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雪見草を求めて

 アード山のふもと付近まで早駆けの馬車を出してもらい、俺とリオは山登りを開始した。

 登山者のある踏み固められた道を進み、次第に道が途切れ、ケモノ道だけになった。

 野生の動物が通る歩きやすい経路を進んでいくと、ついにはケモノ道さえなくなり、やぶの中をひたすら登っていく。


「ライド、あまり急ぎすぎちゃダメだよ。体力を温存しないと雪山は進めない」

「あ、ああ、わかった」


 気がせいていた俺は歩く速度を落とした。

 こういった自然の世界では野生で生きてきたリオのほうが生存術に長けている。

 残された体力をどう配分して目的地まで到達するか、俺よりもリオの言葉に従ったほうがいい。


「リオ、先頭をたのめるか?」

「まかせて!」


 リオに先頭をゆずるとやぶの少ない歩きやすい経路をするすると最小限の体力で登っていく。

 俺がいかに山に、自然に慣れていないか、身をもって思い知らされた。

 こういう時のリオは頼もしい。

 朝寝坊してばかりの姿とは打って変わってたくましく見えた。


「ライド、そこの段差、気をつけて!」

「わかった」


 滑りやすい地面、足をひっかけそうな木の根、大自然の障害をいともたやすく避けていく。

 リオのおかげで小一時間もかからず、雪の降る地帯まで到達した。


「ここからは一歩一歩ゆっくり行くよ。地面が見えないから特に滑らないように気を付けてね」

「ああ、リオも気を付けてくれ」


 うん!と大きくうなずくリオはいつにも増して凛として見えた。

 人の姿をしているが、自然の中で活動するリオはブルーウルフとしての野性に満ちた凛々しさをまとっていた。

 これがブルーウルフ、リオの本来の姿なんだ。

 ふさふさの耳はシュッと立ち、ふわふわのシッポも重心のバランスを取るために微細に形を変え、今は雪山に挑む雄々しいケモノのそれだった。


 雪が降り積もる地面を一歩ずつ踏みしめ、俺はイルファに言われたことを思い出した。

「雪見草はサーチの魔法で見つけることができます。要領としては魔力を放出して鉱石を発見したときに似ています」

 俺は探索目標の雪見草を思い描きながらサーチの魔法を使用した。

 反応は……なし。

 リオの足跡を的確に重ねて踏んでいき、じわじわと確実に登っていく。

 はらはらと降っていた雪はいつしか斜めに吹きすさぶようになり、登るにつれて横に吹き付けるようになった。


「ライド、ここからは手をつないでいこう!」

「わかった! 一歩ずつ確実に、リオも気を付けてくれ!」


 俺はリオと手をつなぎ、吹き付ける雪嵐の中で遭難しないよう心掛けた。

 つないだ手は小さくやわらかく、そして温かい。

 ブルーウルフの寒冷耐性のおかげで寒さはまったく感じない。

 でもそれだけじゃない。

 人間だったら到底、満足に前へ進めない中を踏破していく強さ、その心強さを温かいと感じているんだ。

 小さな背中がとても大きく見える。

 白い視界の中でぼやける青い髪の少女が俺を導いてくれている。

 ああ、俺はたのもしい仲間を持ったんだな。

 極限の環境で、あらためてそう感じた。

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