわ」


 献身的で心根のやさしいお姫様だった。

 ミラルが俺たちに会わせたいと言うのも理解できる。

 俺たちの力なんかで良ければいくらでも手を貸そうと思った。

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