1話 勇者と呼ばれる日
『遥か昔、この世は魔族に支配されておりました。
魔族は人間達よりも強く頑丈な体を持ち、膨大な魔力を持っておりました。
人々は日々、恐怖に震えて泣いておりました。
王国は何度も魔族と戦いましたが、敵う相手ではありませんでした。
人々が絶望する中、ある1人の若者が立ち上がり、皆んなの前でこう言いました。
「私が魔王を倒し、この世に平和をもたらしましょう」
王様はこの言葉を聞き、感動したので、この若者に白銀に輝く一本の剣を授けることにしました。
これこそが、勇者ラドルと聖剣ギルダラス誕生です。
勇者ラドルは聖剣を手に魔王討伐の旅に出ました。
いくつもの困難の末、魔王との直接対決の時が来ました。
魔王は、漆黒に身を包まれ異形の姿をした恐怖そのものでした。
勇者と魔王は死闘の末、勇者の聖なる一撃により勇者が魔王を討ち滅ぼしました。
勇者の勝利によって世界には平和が訪れ、人々の笑顔に包まれました。』
「おしまい、、、はい、良い子は寝ましょうね。」
そう言って、女性が我が子に笑顔を向ける。
「お母さん、僕も大きくなったらラドルみたいな勇者になれるかな。」
幼い男の子は、目を輝かせて母親に尋ねている。勇者ラドルに憧れているのだ。
「悪戯ばかりする子には難しいわね。なんたって勇者ラドル様は優しくて思いやりがある、カッコいい人なんだから」
「僕はもういたずらしないもん!それで、ラドルみたいになるんだ!」
母親の意地悪な返答に、男の子はそっぽを向きいじけた声を響かせる。
「大丈夫、貴方は優しい子、勇者ラドル様のみたいになりたいのなら、よく寝て元気に育ちなさないね」
母親の優しい声と、暖かい手に包まれながら安心し、小さな声である言葉を発しながら目を閉じる。
「僕は、、、勇者になるんだ、、、」
これは、一人の人間が勇者になるまでの物語である。