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ブルーウルフの少女 2

「ボクの名前はリオ。お兄さんは?」

「俺はライドだ。助けてくれてありがとう、リオ」

「ううん、ボクのほうこそ助けてくれてありがとう」


 俺はリオと名乗った女の子に肩を貸してもらいながら街への道をもどっていた。

 幸いなことに傷は深くない。

 街でキズぐすりを買って塗っておけばすぐに治るだろう。

 そんなことよりも気になったのは、


「リオ、キミはブルーウルフなのか?」


 オオカミたちを蹴散らした後、リオの頭にはふさふさの耳が立ち、お尻の上あたりからもふもふのシッポが生えていた。

 人の姿をしつつ獣などの特徴を持つ人種、これは亜人だ。

 この世界で亜人はめずらしくないが、ブルーウルフの特徴を持つ亜人は聞いたことがない。

 さっきは群れを抜けると言っていたが……。


「うん、ボクはブルーウルフだよ!」


 先ほどまでとはうって変わって元気いっぱいの笑顔を浮かべた。

 青い髪に青い瞳、オオカミの耳にシッポはたしかにブルーウルフの特徴ではある。


「でもね、群れの長が言うにはボク、ニンゲンの姿で生まれたらしいんだ」

「人間の姿で?」

「ニンゲンの姿になるスキルを持っていたみたいなんだけど、ボク、そのスキルをうまく使えなくて……」


 笑顔から一転、リオはさびしそうに表情をくもらせた。


「いつかちゃんとスキルを使えてブルーウルフの姿になれるだろう、って育ててくれてたんだけど、いつまで経ってもなれなかったから群れから追い出されちゃったんだ」


 眉の下がった笑みはリオの寂しさをひしひしと感じさせた。

 なるほどな、そういう経緯があったのか。

 きっとリオにとって家族も同然のブルーウルフたちから異端児として見られ、ついには見限られた、と。

 物心ついた時から孤児だった俺にはわからないが、仲間に見捨てられるツラさならわかる。

 俺も冒険者として失格だと判断され、サイモンたちに見捨てられた。

 奇遇なことに俺もリオも欠陥のあるものだったんだ。


 欠陥といえば俺のスキルのことを思い出した。

 今まで通りウルフたちには効かなかったのに、よりにもよって人間の姿のリオにテイムが効いていたような気がする。

 テイマーとして活動してきたがこんなことは初めてだ。


「なあリオ、さっき青い光に包まれてたけど、あれもキミのスキルなのか?」


 リオは困ったように眉をハの字にし、


「ううん、あんなスキル持ってないよ」

「それじゃあやっぱり俺のテイムのせいか……」

「テイム?」


 リオに俺のクラスとスキルについて説明した。

 通常のモンスターには効かない欠陥スキルだと言うことも。


「言われてみると、あの光がバーって出たとき、ライドのことを守らなきゃ!って思ったんだよね。あと全身に力が入ってすごく強くなった気がした」

「それはたしかに、テイムのスキルの効果だな……」


 テイムスキルで手懐けたモンスターはテイマーのことを主人として認識する。

 主人のために役に立ちたい、守りたいという忠誠心が芽生えるという話だ。

 そして、テイマーを守り、テイマーのために戦うために通常の何倍もの力を得るのだとか。

 そうすると俺のクラススキルはモンスターには効かず、亜人のような存在にだけ効果のある変わったテイムだと認識したほうが良さそうだ。

 そこまで考えて、俺はとんでもないことをしたと罪悪感が込み上げてきた。


「その、えっと……リオ、ごめん」

「え、なにが?」

「キミの了解なしにテイムしたことだよ」


 手懐けるといえば聞こえはいいが、言い方を変えれば相手を服従させるということだ。

 敵意を持っているモンスターに使うならまだしも、人の姿をしていて俺のことを心配してくれたリオをテイムしたのはまずかった。

 緊急時の偶然とはいえ、リオの意志を無視して無理やり服従させたんだ。

 そんなやり方はどう考えても間違ってる。


「え、ぜんぜん気にしてないよ」

「ええ、なんで?」

「だってあのときライドがテイムしてくれなかったらボクたち、きっと死んでたと思うから」


 それはたしかに正論だ。

 正論ではある、が……。


「でも無理やりテイムされたらイヤだろ? しかも初対面のやつなんかに」


 リオは少しだけ考えるような素振りをして、ハッキリと言った。


「でもライドはいいヒトだもん。ボクを助けようとしてくれたし。ボク、ライドにテイムされてよかった!」


 屈託のない笑顔で言い切るリオに、なんだか妙な気恥ずかしさを覚えてそっと顔をそむけた。

 テイムされてよかっただなんて、テイマーが言われて嬉しくないはずがない。

 しかも初めてテイムした相手から言われたら、むずがゆい嬉しさで悶えそうになる。

 俺は気恥ずかしさをまぎらわすように言葉を紡いだ。


「それじゃあ、リオはこれから俺の仲間って考えていいの?」

「もちろんだよ! よろしくね、ライド!」

「う、うん……よろしく、リオ」


 俺とリオは空いているほうの手で握手を交わした。

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