魔剣を作ってみよう!
「そうだ、ライド、お前に話があるんだった」
俺のテイムスキルの確認が終わり、ラキスが思い出したように言った。
「鉱山町のアイザンに行ってみないか?」
「アイザン?」
「このセンタルの街から北西に馬車で二日ほど行ったところにある町だ。そこにいまモンスターが出現しているみたいでな」
そういえばさっき宿屋の一階の会話を盗み聞きしたときに鉱山がどうとか言ってたっけ。
「そこでモンスター討伐の依頼が出ているみたいなんだ」
「うーん、俺はあまり危険なことは……」
リオやラキスがいれば多少のモンスターなら退治できるかもしれないが、俺はもう冒険者を辞めた身。
あえて危険なことに首をつっこむのもどうかと思ってしまう。
「ライド、これはただのモンスター討伐じゃないんだ」
「というと?」
「モンスターを退治できたら町の住民以外でも自由に鉱山を探索する権利が与えられる」
「鉱石の発掘をするということか?」
「それだけじゃない」
ラキスはふっふっふ、と含み笑いをしてみせると、
「私は養父に鍛冶を覚えさせられたと言っただろう? まだお前たちの仲間になって何も貢献できていないからな。鉱山で採掘した鉱石で武器や防具をつくる。それを売ることができれば結構いい収入になると思うんだ」
なるほど、タダで採掘した鉱石を使ってラキスの鍛冶スキルで商売をしようということか。
たしかに元手がほとんど掛からない、いい商売だと思う。
しかし、俺たちに貢献できていないから、だなんてラキスらしいとはいえ律儀な性格をしている。
「もちろん強力なモンスターが現れたら私が身を挺してでも皆を守り抜く。どうだろうか?」
「ラキスを犠牲にすることはできないよ。その時は全員で撤退する。リオ、イルファ、どう思う?」
俺の一存では決められない。
モンスターを討伐する以上は危険がともなう。
二人の意見も聞いた上で判断する必要がある。
「ボクはいいと思うよ。モンスター退治もちょちょいのちょいだよ!」
「わたしもいいと思います。魔法で支援することもできますし、ラキスがそうしたいと言うのであればやってみてもいいかと」
二人とも思った以上に乗り気だった。
あとは俺の判断次第だが、ラキスが俺たちのために働きたいという気持ちを無下にするのも忍びない。
「わかった。けど、もし危険だと判断したらすぐに撤退するのが条件だよ」
「よし!」
ラキスは嬉しそうにガッツポーズをとった。
鉱山町アイザン行きの馬車に乗って二日、俺たちは無事に目的地にたどり着いた。
馬車から降りて町の様子を見た感じ、あまり活気のない町だというのが第一印象だった。
「ラキス、これはモンスターが出現しているからこんな感じなのか?」
「いや、どうだろう。そこまでは私も分からないな」
とりあえず宿を取ろうということで宿屋もやっている酒場に入って食事を取ることにした。
「いらっしゃい!」
「泊まりで二部屋、あと食事を四人分たのみたい」
「まいどあり! 料理はすぐできるからその辺のテーブルで待ってておくれよ」
女将さんが元気よく厨房に入っていった。
俺たちが空いている席につくと、まわりの屈強な体つきの男たちから視線を向けられた。
小さな町なので見知らぬ顔の俺たちがめずらしいのだろう。
となりのテーブルの中年の男たちが話しかけてきた。
「兄ちゃんたち、もしかして冒険者かい?」
「えっと、モンスター討伐の依頼で来たものです」
「そうか、そいつは頼もしいぜ」
元冒険者と名乗ると説明がめんどくさいのでぼかして答えた。
男たちは酒をあおっているのか顔が赤みを帯びている。
俺は情報収集もかねて話をふってみた。
「みなさんはモンスターの姿を見たんですか?」
「ああ。あれはロックバードだな」
ロックバード、たしか石や岩を食べる鳥型のモンスターだったはずだ。
「昔なら冒険者も多かったし、ロックバードぐらい簡単に退治してくれてたんだがな」
「以前から定期的に現れるんですか?」
「まあ時々だな。昔はこの町も羽振りがよかったからよ、町を護衛してくれる冒険者を雇っていたのさ」
昔は羽振りがよかった、か。
ということは今はあまり鉱石が取れなくなっているのだろうか。
「鉱石はいまも取れるんですか?」
「そりゃそうよ。じゃなきゃ俺たちはおまんま食い上げってもんだ」
仲間の男たちと一緒にゲラゲラ笑った。
だが、男はすぐにため息をついて笑い声をひっこめた。
「昔はよかったよなぁ。兄ちゃんたちは知らねえかもしれねえが、昔はミスリルがとれる鉱山町ってことで今よりずっと人も多くてもっと活気があったんだ」
「すごいな! ミスリルが取れていたのか!」
めずらしい鉱石の名前にラキスが思わず声をあげた。
「おうよ。ミスリルっていやあ魔法を付与することもできる鉱石だからな。そりゃあ高値で取引してたんだぜ」
男は指で鼻先をこすってみせた。
過去の栄光、といったら失礼かもしれないが、きっとこの町で生きる人たちにとってはめずらしいミスリルが採掘できることが誇りだったんだ。
それが失われてしまい、人も減っていったと考えると、鉱夫の男たちにすこし同情の気持ちがわいた。
「ま、過去のことをグチグチ言ってもしょうがねえわな。兄ちゃんたち、モンスター退治しっかり頼んだぜ!」
そう言うと男たちは関心をなくしたように酒をあおって仲間内で話し出した。
なるほどな、そういう背景があったのか。
町にも人にも歴史がある。
ここで生きる人たちは過去の栄光にとらわれず、今を生きている。
その日常がモンスターによって脅かされているなら俺たちも頑張りがいがあるってものだ。
そう考えていると元気な女将さんがたくさんの料理が盛られた大皿を持ってきてくれた。




