エピローグ
私たちはその後、すぐに婚約した。
学園の人達は驚いていたが、みんな祝福してくれた。
「やっぱり、そうなると思ってたのよね!」
と、モニカに得意げな表情で言われたので、私の気持ちもバレバレだったようだ。
私達は、私の学園卒業と同時に結婚する事に決まった。
というより、もとより両親はそのつもりでいたようだ。
ケイン様は医師を続けながら、公爵家の勉強もしていく事になる。
もちろん私も一緒に勉強し、2人で支えあいながら、将来私達の子供に公爵家を譲れるように、しっかりと公爵家を盛り立てて行くつもりだ。
マリーナは、つい先日処刑が執行された。
最期の時に、
「また、戻ってくるわ! その時は今度こそ上手くやってやる!」
と叫んでいたそうだ。
後日、その事をライアン様から知らされた。
マリーナの執着の凄さにゾッとしながらも、何故かもう巻き戻りはないように感じた。
すでに一度目とは違う人生を歩んでいる。
私は今の生を、全うしようと心に強く決意した。
ライアン様は、私に宣言した通り、学園卒業と同時に王位継承権を辞退する事を発表した。
卒業後は臣籍降下し、公爵位を賜るそうだ。
ライアン様は人が変わったように穏やかになり、勉強も頑張っているので、惜しむ声も多数上がったが、本人の決意が固かった為、容認されたらしい。
これでようやく前世からの因縁は断ち切れたと思う。
これからは前を向いて、自分の人生を謳歌したい。
「ルーシー、そろそろお昼にしないか?」
ケイン様に声を掛けられて、私は振り向いた。
「あと少し。もう少しで描き上がるの」
私たちは、今、ピクニックに来ていた。
見晴らしのいい、小高い丘の上で私は今、写生をしている。
「ルーシーは、本当に絵を描く時は夢中になるんだから。
それ、さっきも言った台詞だよ?」
そう言って、ケイン様は私から筆をスッと取り上げる。
「あぁ! ケイン様!」
「はい、終わり。
ルーシーは私を餓死させるつもり?」
冗談っぽくそう言いながら、私を立たせる。
「わかりましたわ。ケイン様に餓死されたら大変ですものね?」
私たちはクスクス笑いながら、昼食が準備されている場所に戻った。
「来月はいよいよケイン様の御家族とお会いするのよね。わたくし、気に入ってもらえるかしら? 凄く不安だわ」
私は昼食を摂りながら、ケイン様にそう話す。
「大丈夫だよ。私が君に出会ってからずっと、素敵な女の子だって母や兄にも言ってきたからね。父も君の事は出会った時から気に入ってるし、母や兄も君に会える事を凄く楽しみにしてるよ」
「ちょっと、ケイン様! ハードルを上げないで下さいませ!
ますます緊張してしまうではありませんか!」
私の言葉に、ケイン様は楽しそうに笑う。
こうして、ケイン様と過ごす穏やかな日々をいつまでも大切にしたい。
これからもこういった日々が続きますように。
私は心からそう願った。
~完~




