「なろう系」以外ではWeb小説からの商業化は難しい?
前回、「とはいえ書籍化、コミカライズは遠い道のり」において、自作を商業化するのは確率的には相当難しいことについて触れました。
店頭やWebサイトで販売されている作品数をみると「いつか自分の作品も!」と考えておられる作者の方も多いかと思いますが(私自身そうでした……)、全体の作品数からみると、やはり難しい。
さらに、Web小説にはWeb小説ならではの難しさがあります。
今さら私がいうほどのことではありませんが、Web小説サイトでは「既存の面白さ」が求められます。いわゆる「なろう系」と呼ばれる作品群ですね。
はじめに断っておきますが、私自身この「なろう系小説」は大好きであり、有名どころはだいたい読破しています。
特に俺TUEEE系は大好物でして、このような表現で呼ばれる前から思ってたくらいです「主人公とか、別にピンチにならなくていいから」と。
例としては「転スラ」や「片田舎のおっさん」といったジャンルになりますか(主人公の性格が受け入れやすい作品が好きですね!)。
なろう系と呼ばれていなくても、グインサーガやディルフィニア戦記といった作品は、基本主人公が無双しまくってホントに面白いです(知らない方はおすすめです!)。映画ではボーンシリーズなんかもそうですね。主人公がめちゃくちゃ強いので、相手側は基本バタバタとやられてしまいます。
さすがにまったくピンチがない、というわけではありませんが、主人公の強さが確立されているため、やきもきするというより、どうやってこの難局を乗り越えるのか、という面白さに繋がっています。
少し話がそれてしまいましたが、Web小説サイトでは特に【異世界転生・転移】、【チート(最強・無双)】、【ハーレム】、【悪役令嬢】、【ざまあ】、【もふもふ】、【スローライフ】といったタグに代表される作品がよく読まれていますし、コンテストで受賞するのも、編集者から打診がくるのも、このような作品群が多いかと思います。
そもそもカクヨムや小説家になろうの読者はそのようなおもしろさを求めて読みにきているわけなので、よく例として挙げられる「ラーメンを食べにきてるのにカレーを出されても困る」という指摘に繋がるのだと思います。
もちろん、たまたまメニューにのっていた別料理(しかもめちゃくちゃ美味しい!)を食べたいと思う方もいるでしょう。「同志少女よ敵を撃て」や「レゾンデートルの祈り」、「君の膵臓を食べたい」、「近畿地方のある場所について」といった上記のジャンルにとらわれない素晴らしい作品もあるからです。
ただし、作品数を見るとめきわめてずらしい例と考えるべきでしょうね……。
つまりWeb小説サイトから商業化を目指すということであれば、読者の趣味嗜好に沿う、Web小説として既存の面白さを踏襲する必要があるといことですが、これは私なんかが指摘しなくても、すでに投稿している作者の皆さんにとっては当たり前の認識だと思います。
そのうえで、面白さ(あるいは目新しさ)が抜きん出た作品がランキング上位へと駆け上がり、商業化への道を開く、というのが一般的なスターダムの方法でしょうか。
逆に言えば、今いったような「既存の面白さ」がない、あるいは少ない作品を商業化までもっていくのは非常に難しいということです。これも今更言うほどのことではありませんが……。
しかしやっかいなことに、私のようにいろんな理由で「なろう系」を全面に出せない作者もいるかと思います。
そしてさんざん上で述べたように、そのような作品を商業化するのは非常に困難であると誰もが思っています。私も思っています。
ただ、絶対無理かといわれると、決してそうではない。
運が良かったといえばそれまでですが、試行錯誤しながら書き続けてさえいれば、どのような作品にもチャンスはあるのだと、私は自作で証明できたのではないかと考えています。