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照れてなんかいない、し

「今日も授業中寝ていましたね」

 

 春風では到底消えてはくれないし、先生の声でも消えてはくれない。そんな中心的な声は藤波快藤波快(ふじなみかい)の耳を突いた。

 

「俺が?」

 

「ええ。あなたが」

 

 はぁ、なんでこんな風当たりが強いんだよ。快は呆れた思考を巡らせる。

 

「てか、南の方こそ寝ていただろ?」

 

「な! 名前を呼ぶなんて犯罪ね」

 

「はいはい。犯罪で結構ですよ。で、寝てたよな?」

 

「それは……私こと金城南金城南(きんじょうみなみ)は授業中に寝るという行為は一度もしたことがありません」

 

 胸に手を置いた南は「ふん」と息を零す。

 

 快は呆れた目で南を見つめた。その視線を感じ取った南は恥ずかしいのか「馬鹿!」と言いながら黒板に視線を戻した。

 

「てか、勉強に集中しないとテストやばくないか?」

 

 快は何かを感じ取ったのか、南を見たまま呟いく。

 

「あんたよりかは、大丈夫でしょうね! 私は家でちゃんと勉強をしているので!」

 

「家で勉強しなきゃ、こんな凄い高校に入学なんてできてねーよ」

 

 反対意見を出すように、馬鹿にするように快は言った。

 無論その通りであった。

 

 快と南が通っている高校はどこを見ても凄い高校であった。部活や施設、生徒の数、粗を探しても無意味であったのだ。ただ、そこにあるのは完璧な高校であることだけである。

 

「そんなこと言わなくても分かってるわよ」

 

 何を怒っているんだか。

 快は全体を見渡す。

 

 誰もが黒板を眺めてペンを走らしている。誰も寝ようとはしないしみんな集中している。

 こそこそ話はしていないし、誰もしようとは思っていない。

 

「ところで、ちゃんと黒板を写した方がいいわよ?」

 

 視線を戻した快は南を見つめた。

 

「なんで?」

 

「今日は提出があるから」

 

「は、はぁ? 早く行ってくれよ」

 

 快は重たい体を起こしノートにペンを走らせる。

 提出物、テスト、授業態度、生徒を評価する。

 

 授業態度が最悪である快は焦りを感じながらノートを走らせるしかなった。

 自分でも分かっていたのだろう授業態度は最悪だと。

 

「ほんと馬鹿ね」

 

 焦ってノートを書いている快を見た南は哀れな目を向けた。

 

「馬鹿ね」

 

 聞き取れなかった快は一度南に視線を向けた。

 

「ん?」

 

「何にもないよ。てか、早くしないと評価無くなるよ?」

 

「ああ、分かってる」

 

 快は視線を黒板に戻しペンを走らせた。

 なんで、起こしてくれなかったんだよ。

 苛立ちを感じながらペンを走らせるしかなかった。

 誰しもが集中する授業で騒がしい生徒が居た場合、その生徒はどうなってしまうのかは明白であった。

 誰かと話すことが好きな快にとってそれはどういうことを意味するのはかしらない。知る由すらなかった。




 授業を終え、お昼休憩となった快は学食に来ていた。

 人が増えていく学食では人が大勢いて、和気あいあいと話していた。そんな時、ある一人の生徒が学食に来た。

 金城南であった。

 流石学年一の美少女と言うべきか、プリンセスと言うべきか。彼女の人気はうなぎのぼりであった。

 美人という言葉は彼女にとっては普通で、可愛いという言葉はチープである。

 そんな、美少女と何故か仲が良い快は適当な場所に座りカレーに夢中になっていた。


 やばいぞ! このカレー一番上手い。

 おふくろの味って言うか? なんていうか、温もりを感じる的な。うん、とにかくうまい!!

 快はカレーに夢中になってしまい、ことの重大さに気付いてはいなかった。

 いつの間にか快の前には南が険しい顔で立っていた。

 視線を感じた快はそっと首をあげた。

 

「どうかしたか?」

「ちょっと、いいかしら?」

 

 怒っているのか、快の目に映る南はどこか難しい顔だった。

 緊張しているような、泣き出しそうな顔を浮かべていた。

 

「あ、ああ」

 

 カレーを急いで駆け込む返却口に返し、南の後を快は追う。学食には沈黙が流れた。さっきまで騒がしかったのが嘘のように。



 屋上という誰もが憧れる場所には南と快の姿があった。

 南は何か袋を二つ持ち、快の方に体を向けた。

 腕を伸ばし、首で受け取れと言うような仕草を繰り返す。

 

「えーと?」

「何? いらないの?」

 

 いや、状況がつかめていないだけなんだが。

 

「いや、貰うけどさ」

 

 受け取った快は中身を確認する。

 

「え? もしかして弁当?」

「そうよ! しかも、私の手作り弁当どうよ?」

「おお~! 本当に?」

 

 無邪気の子どものように快は喜び、屋上に設置されているベンチに腰を下ろす。その隣に南を腰を下ろした。

 不安なのか、南はチラチラと快を見る。

 

「どうかしたか?」

「別に! てか、カレー食べてたのにまだお腹空いてるとか凄いね」

「いや、お腹はいっぱいだよ?」

「はい? それなら、家に帰ったら食べたら良いのに」

「そんなの嫌だよ。せっかく作ってくれたのに、感想とかすぐに言いたいさ」

 

 快は橋を持ち、弁当を開ける。

 

 照れている南には気付くことはなく、弁当に夢中になっていた。

 

「ほんと、そういうとこよ」

 

 南は小さく言う。その声は夢中になっている快には聞くことはできなかった。

 

「ん? なんか言ったか?」

「別に言ってない! ただ、死ねよ馬鹿カスやろうとって言ったのよ」

「はぁぁ?」

 

 なんで、こんなに俺だけ風当たりが強いんだよ。

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