はじめての王都
俺たちは旅支度をしてからミラルの用意した馬車に乗って王都をめざした。
治療院の雪見草の管理はベクター先生に任せてきた。
パスード病の流行は過ぎたので促成栽培はもう必要ない。
枯れないようにしてもらえればあとは先生のほうで上手くやってくれるだろう。
「なんと! パスード病の治療薬を生成したのですか!?」
「ええ、薬のおかげで街の人たちは流行を乗り切れました」
「これはぜひ殿下にお伝えせねば……」
小声でぶつぶつ言うミラルはオンオフの激しい人だった。
自分の関心のあることになると我を忘れて夢中になるが、それ以外では案外まともに話せる人のようだ。
そういうところは同じ騎士であるラキスと似ているかもしれない。
馬車はアード山を右に迂回して北上、いくつかの村を経由して王都に着くらしい。
車窓から見えるアード山の雪冠がなつかしく思える。
あんなにハードな探索はもうゴメンだ。
俺はスローライフを謳歌すると決めたんだ。
命の危険なんてナシナシ。
まったりゆるーく生きていきたい。
ガタゴトと揺れる不定期な刺激に眠気を誘われ、俺はいつしか眠りに落ちていた。
「見えてきました! 王都です!」
「おお~!」
ミラルの声に目を覚まし、前方の窓を見ると高い城壁に囲まれたお城と城下町が見えた。
あれが王都。この国の王様が住む国一番の都市。
まだ遠目でよくわからないが、かなり大きな街のようだ。
リオとイルファが元気なミラルの話し相手をして、俺とラキスは口数すくなく目を閉じるか居眠りしていた。
センタルの街を離れたせいか、薬草採取や肉串を売りたいなぁ、なんて考えが頭に浮かんだりする。
きらびやかだと言われる王都にイマイチ無関心なのは旅の疲れか、まだ実感がわかないからか。
俺はふたたびまぶたを閉じた。
「ほえ~……」
思わず間の抜けた声が漏れてしまった。
王都の大通りは馬車が二台走っても余裕をもってすれ違えるほどに広かった。
車窓から見える街の雰囲気はまるでお祭りだ。
とにかく人が多い。
あっちを見てもこっちを見ても人、人、人。
軒を連ねるショップも多種多様。
やはり人間が多いが亜人種の人もたくさん歩いている。
子どもを肩車しながら歩く親子連れ、人の隙間をぬって走っていく郵便の配達人。
テラスで酒を飲みながら談笑する男たち、小物屋の前で商品をながめている若いカップル。
あふれかえる活気に呆然としてしまった。
これはたしかに、大都市と呼ばれるのもうなずける。
センタルの街とはまったく別の世界に来てしまった感覚すらある。
「王都って、すごいんだなぁ……」
それ以外の言葉が出てこない。
俺はにぎやかで活力に満ちた街並みをボンヤリとながめた。




