「なろう系」が書けない!
前回の投稿で、「私のような作者にとって、自作にweb小説としてのお約束を取り入れ、かつ面白くさせるというのはそう簡単なことではない」とお伝えしました。
私のような作者とは、自分の作品にこだわるあまり、展開や構成についてどうしても曲げられない人を指します。
そのため当初私も、第一話に「プロローグ」をもってきていました。
※プロローグが絶対悪というわけでなく遅すぎる導入のことです
自作を書き進めていくうえで、物語の雰囲気や謎を示すために絶対に必要な内容だと思っていたからです。
これが大きな落とし穴でした。案の定、投稿当初はほとんど読まれませんでした。
もう異世界転移することはわかってるんだから、そこは端的にいけと。読者は主人公の目新しい最強の能力と縦横無尽な活躍を読みたいんだからさあ、みたいな。
ただ、ここで私のような作者は考え込んでしまうわけです。
いやいや、主人公のシンには物語の世界(異世界)にやってくるだけの理由があって……! とか、普通の高校生が突然異世界に飛ばされてすぐ順応できるわけない……! とか。
ハリウッド映画の脚本に関する創作論ではよく、「シーンの終わりから入れ」というようなことが言われています。むしろweb小説はこの教えを忠実に守っているといえます。
私自身、「シーンの終わりから入る」ということを心掛けていたつもりでした。ただ、全然甘かったです。web小説の場で読まれるような展開にはまるでなっていなかった。
私の感覚では、物語の設定やキャラクターを十分に創り込んでいる作者ほど、このような傾向に陥りやすいかと。
もちろん、十分作り込んだ設定をよりわかりやすく、Web小説としてのおもしろさにまで昇華して人気を博しておられる作者の方もいらっしゃいます(羨ましすぎます……)。しかし少なくとも私にそのような才能はありません。
だからこそ、冒頭で「壮大な物語がはじまりますよ」といった感じのプロローグが出てきて、徐々に盛り上げようとしてしまった、あるいはそうなってしまった。
普通に考えればわかるのですが、実績もなにもない作者の書いた、展開も遅い「プロローグ」なんて読みたいとは思いませんよ……。J・K・ローリングス(ハリー・ポッター作者)じゃないんだから。
ある読者の方は、第一話がプロローグの時点で読まないとまで言っていましたしね……。
web小説というのは既存のおもしろさを前提とした物語であり、多くの読者もそれを求めているので、おいしいコーヒーとケーキを求めて喫茶店(Web小説サイト)に来たのに前菜から始まるコース料理を出されても困るわけです。
ですが私がこの投稿全体で言いたいのは、コース料理を出すな、ということではありません。喫茶店で出しても違和感のないコース料理を出せ、ということです(無茶苦茶だな……)!。
そして、「全然食べる気なかったけど、割と手軽でおいしそうだったから注文してみたら案外美味しかった!」という感想を引き出す、これにつきます笑
もしそのような作品が書けたなら、たとえ広く受け入れられることは難しくても、評判を聞いて食べに来てくれる読者の方も一定数おられると思いませんか?
なに無茶苦茶言ってんの? と思うかもしれませんが、喫茶店でコース料理出したいんだったらこうする他ないんじゃないかと。
私の体感では、Web小説界隈で人の多いサイトの多くはおいしいコーヒーとケーキ、あるいは軽食を出そうとしている喫茶店がほとんどであり、コース料理を出そうとしている店はあっても、ほとんど人が寄り付かない、といった状態のようにみえます。
だいたい私もそうなのですが、Web小説読むときって「スマホで気軽に楽しみたい」場合が多くないですか?
なもんで私のこの投稿は、需要的な問題でコース料理を食べてもらいたいのに食べてもらえない、食べてもらうための場所がないという人のためのエッセイであり、創作論ということになります。
喫茶店で出してもおかしくない、あるいはあまり違和感のないコース料理を出す。そのためには、喫茶店で出されるメニューに似せたり寄せたりして、違和感のないようにしなければなりません。
わかりにくい例えばかりで申し訳ないのですが、そのためには「なろう系」と「自分」の接合点を見出す必要があります。