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騎士団長の男

 模擬戦を観戦した俺たちは応接室にもどっていた。

 ミラルたちは簡単に身を清め、着替えてくるとのことだった。


「どうだった、ラキス?」

「……ふむ」


 俺は赤髪のハーフドラゴンにたずねた。

 彼女はミラルと同じ騎士クラスの冒険者であるから、ミラルの実力はよくわかったはずだ。

 俺は魔剣の所持者として文句なしだと思った。

 だが剣を直接、打った鍛冶師であるラキスの目にどう映ったのか。

 難しい顔をしていたラキスが口を開こうとしたとき、ちょうど奥の扉が開いた。

 今度は正装したミラル、レイン、タルト、そして初対面となる巨漢が応接室に入ってきた。


「みなさん、お待たせしました。ちょうど団長がもどっていたので連れてきました」


 紹介された大男がずいっと前に出て、軽く頭を下げた。


「話はミラルから聞いた。私は王国騎士団団長、ヘラルド・ヘイワース。よろしくお願いする」


 俺たちもつられて軽く頭を下げた。

 巨体の威圧感のせいか、ヘラルドの一挙一動に圧がある。

 つい引っ張られてしまうような空気をまとう男だった。


「ミラルたちの模擬戦は私も建物の上階から見させてもらった。なんでも実力を見てから魔剣の売買の是非を決めたいとのことだが……」


 一瞬、言葉を止めてからヘラルドはきっぱりと続けた。


「失礼ながら件の魔剣を見せていただけないか? 諸君や部下を疑うつもりはないが、私も団長という立場上、自分の目で見て物事を確かめなければならぬのだ」


 実直な男だ。

 どこの誰とも知らない俺たちの、しかも魔剣を購入するのであれば多額の金を払う必要がある。

 購入するにふさわしい質があるか確認したいというのは当然の発想だろう。

 俺はマジックバッグから魔剣を取り出し、ヘラルドに手渡した。


「ふむ、これがミラルが狂喜乱舞して騎士団の金で買いたいという剣か」

「うっ……」


 ミラルが気まずそうに眼を泳がせた。

 なんだ、個人で購入するわけじゃなかったのか。

 騎士団にお金を出してもらおうとはちゃっかりしている。


「……なるほど、これは確かに素晴らしい剣だな。魔法効果は?」

「炎の属性を付与しています。刀身に炎をまとわせることはもちろん、ある程度の炎魔法を行使することも可能です。所持者に魔力がなくても使用できます」


 イルファが丁寧に説明した。

 団長殿はうなずき、魔剣の柄を握りしめた。


「ミラルの目に狂いはないな。これだけの剣はそうそう手に入らないだろう。騎士団としてもぜひ購入する方向で話を進めたいところだが……」


 ヘラルドの目は「売ってくれるのか?」と問うていた。

 俺はラキスに判断をゆだねた。


「……結論から言わせてもらおう。売却することは構わない。ミラル殿の技量であればこの魔剣も使いこなせるはずだ」


 ミラルの表情がパアッと明るくなったが、


「だが一つだけ条件を守ってほしい」


 ラキスの追加の言葉にミラルの顔に緊張が走った。

 ヘラルドが「条件とは?」とうながした。

 たった一つだけ付け加える条件、それはラキスだけでなく俺たち全員の総意だった。


「この剣は人々を守り、人々に役立てるために使ってほしい」

「……ッ! もちろん、はなからそのつもりだ!!」


 ミラルは喜びのあふれる満面の笑顔で返答した。

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