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慈悲深きお姫様

 魔剣の一件が落着してしばらくはミラルが所属する騎士団の計らいで宿に泊めさせてもらっていた。

 俺はリオたちと王都の観光もしてみた。

 王都には初めて見るお菓子やくだもの、衣服や生活用品などがたくさんあった。

 リオは目新しいものすべてに関心があって、屋台の美味しそうなものはみんなで食べて観光をとても楽しんでいた。

 イルファは女性向けの香水のお店に興味を示した。

 植物由来の香料をかけ合わせたもので、くだものの香りのするものや甘い香りのするものを試しにいくつか購入していた。

 また、髪の毛をなめらかにする石鹸などにも関心があるようで、髪の長いイルファは女性店員さんのサラサラな髪に驚き、いくつか自分用に買ったみたいである。

 ラキスは身を飾るものより実用的なものに関心があり、食器類や大工道具などを興味深そうにながめていた。

 荷物は俺のマジックバッグに入れられるので購入をすすめたが、もともと倹約家なのか悩みに悩んで買わずじまいなことが多かった。

 そんなラキスのためもあって、俺からのプレゼントとしてみんなに簡単な装飾品をプレゼントした。

 リオには洋服につけるブローチを、イルファには首からさげるネックレスを、ラキスにはポニーテールをまとめるのに使えるオシャレな結びヒモをあげた。


 そんな王都観光を楽しんでいたある日、ミラルから誘いがあった。

 なんでも俺たちをある人に会わせたいらしい。

 宿代に食費まで出してもらっている上に断る理由もない。

 俺たちはミラルに連れられて馬車である場所に移動した。


「今日はみなさんに会っていただきたい方がいるのですが、驚かないでくださいね」

「驚くなと言われても……」


 王都に来て以来、こちらは驚かされてばかりだ。

 街の豪華絢爛さに驚き、ミラルが本当に騎士団副団長だったことに驚き。

 この都市は驚きに満ちている。

 いまさら驚きが一つや二つ増えたところで驚きはしない、というのは変な言い方か?


「この王都に来てから驚かされてばかりだ。これ以上、私たちを驚かせることができるなら上手に驚かされてみせるさ」


 ラキスが俺のこころの声を代弁してくれた。

 馬車はどうにも王都の中心部に向かっているようで、俺は驚きとは別に心配になってきた。


「ミラルさん、なんだか王宮のほうに向かっているみたいですが……」

「そうですよ」


 いや、そうですよって……。

 まさか俺たちを王様につきだそうとしたりしてないか?


「まさか! 国王陛下に謁見するには事前に申し入れをしないといけませんからね。さすがに陛下に会わせるわけではありません」


 けらけら笑うミラルはのん気なもんだ。

 こっちは見知らぬ土地に連れてこられて右も左もわからないというのに。

 馬車はいつしか王宮の敷地内に入り、王城からやや離れた屋敷の近くで停車した。

 屋敷というと貴族が住まう大きくて豪奢なものを想像するが、目の前のそれは丁寧な造りではあるもののあまり華美なものではなかった。

 屋敷の主の性格が影響しているのだろう。


「さあみなさん、庭園のほうに移動しましょう。ついてきてください!」


 戸惑いしかない俺たちはもうどうにでもなれという、なかばヤケバチな気持ちでミラルについていった。

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