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24.別室にて②

 

 マリーナが退室したのを見届けてから、陛下は改めてライアン様に問うた。

 

「して、ライアンよ。お前はヘルツェビナ公爵家を思っての行動であったと言ったな?」

 

 

「はい」

 

 

「……そうか」

 

 

 

 ライアン様の返答に、暫く考え込んだ後、陛下は父を見た。

 

 

「ヘルツェビナ公爵よ、そなたの娘の社交界デビューを台無しにしてしまって申し訳なかった。

 今から戻ると変に注目を集めてしまうだろう。

 改めて社交界デビューの場を設けるか?」

 

 

 陛下の問いに、父は私を見る。

 私は静かに首を横に振り、必要ない事を伝えた。

 

 

「国王陛下、娘の事は気になさらないで下さい。改めての場も必要ありません。

 今から会場に戻ると、陛下の仰る通り注目を集める事となると思いますので、我々はこのまま帰ろうと思います」

 

 父の返答に陛下は軽く頷き、私を見た。

 

「ルーシー嬢、今日は楽しみにしていたのにライアンのせいで申し訳なかった。

 この埋め合わせは必ずする。何か希望はあるか?」

 

「い、いえ! そのようなお気遣いは無用でございます。ライアン第一王子殿下のせいとも思っておりません。

 改めて、マリーナが失礼をし、申し訳ございませんでした」

 

 そう言った私に、陛下は優しく微笑み、王妃様もまた、優しくお声をかけて下さった。

 

 

「ルーシー公爵令嬢、今度はわたくしのお茶会にお誘いするわ。

 その時はぜひ参加してちょうだいね」

 

「ありがたき幸せにございます。王妃様のお誘いはとても名誉な事。

 その時はぜひ参加させて下さいませ」

 

 

 そう言って、両陛下に改めてカーテシーをする。

 その後、父と私はそのまま退室した。

 

 

 

 

 

 部屋に残ったのは、両陛下とライアンだけとなった。

 

 

「ライアン。お前の気持ちが知りたい。

 以前からお前は、ルーシー嬢に気のある素振りを見せていたと報告が上がっているが、そんなに本気ではないように思っていた。

 しかし、今日のお前を見ると、どうも本気のようだ。

 マリーナ男爵令嬢をエスコートしたのも、ルーシー嬢の為なのだろう?

 どうだ? ルーシー嬢と結婚したいのか?」

 

 

 陛下はそうライアンに尋ねた。

 

 ライアンは、陛下にそう聞かれて目を見開き動揺したが、すぐに俯いて首を横に振る。

 

 

「いえ。ルーシー嬢とは婚約も結婚も望みません」

 

 

 ライアンのその言葉に、陛下はため息を吐く。

 

 

「ライアン、貴方、ルーシー公爵令嬢の事が好きではないの?

 昔から、あの娘の事を婚約者になる者だって言っていたじゃない。

 公爵家はあの娘しか子供がいないから、後継者問題で、あの娘は婚約者候補から外れているけど、ライアンが本気で好きなら、どうにかしてあげるわよ?」

 

 

 王妃もそう言って、ライアンに問い詰めるが、ライアンは頑なに首を横に振り拒む。

 

 

「いえ。本当にルーシー嬢とは婚約しません。

 父上や母上が選んでくれた婚約者候補の中から結婚相手を選びたいと思います」

 

 

「貴方、学園で結婚相手を探すって宣言したと聞いたわよ?

 まだ入学してから半年も経ってないじゃない。本当にいいの?

 わたくし達が選んだ婚約者候補には、目もくれなかったのに……」

 

 

 王妃が再度ライアンに問うも、ライアンの意思は固い。

 

 

「はい。父上と母上の意向に沿うように致します」

 

 

 憑き物が落ちたように、静かに、だけど意思が固く、キッパリと言い切ったライアンを見て、陛下は頷いた。

 

 

「分かった。では、こちらで婚約者を決める事とする」

 

 

「よろしくお願いします」

 

 

 何処までも殊勝な姿のライアンに、両陛下は戸惑うが、これ以上は問いただしても無駄であると感じた。

 

 

「我々はパーティ会場に戻るが、お前は部屋に戻りなさい」

 

 

 陛下の言葉に頷き、礼をしてライアンは退室した。

 

 

 

「どういう事だ? いつものライアンらしくないな」

 

 

「ええ、本当に。あんなに大人びたライアンを初めて見ましたわ。

 一体どうしてしまったのかしら?」

 

 

「王族としての自覚が目覚めたのなら、それでいい。暫く様子を見ようではないか」

 

 

「そうですわね」

 

 

 

 両陛下は、ライアンの変化に戸惑いながらもそう判断して、パーティ会場に戻っていった。




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