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レベルアップ!

 ラキスが仲間に入ってから俺はある違和感を覚えていた。

 悪い意味での違和感ではない。

 むしろ体が軽かったり、気力があふれているように感じたり。

 そして何より耳がとても良くなった気がする。


「うーん……」

「どうしたのライド?」

「いやぁ、なんか変なんだよね」


 変、という言葉にイルファも反応した。


「なにか異常でもありましたか?」

「異常というより、むしろなんか全体的に体調がすごくいい」

「……?」


 イルファもリオも俺の言っている意味がよくわからないみたいだ。

 俺自身もよくわかってないから、なんて説明すればいいか難しい。


「あ、一つだけハッキリ変わったなと思うんだけど、最近やけに耳が良くなった気がする」

「耳が……?」


 リオは思い当たる節がないようだが、イルファは何かに気付いたみたいで、


「ライドさん、いま宿屋の一階でどんな会話がされてるか聞こえますか?」

「一階の会話?」


 俺は目をつぶって耳に意識を集中させた。

 まず聞こえてきたのはリオとイルファの呼吸音。

 そして二人の心臓が脈を打つ音。

 さらに耳をすますとガヤガヤとしゃべっている声が聞こえた。


「……鉱山で、なんとかってしゃべってる気がする」

「わたしもおなじ内容が聞こえます」


 イルファが俺とおなじ会話が聞こえる?

 いや、俺がイルファの聴力とおなじといったほうが正しいのか。


「これって……」

「もしかしたらわたしの能力が使えるようになってませんか?」

「た、たしかに、そうかも……!」


 俺はその場で軽くジャンプしてみた。


「うわっ!」


 軽く力を入れただけなのに、あやうく天井に頭をぶつけそうになった。


「これって、リオの身体能力、なのか……?」

「ちょ、ちょっとライド、中庭で護身術の練習してみようよ」


 リオに腕を引っ張られて強引に中庭まで連れていかれた。


「ライド、いつもどおり軽くいくよ!」

「お、おう……」


 素早く駆けだしたリオのパンチが目で追える。

 俺は腕でガードして、身を低くして足払いをかけた。

 リオがサッとジャンプして避け、まわし蹴りを放つ。

 グッと脚に力を入れてバックステップ。

 リオの攻撃を完全に見切って避けることができた。


「これは……」

「すごいよライド! ボクと同じように動けてる!」

「ライドさん、ダメ押しで手のひらから水が湧き出るイメージを意識してみてください」


 イルファの注文にしたがって俺は手のひらを上に向けた。

 意識を集中、水の球ができるようにイメージしていく。

 すると手のひらがボンヤリと光って、何もないところから水球が現れた。


「やっぱり! ライドさん、魔法が使えてますよ!」

「え、ええええ!?」


 いったいぜんたい何がどうなってるんだ?

 イルファの聴力や魔法、リオの身体能力が俺にも使えるようになってる?


「ライドさん、わたしはあまり詳しくありませんがテイマーのスキルに何か関係があるのではありませんか?」

「テイマーのスキル、か……」


 今までずっと役立たずのスキルだったから考えたこともなかった。

 よくよく思い出してみると、テイマーはテイムしたモンスターの数が増えたり、テイムしたモンスターが活躍したりすると絆が深まり、テイムスキルがレベルアップするという話を聞いたことがあった。


「きっとそれだよ!」

「おそらく間違いないです!」

「つまり、俺のテイムスキルがレベルアップして、そのおかげでリオやイルファの能力を俺も使えるようになったということか……?」


 言われてみるとたしかにリオ、イルファ、ラキスと三人もテイムしたし、リオには狩りを手伝ってもらったり、イルファにポーション作りで魔法を使ってもらったりと活躍もしてもらった。


「たしかに、有名なテイマーの冒険者はモンスターとともに生き、モンスターと心を通わせることで強くなれると聞いたことがある」

「きっとライドの場合はボクたち亜人をテイムすることで強くなれたんだね!」

「言われてみると、以前より少しだけライドさんへの忠誠心が増しているように感じます」

「絆が深まって、ということか……」


 思いもしなかった変化、いや成長にただただ驚いてしまう。


「すごいな。リオはこんなに身軽に動けて、イルファはこんな風に魔力を感じていたんだね」

「きっとラキスの能力も使えるようになってるよ!」

「私がどうかしたのか?」


 ちょうど後ろからラキスの声が聞こえてふり返った。

 もちろん、ラキスが宿屋に来て部屋を確認し、中庭にやってくるのはイルファによる聴力で察知していた。


「どうやら俺、テイマーのスキルがレベルアップして、みんなの能力が使えるようになったみたいなんだ」

「お、それはめでたいな!」


 おめでとう、と素直に祝ってくれた。

 そしてリオと同じように、


「それなら少し手合わせをしてみないか?」

「ええ、ラキスとも?」

「私のスキルは身体の防御力を上げることができる。攻撃を避けずに受けてみろ」


 念のためラキスの能力も使えるか確認しておくのは大事かもしれない。


「わかった」

「よし、いくぞ!」


 対峙したラキスが真っ正面からコブシを突き出してきた。

 俺は両腕を交差させ、攻撃に耐えることを意識する。

 ラキスの一撃を受けた瞬間、両腕が一瞬だけ硬くなったように感じた。


「い、痛くない……」

「もう少しいくぞ!」


 連打してくるラキスの打撃をすべて腕でガードする。

 痛くないし、ダメージも負っていないのがわかる。

 俺からもコブシを打ってみるとラキスに片腕で防がれてしまった。


「うむ、攻撃が当たったときにライドの体が硬くなっているな。私のスキルがちゃんと使えているみたいだ」


 ラキスは腕を組んで嬉しそうに笑った。


「テイマーがテイムの経験を積むことで強くなるっていうのは、こういう感覚だったんだな……」


 俺がしみじみと自分の体の変化を実感していると、リオが勢いよく腕に抱きついてきた。


「ライドもちゃんとテイマーとして成長してるんだね!」

「スキルは特殊ではありますが、ライドさんも立派なテイマーです」


 リオとイルファが嬉しいことを言ってくれる。

 モンスターをテイムできない欠陥スキルだと思っていたのに、亜人をテイムできただけでなく、俺という人間がテイマーのクラスに初めて認められたようで嬉しかった。


「ライドは私たちの力を引き出してくれる、立派なテイマーだ」


 ラキスがにっこりと微笑んだ。

 気のいい仲間に囲まれ、俺は自分のテイムスキルを少しだけ誇らしく思えた。

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