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14.何故こんな事に

 

 マリーナに話の向きをこちらに変えられてしまい、内心焦っている私に、ライアン様は嬉しそうに話し掛けてくる。

 

「ルーシー嬢は、マリーナ男爵令嬢と親しいのか? さすがはルーシー嬢だ。遠縁の者にも教育を施しているとは、さすがは由緒正しい公爵家の血筋であるな!」

 

 

 そう言ってライアン様は、しきりに感心している。

 

 

 そんな訳ないでしょう。

 どこの家が、親戚筋の教育まで口出しするのよ!

 前の人生の時から、物事を直球でしか受け止めない方だったけど、今回も変わらないのね。

 

 しかし、マリーナは何を考えて、やたらと公爵家との繋がりを、あからさまに出してくるのだろう。

 今の人生では、全くと言っていい程、関わりはないのに。

 

 

「いえ、公爵家では何もしておりませんわ。

 ポルシュラス男爵令嬢の努力の賜物かと」

 

 

 そう否定して、隣りに居たモニカを促して、早々にこの場を立ち去る。

 

 立ち去る時にライアン様が何か言っていたけど、知らない。

 

 マリーナの視線だけが、妙に身体に絡みついた気がして、それどころではなかった。

 

 

「マリーナは、どうしてもルーシーに関わりたいようね」

 

 モニカも、マリーナの私への執着に気付いた様子だ。

 

 

「困ったわ。私は関わりたくはないのに……」

 

 私の返事に、モニカも頷いている。

 

 

 

 そう、マリーナはきっと執着しているのだ。

 前の人生での自分の地位に。

 今回の自分の立場に納得出来ず、どうにかして前の地位に戻ろうとしているのかも。

 

 そこまで考えて、ゾッとした。

 お母様は大丈夫だろうか!?

 

 いや、いくら何でも、今更母に何かする事はないはず。マリーナの母親もすでに再婚しているのだしね。

 

 明日から、学園が休みに入り、マリーナとは会わなくてすむと思うと、気が少し楽になる。

 

 

 そして私は自分に言う。

 よく考えろ、と。

 

 

 ライアン様は、マリーナの事を知らなかったようだけど、何故か今の人生では、私に何かとまとわりついている。

 

 マリーナは前の人生の自分に固執して、何かと私に近付いてくる。

 

 

 今の人生を、二人に関わること無く生きていくのは難しいようだ。

 

 

 ならば、無闇にマリーナ達が近寄ってこないように、この休み期間に、何か方法を考えなければ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう考えていたのに……。

 

 何故こんな事になってるのだろう?

 

 

 

 

「家庭の事情により、行儀見習いとして今日から暫く預かる事となった、マリーナ・ポリシュラス男爵令嬢だ。

 ルーシーは同級生だから、よく知っているな?

 色々と教えてやってほしい。

 ルーシー、頼んだぞ」

 

 

「よろしくお願いしますね、ルーシーお姉……、いえ、ルーシー様」

 

 

 父に紹介されたマリーナは、そう言って、ニッコリと微笑んで私にそう挨拶する。

 

 

 何故うちに預かる事になったの?

 家庭の事情って何?

 いくら行儀見習いと言っても、今まで縁の無かった男爵家から、そんな事頼まれるはずないのに……。

 

 

 疑問が多すぎて、一瞬固まってしまったが、そんな自分を叱責して、気をしっかり引き締める。

 

 

「よろしくね、マリーナ男爵令嬢。

 お父様、どのような経緯でこちらで預かる事になったのか、お聞きしても?」

 

 

 私の言葉に父は頷き、

「場所をかえて説明しよう。

 メイド長は、マリーナを部屋に案内してやってくれ」

 と指示を出し、母と私を自分の執務室に呼んだ。

 

 

「突然で驚いただろう。

 今から説明するから、掛けてくれ」

 

 父は母と私にソファに座るように促した。

 どうやら、母も詳しくは聞いていなかったようだ。

 

 父は、母と私がソファに腰かけたのを確認した後、前のソファに座った。

 

 

「本来はこの話は、私の妹の嫁ぎ先の伯爵家に持ち込まれたのだ。そこの伯爵家とマリーナの実父の子爵家が親戚関係にあった。

 マリーナは、そのツテを使って私の妹に助けを求めた。

 

 どうやら、継父がマリーナに色欲的に接してくるらしい。

 身の危険を感じたので、助けて欲しいとの相談だった。

 

 しかし、妹の伯爵家は、夫と年頃の息子二人がいる。

 年頃の異性を預かるのは難しい。私のところなら、同級生であるルーシーもいるからと、妹に頼まれたのだ」

 

 

 父の説明に、

「まぁ! 可哀想に……継父からそのような扱いを受けたら、どんなに心が傷付いた事でしょう!」

 と、母は同情していた。

 

 

 ポリシュラス男爵がどんな人なのか、私は知らない。

 でもマリーナの話を信じていいの?

 

 

「お父様、ポリシュラス男爵はどのような人柄の方ですの? 本当にそのような事をするような方なのですか?」

 

 

「いや、至って真面目な男だと認識している。

 それに、今回の話を妹から聞いた時、すぐに男爵にも話を聞いたのだ」

 

 

 そう言って、お父様がポリシュラス男爵と話した事を教えてくれた。

 

 

 マリーナの母とポリシュラス男爵が再婚したのは、6年前ほどになるそうだ。

 

 お互い子持ちであるという事から、お互いの子供も、自分の子と同じように接していこうと話し合い、今まで男爵は、男爵の娘と同じように接してきたとの事。

 

 それで今まで上手くやってきて、本当の家族のように過ごしてきたらしい。

 

 しかし、1年程前よりマリーナの様子が急に変わり、男爵の事を父とは認めず、自分はこの家の子では無いと言い始めた。

 

 そして最近に至っては、男爵が近寄るだけでも、泣き叫ぶようになったとの事。

 

 思春期の娘が、継父に過剰反応を示しているのではないかと考え、一旦距離を置いた方がいいと周りからのアドバイスもあって、行儀見習いとして他の家に預ける事にしたらしい。

 

「もともと、マリーナは遠縁に当たるこの家に行儀見習いに行きたいと希望していたらしいが、付き合いがなかった為、実父のツテを使って、まずは私の妹の家に願い出たという経緯だ」

 

 

 

 父の説明を聞いて、ピンと来た。

 マリーナは、1年前に前世の記憶が戻ったのではないかと。

 

 

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― 新着の感想 ―
[良い点] きゃあぁぁぁ!!とうとう公爵家に乗り込んで来た~(; ・`д・´) 凄く嫌ぁ~(;´Д`) 何するつもりなのよ~~
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