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37.ライアン視点③

 

「ライアン様! 私とライアン様が結婚する為には、あの女が邪魔なんです! あの女さえいなければ、私は公爵家の娘になれたんです!

 ライアン様なら分かって下さいますよね!?」

 

 そういうマリーナに私は尋ねる。

 

「何故、私なら分かると?」

 

「だって、ライアン様も前の記憶が残っているのでしょう!?」

 

「前の記憶? 何故そう思う?」

 

「ほら! やっぱり! その反応こそが前世の記憶が残っている証拠です!

 それに、婚約者でもないのに、やたらとルーシーに構うのは、前世の記憶が残っているからですよね?

 ……でも、何故あの女に構うのです? 前世ではあんなに嫌っていたのに」

 

 マリーナは自分で言いながらも首を傾げている。

 私にも前世の記憶があると思っていたが、確証はなかったといったところか……。

 

 

 

「あぁ。確かに私にも前世の記憶がある」

 

 

 私がそう言うと、マリーナは助かったとばかりに安堵して笑顔になる。

 

 前世では、その笑顔にまんまと騙されていた事を思い出した。

 

 

「良かったです。これであの女が卑怯な手を使って未来を変えた事が証明できますね!」

 

「証明?」

 

「ええ! この国の第一王子殿下が、みんなにその事を伝えればみんな信じるはずですから!」

 

 

 マリーナは勝ち誇ったような顔をして、そう言った。

 

 

「私がそんな事を言っても誰も信じないよ?

 せいぜい頭がおかしくなったとしか思われない」

 

 

「そんなはずありません!

 ライアン様も悔しくはないんですか!?

 あの女がライアン様との婚約を拒否するから、ライアン様は未だに立太子されていないんですよ!?」

 

 

 マリーナの言い分を聞くと、まるでルーシー嬢にも前世の記憶があるように聞こえる。

 

 

 

「ルーシー嬢にも、前世の記憶があるのか?」

 

 私の質問に、マリーナは大きく頷きながら憎々しげに話す。

 

 

「そうです! あの女は前世の記憶がある事をいい事に、自分の母親の死を防いで、私の母と公爵の再婚を阻止したのです!

 きっと、今世でライアン様とあの女が婚約しなかったのも、あの女が何かしたからに決まってます!

 だから、私は正しい未来を守るために、あの女を……」

 

「崖から突き落とそうとした?」

 

「そうです! 分かって頂けたんですね!」

 

 

 そう言うマリーナは、得意顔で頷いている。

 

 

 

「正しい未来か……。お前は何処まで前世の記憶があるんだ?

 本当に前と同じ未来を希望しているのか?」

 

 

 私はマリーナにそう尋ねた。

 マリーナはキョトンとした顔で私をみる。

 

「え? 私の記憶は、ルーシーが死んだという報告を聞いたところで途切れてて、まだ思い出せませんが、きっとその後はライアン様と結婚して、ゆくゆくは王妃になったに違いありませんよね?」

 

 

 そう言ったマリーナを見て、私は笑いが込み上げてきた。

 

 

 

「ふ……ふふ、ふははは!」

 

「……何を笑ってらっしゃるのです? 私、何か間違った事でも言いましたか?」

 

 

 不機嫌な表情になって、マリーナは私にそう聞いてきた。

 

 

「これが笑わずに居られると思うのか!?

 お前の思っている未来など、どこにもないわ!」

 

「え?」

 

「何でルーシー嬢が死んだ後の記憶がないのか、本当に分からないのか?」

 

 

 私はあの時の怒りや悲しみ、自分の不甲斐なさを思い出し、抑えきれない感情が込み上げてきた。

 

 

「全部お前のせいだからだよ!

 お前が私を唆し、嘘を吐きまくって私やみんなを騙し、挙句にルーシー嬢を事故に見せかけて殺したお前のな!」

 

 

「え?」

 

 

「今更しらばっくれるのか? それとも得意の演技かな?

 お前が破落戸を雇って、馬車の行く先を変えて事故に見せかけたやり口がバレたんだよ。

 その他にも、ルーシー嬢の死をきっかけに、お前のついた嘘や悪行が次々と発覚して、お前は処刑されたんだ。

 だから、前世でのそれ以降の記憶がないんだ」

 

 

 私が一気にそう言うと、マリーナは目を見開いて叫ぶ。

 

 

「嘘! そんなの嘘よ、嘘に決まってる!

 そんなの有り得ないわ!

 私は幸せになるために頑張っただけよ!

 ライアン様の嘘つき!」

 

 マリーナは拘束されているにも関わらず、その場で必死に私に掴みかかろうとした。

 

 

 その大きな物音に、外で待機していた護衛騎士達が部屋の中に入って来て、マリーナを押さえつける。

 

 

 

「私の尋問は終了した。後はお前達に任せていいか?」

 

「は! お任せ下さい!」

 

 

 私の言葉に、騎士達は頷き、マリーナを地下牢に連行していく。

 

 

 

「ら、ライアン様! 嘘だと言って下さい!

 ライアン様ぁ!」

 

 

 マリーナは叫んでいたが、途中で猿轡をされて連行されて行った。

 

 

 

 

 マリーナには、ああ言ったが、マリーナだけが悪いのではない。

 

 私の罪もまた消えないのだ。

 

 たとえそれが今世の事ではないにしても、前世の記憶がある限り……。

 

 

 まして、ルーシー嬢にも前世の記憶があるのなら、私は誠心誠意、謝らなければならない。

 

 謝って済む問題でもないが、そうしなければ、今世でもちゃんと生きていけないような気がした。

 

 

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