追加の依頼
魔剣の売却が決まり、交渉の結果、グローブさんから聞いた最低金額を上回る金貨十五億枚を用意してくれることになった。
これには王様の承認が必要なため、しばらく時間がほしいとのことだった。
ミラルは喜びを抑えきれない様子で頬がゆるゆるにゆるんでレインとタルトに呆れられていた。
部下のことは無視し、ヘラルドはラキスに向き直った。
「ラキス殿が鍛冶師をしているとのことだったな」
「それが何か?」
「じつはかねてから通常の剣の量産依頼をしたいと思っていてな」
ヘラルドの話では、もともとミラルはグローブさんに王国騎士団の団員用の剣を量産してくれるよう依頼に来ていたようだ。
グローブさんの腕前を見込んでのことで、以前から再三たのんでいるのだが職人気質のグローブさんは雑にあつかわれる武器を作る気はない、とかたくなに断っていたらしい。
グローブさんらしいと言えばらしい話だ。
「嫌がるグローブ殿に無理じいするわけにもいかなくて困っていたところだ。先ほどの名剣を打てるほどのラキス殿であればぜひともお願いしたい。我々が使用する剣を量産してほしい。この依頼、引き受けてはくれないか?」
ヘラルドはラキスに向かって頭を下げた。
後ろで控えていた部下の三人も慌てて一緒に頭を下げた。
団員たちの剣の量産となれば大口の依頼だ。
しかも相手は王国騎士団、金払いで心配することもない。
あとはラキスの意志次第だが……。
「ライド、どう思う?」
忠誠心から俺の意見を求めてきたが、ラキスの表情は魔剣の一件が解決したことですでに晴ればれとしていた。
むしろ今度は大量の剣を打つことで鍛冶の腕を磨きながら依頼もこなせると考えているのだろう。
穏やかながらもワクワクしているのが透けているような、期待する眼差しをしていた。
「俺は構わないよ。ラキスのやりたいようにやっていいさ」
「わかった、ありがとう」
ラキスは満足そうにうなずき、
「ヘラルド殿、その依頼、うけたまわる」
顔を上げたヘラルドはホッとしたような表情で「感謝する」と述べた。
また、参考として以前、魔剣を打つ前にラキスが試作した五本の剣をバッグから取り出した。
ラキスの手からヘラルドに渡された。
制作した順番に剣の具合を見てもらう。
「うむ、最初の三本も良い出来だがラキス殿の本領ではないな。四本目は素直に良い。五本目に至っては先の魔剣に比肩すると見た」
「明察だ」
たしかラキスが最初の三本は駄作、四本目はまあまあ、五本目は出来がいいと言っていたはずだ。
ヘラルド団長殿の剣を見る目はさすがだと言うことだろう。
ミラルたちも横から試作の剣をじろじろ見て「十分に良い剣だと思うけどなぁ」「これだけは出来が違う」「あんまりわからないにゃ」などなど好き勝手に評価していた。
ヘラルドは剣を返し、
「四本目以上の出来であれば十分に実戦に耐えうる出来だ。団員にもこれだけの剣を使いこなせるようにさせたい。それに最初の三本も剣としての出来は十分だ。ラキス殿の腕前であれば、たとえ失敗作であろうと刃さえ潰してくれれば訓練用の剣として使わせてもらいたい」
「失敗作まで提供するのは鍛冶師として顔から火が出る思いだが、訓練にも剣は必要だからな。かしこまった」
「正規に使う剣はさしあたり百本を目標に制作してもらいたい。急ぎではないのでじっくり作ってもらいたい。訓練用のものは数に制限を設けない」
「委細、承知した」
依頼の詳細が確定し、二人はガッチリと握手した。
魔剣を作ってからは初めての正式な武器の制作依頼ということで、ラキスも満足そうな笑みを浮かべていた。




