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促成栽培と治療薬 2

 診察室にもどった俺たちはベッドやイスに腰かけた。


「みんながこれだけ協力してくれたんだ。ここからは私の仕事だな」


 先生は採取した雪見草の草を机に取り出し、小さな薄い紙片を用意した。

 紙片の上に葉を置き、両手で包むように手を置く。

 目をつぶって意識を集中させる。

 先生の手に黄色い魔力の光が集まっていった。

 やがて紙片の上の葉から瑞々しさが失われていき、枯れたように色を失うと少しずつ葉が砕けはじめた。

 砕けた葉はさらに微細な粉末状になり、紙片の上に小さい山をつくった。


「ふぅ、これで治療薬は完成だ」


 ふり返った先生の表情は穏やかだった。


「まずはこれを患者に飲ませて様子を見よう」


 先生は紙片を折りたたみ、場所を移動した。

 弟子にコップと水差しを用意させ、特に症状の重い患者のベッドへ向かった。

 ベッドには男性がぜえぜえと息を荒げ、苦しそうに横になっていた。


「薬を持ってきた。起きれるかね?」

「は、はい……」


 先生が介助しながら男性を座らせ、口にコップを近づけて水を含ませる。

 それから紙片をほどき、粉末の治療薬を流し込んだ。

 男性は苦しそうにしつつもゴクリと飲み込み、先生に感謝を伝えた。

 ふたたび横に寝かし、すこしのあいだ様子を見る。

 ぜえぜえと荒い息をしていた男性は、やがて安らかな呼吸になった。

 先生が男性に手をかざし、魔法で調子を診察する。


「うむ、薬が効いている」


 先生の力強い笑顔に、俺たちは大声を出さないよう気を付けながら喜びの声をあげた。




 それからは先生が生成した治療薬を弟子たちが重症の患者から与えていき、患者の容態は次第に良くなっていった。

 パスード病の治療薬ができたウワサはすぐに街中に広がり、連日、治療院はパスード病の患者でいっぱいになった。

 イルファは毎日、魔力のもつかぎり氷室の促成栽培を行い、雪見草の葉を量産していった。

 俺とリオとラキスも治療院の作業を手伝い、患者の誘導から世話までして症状の重い患者から順番に薬を飲ませていった。

 治療薬を飲ませた患者の症状がやわらいでいくのを見ていると、あれだけ危険な雪山を登った甲斐があったのだと実感できた。

 それはリオも同じ思いだったみたいで、リオは人の役に立つことの喜びを知って嬉しそうにしていた。

 また、登山中の出来事をイルファとラキスに話し、特にリオが突風に吹き飛ばされそうになった際にラキスのスキルに助けられたことも伝えた。

 傷はすでにラキス由来の自然治癒力で治っていたが、あのときリオを救ってくれたのはラキスのおかげだ。

 俺もリオもラキスに感謝の言葉を述べると、ラキスは照れながら嬉しそうに笑った。

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