表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/43

18.嬉しい再会

 

 次の日、王宮に行った父がお客様と共に帰ってきた。

 

「おかえりなさいませ、お父様」

 

 母と共に出迎えた私は、父の後ろに立っているお客様を見て、びっくりした。

 

「えっ!? ケイン様!?」

 

 私がそう言うと、母もびっくりする。

 

「え? ケイン君? ロットマイン伯爵令息の?」

 

 私と母の発言を聞いて、父が嘆息した。

 

 

「何ですぐに分かったんだ? せっかく二人を驚かそうと思ったのに……」

 

 少し拗ねたような発言をする父にも驚く。

 父は案外、子供っぽいところもあったのかと。

 

 まぁ、確かに、学園で先に会っていなかったら、私も確信は持てなかった。

 それくらいにケイン様は、身長も高くなっており、可愛らしい少年から、立派な大人の男性になっているのだものね。

 

 

 

「改めて紹介しよう。

 ロットマイン侯爵家の、ケイン侯爵令息だ。

 彼は今、リーズテッド王国からの交換留学で、3年間、本国の医師団に所属する事となった」

 

 父の紹介に驚いた。

 いつの間に侯爵家に!?

 

「お久しぶりです、公爵夫人、ルーシー。

 お元気でしたか?

 またお会い出来て、光栄です」

 

 

「まぁ! 本当にお久しぶりですわね! お会い出来て、わたくしも嬉しいわ!

 ささ、立ち話もなんですから、どうぞこちらへ」

 

 

 母の言葉に続き、私も挨拶をする。

 

 

「ケイン様、わたくしもお会い出来て光栄ですわ。さぁ、どうぞ。応接室にご案内致しますわね」

 

 

「ありがとう」

 

 

 

 私たちは、ケイン様を応接室に案内し、夕食の準備が出来るまで、そこでお茶をする事にした。

 

 

 しかし、本当にびっくりした。

 

 ケイン様は学園の後期から、保健医として会える事を楽しみにしていたが、まさか父がケイン様を連れてくるとは思わなかった。

 

 

 きっと父にとっても、ロットマイン侯爵とケイン様は、母の命の恩人だと今でも感謝しているのね。

 

 

 そう思うと、とても嬉しい。

 

 

 私は、ウキウキとした気持ちでケイン様を迎えた。

 

 

 

 

 

「本当に久しぶりだね。ケイン君がこんなに立派な医師になっているなんて、お父上もとても喜んでおられるだろう」

 

 

「いえいえ、私なんてまだまだ駆け出しの新米医師ですよ。父には遠く及ばないです。

 だから、これからもっと色々学ぶべきだと思っています」

 

 

 

 父は無口な方だが、今日はとても機嫌がよく、饒舌だ。

 

 

 

「ケイン君……、ああ、もうこんなに立派な大人の方に失礼だったわ。

 ケイン様は、学園を卒業なさってからすぐに医師団に入られたの?」

 

 

「公爵夫人、前のように気軽に呼んで下さって大丈夫ですよ。

 医師になるのは、私の念願の夢でしたからね。

 父を師と仰いで、すぐに国家医師団に所属しました」

 

 

 母はケイン様の言葉に、とても感心している。

 

 

「本当に素晴らしいわ。

 では親しみを込めて、私的な場面に限り、今まで通りケイン君と呼ばせて頂きますわね」

 

「光栄です」

 

 

 ケイン様を囲んで、とても和やかに会話が進んでいる。

 

 

 

「でも、知らなかったわ。いつお父上は陞爵されたの?」

 

 

「父の陞爵の話は、もう何年も前から出ていたんです。

 もうすぐ兄が父の跡を継ぐので、その前に受けておこうと2年前に陞爵しました」

 

 

 母の質問にケイン様が答えた。

 

 

 ケイン様はロットマイン家の次男だ。

 お兄様は、ケイン様より5歳年上で、既に結婚してお子さんも二人いるそうだ。

 

 なかなかお父上の立場上、長男のお兄様に爵位を引き継ぐ事が難しかったが、ようやく準備が整ったらしい。

 

 

 あら? では、ケイン様は平民になってしまわれるのかしら?

 お兄様が爵位を継いだら、弟であるケイン様は独立しないといけないのでは?

 

 

 そう考えた時に、父が代わりにケイン様の現状を語った。

 

 

「ケイン君の兄が爵位を継いだら、ケイン君は、ロットマイン侯爵が持っていた、もう1つの爵位を継ぐそうだ」

 

 

「もう1つの爵位?」

 

 

 父の説明に、私が疑問を呈する。

 

 

「子爵位を受け取る事になってるんだ。領地を持たない名ばかりの爵位だけどね」

 

 そう言って、ケイン様は笑っている。

 

 ケイン様は医者を目指しているから、爵位とかに拘らないのね。

 

 

「それと、ケイン君は、貴族学園の保健医を兼任しながら医師団の研究を行うらしい。

 ルーシーやマリーナの通う学園に、後期から出勤するそうだ」

 

 

 父がそう説明したところで、ケイン様が不思議そうに首を傾げて、質問する。

 

「マリーナ?」

 

 

 ケイン様の質問を受けて、父が今まで傍に控えていたマリーナを呼ぶ。

 

 

「君にも紹介しておこう。

 縁あって、しばらくうちで預かる事になった、ポルシュラス男爵の義娘のマリーナだ」

 

 

 父に紹介されたマリーナは、満面の笑みを浮かべてケイン様に挨拶をした。

 

 

「ご紹介に預かりました、マリーナ・ポルシュラスです。ルーシー様と同じクラスなんですの。

 学園でもお会い出来るなんて、光栄です。

 よろしくお願いいたします」

 

 

「こちらこそ、よろしく」

 

 

 

 ケイン様がマリーナを見て、頷きながらそう言った。

 

 マリーナは、ちらりと私を見てから、ケイン様に、にっこりと微笑んでいる。

 

 

 それを見た時、何だか無性に不安を覚えた。

 

 

 前世より、マリーナは私が仲良くしていた友人や使用人などを、片っ端から自分とも仲良くしようと声を掛け、いつの間にか、私から彼女らを奪っていった。

 

 それは婚約者であったライアン様も、当然当てはまる。

 

 

 

「公爵様、今日の夕食の時には、わたくしは控えさせて頂きますわね。

 ロットマイン侯爵令息様と、御家族で積もる話もございますでしょうから」

 

 

 マリーナは、気遣うような態度で父にそう申し出た。

 

 

「そうだな、話の中に入れなかったらマリーナも居心地が良くないだろう。

 気を遣わせてすまないな、マリーナ」

 

 

「とんでもございませんわ! 当然の事です。

 わたくしの事はお気になさらず、楽しんで下さいませね」

 

 マリーナはそう言って、自室に戻って行く。

 その際、ちらりと私の方を見て、ほくそ笑んだ。

 

 

 

 今、マリーナは何を思っているのだろう。

 

 あぁ、ケイン様と私たち家族との関係を、マリーナにだけは知られたくなかった。

 

 まさか、今世でも同じような事をしようと考えてないでしょうね?

 

 

 

 

 その考えに囚われて、その後の会食は、あまり味がしなかった。

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ