描きたい作品と受け入れられる作品はまるで違う?
以前の投稿では、web小説としての既存のおもしろさを出せない、あるいは取り入れられないと感じている作者の方に対し、まずは目を留めてもらえるような店構えのタイあら、キャッチコピーを考えるところから始めませんかと書きました。
自作「君と異世界を自由に生きてゆくための冴えたやり方」も、かなりの試行錯誤をくりかえし、投稿当初とは大きく様変わりしたものとなっています。
最も改変したのは、やはり物語冒頭、第一話の部分です。web小説の読者に受け入れてもらえるよう、よりわかりやすく親しみやすい(と私が考えた)内容へ。
第一話冒頭において、異世界転移に至るまでの展開を最低限必要(のちの展開の伏線)な状況説明でおさめ、いきなりヒロインピンチの場面に突入させました。
異世界転移をすみやかに行い、第一話から山場という、わかっていてもなかなか描けなかったことをようやく取り入れた、という感じです。
また、当初主人公のシンはごく普通の高校生であったため、与えられた力をなかなか発揮できない展開になっていましたが、テラというメンター(指導者)的存在を登場させることでその力を可能な限り迅速に扱えるようにしました。
ヒロインのラスティアも、「一族から追放された」という役割を担わせ、シンが彼女を助けるといった形で物語の目的を明確にしました。特にこの点は自然な流れになるよう、本当に苦慮しました。
※コミカライズにあたっては、担当編集者や漫画家の方の力(本職の方々は本当にすごいです……)でよりわかりやすい内容になっているかと!
当初構成していた内容より、はるかに引き締まった冒頭になったかと思います。
そんな当たり前のことあらためて言われても、という方もおられるかと思いますが、私のような作者にとっては相当に難しく……わかってはいても出来ないことだったんです。
何度も見返している分、気付けない。絶対大丈夫だと思い込んでしまう。あるいは作り込んでしまっている分、どうしても譲れない気持ちがある。
作者によっていろんな理由があるかと思います。
自作をweb小説として受け入れてもらうための内容や展開、構成といったことについてはまた別の投稿で詳しく触れたいと思いますが、簡単にいうとこんなところでしょうか。
カクヨムや小説家になろうに代表されるWeb小説、それもランキング上位となるような作品は、特に冒頭の導入というのが本当に考えこまれていて、既存の読者にとってまったくストレスのない内容になっています。
ただ、ここで気をつけたいことが、まったく同じ展開にはしないということです。あまり好きな表現ではないのですが、いわゆる「テンプレ」というやつですね。
私自身、この点については本当に悩みました。まあ、そうしたくても出来なかった、というのが本音のような気がします。
感覚としては、自分の作品の核になるようなものは変えず、外見のみを寄せる、とでも言えばいいのでしょうか。
例えば、「冴えたやり方」の主人公であるシンが異世界――本当は物語の世界なんですが――に導かれたのは理由があって、それもかなり深刻というか、シリアスな内容・展開となっています。
いくら読者に受け入れてもらいたいとはいえ、物語の発端となっている出来事ですので、このこと自体を変えてしまうと、それはもはや自分の描きたい物語ではない、と。
私は自分の描きたい物語がまず最初にあって、それをどうにか商業化したい、という目的を持った人間です。「自分の描きたい物語」にならないのなら、そもそも投稿自体する必要がないということになります。
つまり、Web小説の読者に受け入れてもらえるような工夫はしても、それが行き過ぎて本来の物語ではなくなってしまうと本末転倒なんです。
商業化することが第一の目的であるならWeb小説に特化した内容で挑戦したかと思いますが、私の場合はそうではありませんでした。
だかこそ、多くの悩みや葛藤がありましたし、投稿を辞めてしまおうと思ったことも少なくありませんでした。