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40.事件の終結②

 

「前世の私は君に酷い事をした。

 婚約者の君をぞんざいに扱い、義妹のマリーナと浮気をし、君に冤罪をかけて処罰した。

 マリーナに唆されたにしても、あの頃の私はマリーナの嘘を信じたかったんだ。

 私はずっと君に好意を持ちながらも嫉妬していたから……」

 

 

「嫉妬?」

 

 

 私の一言にライアン様は頷く。

 

 

「そう。常に成績は一位で、何をやらせても完璧にこなす君に、劣等感を持っていた。

 だからマリーナといると楽だった。

 君を罰する時も、マリーナの嘘だと分かっていた。

 だけど君を罰する事で、君から、こんな気持ちから解放されると思っていたんだ」

 

 

 私からの解放……。

 ライアン様は、そんなふうに思っていたなんて……。

 

 

「でも、君が死んだと聞いて激しい虚無感に襲われた。そして、君の死がマリーナの仕業だと知った時には、後悔してもしきれなかった」

 

 

「え!? マリーナの仕業!?」

 

 私はビックリして思わず叫んだ。

 

 

「そう。マリーナが事故に見せかけて君を殺すように仕向けていた。

 マリーナは他にも色々な余罪が明らかになって、結局は処刑されたんだ。

 でも、今世のマリーナには君の死後の記憶がなかったから、今世でもまた君を害そうとしたんだと思う」

 

 

 知らなかった……。

 マリーナは、そこまで私を憎んでいたの?

 

 私はショックを隠しきれないでいた。

 

 

「私は廃太子され、離宮への生涯幽閉を言い渡された。

 そこで生きた何十年間は、ひどく寂しいものだったよ。

 孤独のなかで考えるのは、いつも君への罪悪感だった。

 私は君に謝りたいと思いながら、そこで生涯を終えたんだ。

 今世で初めて君に会った時には、まだ前世の記憶がなかったんだよ。

 でも、断片的に頭の中に記憶が浮かんできていた。

 マリーナが社交界デビューで着ていたドレスを見て、やっと全部思い出したんだ」

 

 

 ライアン様は、寂しそうな笑顔を私に向けてそう話す。

 

 

「あのドレスは私が君を思って選んだ最初で最後のドレスだったから」

 

 

 知っていたわ。

 婚約者になってからの誕生日プレゼントやパーティドレスは、従者に適当に準備させていた事を。

 社交界デビューの時だけ、自ら選んでプレゼントしてくれてエスコートしてくれた事を……。

 

 

 

「今更許して欲しいだなんて、言うつもりはない。許さなくていいんだ。むしろ、許さないでほしい。

 ただ、前世の記憶が戻ったのは、君に謝るチャンスを神が与えてくれたんだと思っている」

 

 

 そう言って、再びライアン様は頭を深く下げた。

 

 

「ルーシー・ヘルツェビナ公爵令嬢。

 本当に申し訳ありませんでした」

 

 

 ライアン様は本当に変わられた。

 前世の、離宮での孤独な人生が彼をここまで変えたのかも知れない。

 

 

「ライアン第一王子殿下。

 謝罪を受け入れます」

 

 

 まだ許しは出来ないけど、ライアン様の謝罪の気持ちは受け止めたい。

 その気持ちで、そう答えた。

 

 

「ありがとう」

 

 

 ライアン様はホッとしたような笑顔になる。

 

 

「あと、ケジメとして私は王位継承権を放棄しようと思っている。

 前世でも廃太子後、第二王子が立太子して、国王に即位後、立派に国を回していたから安心して任せられるしね」

 

 

「ライアン王子殿下は、それで本当によろしいのですか?」

 

 

 私の問いに、ライアン様は微笑みながら頷いた。

 

 

「弟の方が適任だということは、私が一番知っているからね」

 

 

 そう言ったライアン様は、晴れやかな表情をしていた。

 

 

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